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英日 / 日英 通訳者に求められること(1) ~通訳者の視点から~

ミーハングループは、通訳は主に英語と日本語に対応。翻訳は希少言語含む様々な言語に対応していますが、多くの依頼は英日/日英 になります。そこで、今回は英日/日英の通訳や翻訳で求められることについて、特に日本語について 2回に分けてご紹介したいと思います。Gerd AltmannによるPixabayからの画像 )

伝わらない 婉曲表現

先日SNSをにぎわした話題の1つに「婉曲表現が伝わらない」がありました。皆様ご存知でしょうか?

「ご遠慮ください」「お控えください」のような婉曲表現は伝わらないのでもう使わない方がいいのか問題(2023/4/24 togetter)  

  • 「写真撮影はご遠慮下さい」と言う表現は、少量撮影はOKだと思っていた。
  • 「お控え下さい」は控えめにやればOKと思っていた。

この「ご遠慮下さい」や「お控え下さい」は、「止めて下さい」「禁止」を柔らかく言い換えた表現=婉曲表現になります。

コトバンクより
精選版 日本国語大辞典
「婉曲」の意味

[1] 〘形動〙 表現のしかたが遠回しで、穏やかなさま。角立たないで、やさしく言い表わすさま。
[2] 〘名〙 文法で、判断・命令・感動などが、断定的あるいは直接的になるのを避けて語調をやわらげる効果を持つ表現。

https://kotobank.jp/word/%E5%A9%89%E6%9B%B2-447507

こう言った、相手に不快な思いをさせる「直接的な表現」を避けた表現=婉曲表現は、ビジネスの場では多く見受けられます。

また 婉曲表現とは少し異なりますが、例えば何か依頼をする際に「ご多忙中のところ大変恐縮ではございますが」等と言ったり、メールに書き添えたりするのは「クッション言葉」と呼ばれます。

これも 自分の依頼を一方的にすると、相手に不快な思いをさせる可能性があるので、相手の状況に配慮した言葉を添え、物事を円滑に進める為の表現になります。

さらに DIAMOND online の記事「ご遠慮ください」=「少しならやってOK」!?婉曲表現が伝わらない人続出の衝撃 には婉曲表現の事例として、以下も挙げられています。

DIAMOND online 「ご遠慮ください」=「少しならやってOK」!?婉曲表現が伝わらない人続出の衝撃 / 鎌田和歌:フリーライター (2023/5/5)

駅や商業ビルのトイレでたまに「いつもきれいにお使いいただき、ありがとうございます」という張り紙を見かけることがある。あれは利用者に「このように見ている人がいるのだから、きれいに使わなくては」と思わせるための一種の婉曲表現だ。

https://diamond.jp/articles/-/322336

しかし、これらの表現を具体的に学校で教わる事はありません。

社会に出て初めて この様な表現を知る人、知らずに「婉曲にお断りされていたり、注意されていること」をやってしまい、場の空気が悪くなって初めて気が付く人等も居ると思います。

もちろん社会に出てから初めて知る事は沢山ありますから、失敗しながら学ぶことは恥ずかしい事ではありません。

本ブログでも何度か紹介しているシンプルでわかりやすい「やさしい日本語」的視点から見ると、「婉曲表現」等は空気を読むことが求められる分かりずらい表現でもあります。

今回SNSで話題となった「婉曲表現が伝わらない」事例は、投稿された方の実際の年齢はわかりませんが、恐らく「社会経験が浅い人」なのではないでしょうか。

また、婉曲表現とは異なりますが「カタカナ語」を多用した文章や話は、馴染みのない方には理解しづらいと言うケースもあります。

つまり様々な人が利用したり、居る場所では、日本語の感覚や理解度は一律ではないので「誰にでも伝わる表現を使う」のは、今後一層大事になるのではないでしょうか。

機械翻訳/通訳と
人による翻訳/通訳の違い

言葉は「時代」や「世代」によって、意味や使い方、理解が異なることは先ほど書いた「婉曲表現が伝わらない」事例でもご理解頂けると思います。

また「業界」によっても言葉の意味や使い方が変わる事もあります。これは「日本語」に限った事では無く、他の言語も同様です。

こう言った様々な状況や人に併せて、通訳者や翻訳者は「相手に伝わる様に」言葉を訳さなければなりません。

機械翻訳の技術は日々進化しています。Aと言う言語をBと言う言語に置き換えたり、一歩踏み込んで「大意として伝わる様に」訳すことは出来る様になっています。

しかし、一番大事な「利用/使用される場や状況に併せた、適切な表現に訳す」、利用/使用する相手が「理解しやすい表現に訳す」、「話者や書き手の意図を汲んで訳す」までには、まだ至っていません。

そこが人による翻訳/通訳とは大きく異なる点です。

英日 / 日英
通訳者/翻訳者に
もとめられること

通訳者や翻訳者に求められるのは、第一に言語スキルです。

もちろんプロとして仕事をするには、それ以外にも多くのことが求められますが、最も重要なのはやはり「言語スキル」、それも機械/自動翻訳では対応しきれない、背景情報や状況を考慮し適切に訳す事ができ、相手に伝わる様に訳す事が出来るスキルです。

背景情報や状況を考慮した適切な訳をする為には、通訳/翻訳者は常に2つ(人によっては2つ以上)の言語に精通していること、英日/日英の場合は 英語と日本語に精通していることが求められます。

しかし「母語=生まれ育った中で習得した言葉」や、「第2言語=学習して習得した言葉」が話せたり書けたとしても、それがイコール言葉に精通してるとは言い切れません。

最初にご紹介した「婉曲表現」等もそうですが、日本語が母語であったとしても知らない日本語表現や、言葉は沢山あります。

ミーハングループ代表で現役 英日 / 日英 通訳者/翻訳者でもある右田アンドリュー・ミーハンは、1968年に長崎県佐世保市 生まれ、学校はいわゆるインターナショナル・スクールですが、高校まで日本にて就学。

その後 アメリカの大学を卒業し、住友銀行ニューヨーク支店に入社。1994年より翻訳者・通訳者としての活動を始めました。

つまり、右田アンドリュー・ミーハンにとっては、英語も日本語も「生まれ育った中で習得した言葉=母語」になります。

しかし、右田曰く「日本語も英語も日常で使う表現や、書籍/文章などの表現は理解はしていたが、社会に出てから新たに学んだ言葉も沢山ある」との事。

そこで、本ブログでは次回 右田アンドリュー・ミーハンの経験をもとに言語スキルの向上方法、特に「日本語をどの様に学習するか」についてご紹介したいと思います。

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