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NHK 連続テレビ小説「虎に翼」~通訳者の視点から~

NHK 連続テレビ小説「虎に翼」。2024年4月1日から放送が開始された本作は、日本初の女性弁護士で、のちに裁判官になった三淵嘉子さんの実話に基づくオリジナル・ストーリーのドラマです。今回のブログでは「虎に翼」に因み、アメリカ最高裁での女性裁判官の歴史や法廷での通訳の歴史等を、かいつまんでご紹介します。

NHK 連続テレビ小説
虎に翼

先ずは、ご存じでない方にNHK 連続テレビ小説「虎に翼」を簡単にご紹介します。

本作は、日本初の女性弁護士で、のちに裁判官になった三淵嘉子さんの人生を基にしたオリジナル・ストーリーのドラマです。放送は2024年4月1日より開始。主人公の猪爪寅子は伊藤沙莉さんが演じています。

「虎に翼」は法曹界が舞台でもある為、昔(戦前等)の日本の法廷シーンや、法律/司法に関連した内容も多数出てきます。

NHK『虎に翼』Website
https://www.nhk.jp/p/toranitsubasa/ts/LG372WKPVV/
X(Twitter)@asadora_nhk

アメリカでの
女性 最高裁判事の歴史

アメリカで、女性で初の連邦最高裁判事に任命されたのは サンドラ・デイ・オコナー / Sandra Day O’Connor 氏。

1981年 当時の大統領 ロナルド・レーガン / Ronald Wilson Reagan によって最高裁判事に指名されています。

SUPREME COURT OF THE UNITED STATES Website・Sandra Day O’Connor: First Woman on the Supreme Court

連邦最高裁史上2人目の女性裁判官となったのは、有名なルース・ベイダー・ギンズバーグ / Ruth Bader Ginsburg (通称 RBG) 氏。

彼女は1993年 当時の大統領 ビル・クリントン / Bill Clinton に指名されました。

 2020年9月18日 ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事 が亡くなった際には多くのメディアが報じました。

彼女が、何故この様に有名になったのか?これについては様々な人々が記事や書籍に書いていますが、70年代から2020年9月に87歳で亡くなるまで、女性やマイノリティーの権利向上に努めてきたのが、1つの理由でしょう。

I ask no favor for my sex. All I ask of our brethren is that they take their feet off our necks.

私の性別(女性)に対して何の好意(贔屓・ひいき / 優遇)も求めていない。私が仲間(男性)に求めるのは、彼らが私たちの首から足を下ろしてくれるということだけだ。

Ruth Bader Ginsburg

ギンズバーグ判事はこの言葉を、2019年に公開された彼女の歩みを映画化したドキュメンタリー作品「RBG 最強の85才(原題 RGB) 」の中で朗読しています。

※予告編では All I ask of our brethren is that they take their feet off our necks. のみを使用。字幕は「男性の皆さん、私達を踏み続けているその足をどけて」となっています。

ギンズバーグ判事が映画の中で朗読したこの言葉は、19世紀 アメリカで、奴隷制廃止論者・女性参政権運動家として活動した サラ・ムーア・グリムケ / Sarah Moore Grimké (1792-1873)による言葉が元になっています。

But I ask no favors for my sex. I surrender not our claim to equality. All I ask of our brethren is, that they will take their feet from off our necks, and permit us to stand upright …

Sarah Grimke / Boston Museum

ギンズバーグ判事は、1973年 アメリカ最高裁で行われた「Frontiero v. Richardson」にて、彼女が初めて法廷で行った口頭弁論でも この言葉を引用しています。

ギンズバーグ判事の若かりし頃を描いた映画には、2018年日本公開の「ビリーブ 未来への大逆転」もあります。

2020年にギンズバーグ判事がこの世を去った後、2022年7月1日 ケタンジ・ブラウン・ジャクソン / Ketanji Brown Jackson 氏がジョー・バイデン / Joe Biden 大統領によって、連邦最高裁判事に指名されました。

米最高裁判事に初の黒人女性が就任 リベラル派のジャクソン氏(2022年7月1日 BBC NEWS JAPAN)

また2024年3月11日には、オランダ・ハーグの 国際刑事裁判所International Criminal Court:ICC)において裁判所長の選挙が行われ、日本の赤根智子ICC判事が裁判所長に選出されています。

赤根智子国際刑事裁判所(ICC)判事の裁判所長選出について(外務大臣談話)(2024年3月11日 外務省Website)
国際刑事裁判所 新たな所長に赤根智子裁判官を選出 日本人初(2024年3月12日 NHK News Web)

裁判での
同時通訳の歴史

以前にもこのブログでご紹介しましたが、同時通訳の歴史も裁判と共に始まりました。

1945年11月20日に始まった、第二次世界大戦でのドイツの戦争犯罪を裁く国際軍事裁判「ニュルンベルク裁判」は、それまで非公式な場で実験的に行われていた「同時通訳」が、始めて公式に採用された裁判でもあります。

本裁判では、多くの女性通訳者及び翻訳者も活躍しました。

この「ニュルンベルク裁判」は、弊社代表/通訳者 右田アンドリュー・ミーハンもメンバーである、AIIC / 国際会議通訳者連盟の設立のきっかけにもなりました。

現在、AIICの会員となっている通訳者は、前出の赤根智子氏が裁判所長に選出された国際刑事裁判所でも多数働いています。

また司法の場に限らず、現在 通訳・翻訳業界では多くの女性が働いており、AIICにも多数の女性通訳者が登録し、国際的な会議やイベントで活躍しています。

司法の場での通訳

本ブログでは、裁判等での通訳についてのエピソードも幾つかご紹介してきましたが、司法通訳は、裁判等の場だけで通訳をしている訳ではありません。

弊社代表で通訳者の右田は、捜査現場=家宅捜索 / ガサ入れでの通訳経験があります。

私がまだアメリカで通訳者をしている時に、FBIのチームと一緒に、夜10時に某日系企業のガサ入れに立ち会った事があります。

騒然とした現場の中で、FBIの捜査官がまだ社内にいたスタッフをまとめたり、誘導したりしてる間、誰も机やパソコンなどに触らない様、監視する役目を私は仰せつかりました。

その後、少し接見にも似たインタビューが実施され、管理職他の聞き取り調査の通訳をやった事を覚えています。

右田アンドリュー・ミーハン

FBI(アメリカ司法省連邦捜査局 / Federal Bureau of Investigation) と共に活動する通訳者になるには登録が必要ですが、登録の際に語学スキルがチェックされるのはモチロンの事、非常に厳密な身元調査も行われます。

右田アンドリュー・ミーハンは、出身が長崎県佐世保市であった為、2年近く身元調査に時間がかかったとの事。それだけ厳重な調査を経て、登録となります。

これ以外にも右田は、東京地方裁判所を始め以下海外の裁判所でも、裁判所認定法廷通訳者として登録をしています。

  • 米国:NY, NJ, DC, TX, FL 地裁等, 検事局 NY, NJ, DC等, 国際貿易裁判所等
    • 米国では司法省連邦刑務所局公認通訳士、司法省連邦捜査局嘱託言語学者(contract linguist monitor)としても登録
  • 英国:ロンドン国際仲裁裁判所
  • スイス:スポーツ仲裁裁判所 (Tribunal Arbitral du Sport)
  • オーストリア:ウィーン国際仲裁センター
  • マレーシア:クアラルンプール高等裁判所

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