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デポジション 国際訴訟の場における通訳

ミーハングループ通訳部門では、訴訟関連における通訳を数多く手掛けています。今回は、日本では耳慣れない、しかし国際訴訟では非常にポピュラーな手続き「デポジション」について、ご紹介したいと思います。

デポジションとは

アメリカのような訴訟社会では、日本にはないデポジションという訴訟手続があります。

「証言録取」などの日本語訳を付ける場合もありますが、一般的には日本でも デポジション (deposition) と呼ばれます。これは訴訟が裁判へ向けて動き出した時に行われる手続きです。

簡単に言うと、訴状が提出され、裁判官がそれを認めて裁判を実際に行う前に、被告と原告(多くは企業対企業)に双方が求める社内資料を相手に見せるよう指示を発令する時、その資料の作成者、関係者等に弁護士が質問をして、事実の確認、新事実の調査などをする事を言います。

これは資料だけが対象ではなく、証言を行う人も対象となります。

日本人がデポジション対象者の場合、アメリカに出向いてデポジションを受けるか、先方の弁護士が来日して、大使館や領事館にて喚問が行われます。

デポジションでの
通訳者の役割

日本企業が関連する訴訟の場合、デポジション対象者として、日本人が喚問を受ける事が多くあります。日本人がデポジション対象者で、英語がネイティブレベルで話せない場合、通訳が対象者の通訳を行います。

アメリカでは、法律事務所にて通常デポジションは行われますが、弁護士が来日してデポジションを行う場合は、大使館や領事館にて喚問が行われます。

その場合、デポジションには対象者、通訳者、両側企業を代理する弁護士、コートレポーター(裁判速記者)が出席。加えて、企業の法務部代表等や、通訳の訳出をチェックするチェック・インタープリターなども出席します。

ビジネス会議等における通訳であれば、話し手の要点や意図をまとめて訳しても問題ありませんが、デポジションでは、通訳者は話し手の一言一句を変える事なく訳さなければなりません。

仮に対象者が、デポジションの場に適当でない話し方や発言=質問された事とは関係ない事の詳細を話したり、不適当な表現を用いた発言をした場合でも、全て訳す必要がありますし、話を途中で言い直した場合は、前の説明を途中で止めて、新たな発言を訳します。

デポジションの場での通訳は、法廷通訳と同じルールが適用され、対象者の発言を変えずに訳さなければならないからです。

チェック・インタープリター

日本の裁判通訳ではまだ一般的ではありませんが、アメリカの裁判、特に大型訴訟では、通訳者の訳をチェックする「チェック・インタープリター」と呼ばれる役割の人が、発言者の発言内容を通訳者が適切に訳しているか、必ずチェックします。

デポジションも、裁判における手続きの一環ですので、チェック・インタープリターが同席し、通訳者が発言者の発言内容を一言一句、間違いなく訳しているかチェックします。

ですので、デポジションの場で通訳を行う場合、高い英語の語彙力はもちろんの事、チェック・インタープリターから自分の訳に対して質問をされたり、指摘をされた場合でも適切に対処できるスキルも必要となります。

裁判通訳における
日本語の注意点

日本語には同音異語が多数あります。

書面であれば文字(漢字)で確認出来るので、意味を間違う事はなくても、発言の場合は、音が同じな場合、前後の文脈から「それ」が何を意味するのか推測するしかありません。

当社代表通訳の右田アンドリュー・ミーハンも、駆け出しの頃、デポジション通訳の場で「キカク」と言う言葉を、企画 / 規格と取り違えて訳し、チェッカー・インタープリターから指摘をされ、途中でキャンセルされた経験があるとの事。

また日本人の場合、相手の質問に対して相づちの意味で「ハイ」と言う事が多くありますが、デポジションの場では、これが相手の話を聞いているという意味での「ハイ」なのか、相手の質問の内容を肯定する意味での「ハイ」なのか、正しく把握し訳さないと、ミスにつながる危険性があるそうです。

因みに相づちの場合の「ハイ」はOK、肯定の「ハイ」の場合はYesと、訳す事が多いと右田は話していました。

国際訴訟の場での心得

ミーハングループでは、デポジション以外にも、国際訴訟の場における通訳を数多く手掛けております。

特に代表通訳の右田アンドリュー・ミーハンは、東京地方裁判所 裁判所登録通訳者として日本での裁判通訳はもちろん、アメリカ、イギリス、スイス、オーストリアの裁判所認定法廷通訳者としても登録。通訳を行っております。(詳細はコチラよりご確認頂けます)

実際の通訳を行う以外にも、異文化における訴訟や、海外とのデリケートな内容の会議等のアドバイザーや、コンサルティングを行う事もございますので、お困りの事がございましたら、お気軽に下記連絡先までご連絡下さいませ。

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