ブログ 異文化 翻訳 言語 通訳

英国王の戴冠式 ~報道から学ぶ英語表現~

英国王 チャールズ3世の戴冠式が、2023年5月6日 ロンドン・ウェストミンスター寺院で執り行われました。今回は、この「戴冠式(たいかんしき)」に関連した英語表現及び「皇太子」「女王」「王妃」の英語表現を紹介。併せて2019年に日本で行われた「即位の礼」の英語表現や、国際儀礼 / プロトコール等についてもご紹介したいと思います。Peace,love,happinessによるPixabayからの画像)

戴冠式
(たいかんしき)
Coronation

英国王 チャールズ3世の戴冠式が、2023年5月6日 ロンドン・ウェストミンスター寺院で執り行われました。

1953年以来70年ぶりの戴冠式は、多くの人々の注目を集めました。皆さんもテレビや動画配信、ニュースなどでご覧になったのではないでしょうか。

今回は、この「戴冠式(たいかんしき)」に関連した英語表現を幾つか紹介します。

まず「英国王 チャールズ3世の戴冠式」これは Coronation of King Charles III と表現されます。戴冠式は Coronation です。意味は「(人が)王または女王に任命される儀式」になります。

From Cambridge dictionary
coronation noun
a ceremony at which a person is made king or queen:

an occasion when someone is chosen for an important job without having to win an election or other competition:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/coronation

戴冠式には Cambridge dictionary の説明にもある様に「選挙や競争をする事なく、重要な職に就くこと」と言う意味もあります。

戴冠式が行われたロンドンのウエストミンスター寺院は Westminster Abbey と表現されます。Abbey については、以前このブログでも紹介したので、そちらの記事をご参照下さい。

今回の戴冠式は、なんと1800万人以上の人が観たとのこと。視聴の最大時には2,040万人にも達したそうです。

参考リンク:King Charles III's Coronation watched by more than 18 million viewers (2023/5/8 BBC news)

陛下 / 殿下 / 皇太子 /
女王 / 王妃 等の
英語表現

His Majesty / Her Majesty は日本語に訳すと「陛下」で、基本的に君主とその配偶者以外には使われません。頭文字をつかってHMと表記される場合もあります。

君主とその配偶者以外の王室の方々に使われる Royal Highness は、His Royal Highness の場合は「殿下」、Her Royal Highness の場合は「妃殿下」と訳されるのが一般的です。こちらも頭文字をつかって HRH と表記される場合もあります。

相手に呼び掛ける場合は、王様 / 女王様の場合 Your Majesty 、それ以外の王族については Your Royal Highness またはシンプルに Sir 、女性の場合は Ma'am と言う呼称を使う場合もあります。。

Ma'am は、女王陛下や妃殿下、貴族夫人、または女性の上官や目上の女性に対して使用する呼称です。

参考リンク:Here's why you called the Queen 'Your Royal Majesty,' but not 'Your Royal Highness' (INSIDER Sep 9, 2022)

なお Monarch は性別にかかわらず「君主」を意味します。

皇太子の英語表現

エリザベス女王が亡くなられた後、チャールズ国王は即位後初めてのスピーチで、妻であるカミラ夫人が Queen consort / 王妃 となること、 そして息子であるウイリアム王子が Prince of Wales / 皇太子になる事を発表しています。

英国では、皇太子のことは  Prince of Wales  皇太子妃は Princess of Wales と呼びますが、一般的には「皇太子」は crown prince 、その妻である女性は「皇太子妃」 crown princess と呼ばれます。

女性が皇太子の場合「皇太子」の英語表記は crown princess となりますが、夫である男性は prince のみの表記となる様です。

参考リンク:Swedish royals Crown Princess Victoria and Prince Daniel make rare statement denying split rumours ( 21 February 2022 TATLER)

女王と王妃の違い

チャールズ国王の伴侶であるカミラ夫人の正式タイトルは Queen consort / 王妃 ですが、今回の戴冠式に伴い一般表記は Queen Camilla となっています。

consort の意味を Cambridge dictionary で調べると a wife or husband, especially of a ruler と 名詞 / noun の意味として書かれています。

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/consort

Ruler とは国のリーダーの事を意味し、この場合は君主と理解しても良いでしょう。つまり consort は君主の配偶者と言う意味になります。

因みに 王妃を意味する Queen consort に対して、君主である「女王」は Queen regnant と表現されます。

即位の礼
英語表記

さて、ここで気になるのが2019年に行われた「即位の礼」の英語表記についてです。

「即位の礼」は、天皇陛下の御即位を広く披露するための儀式ですから、意味合いとしては「戴冠式」と似ています。

しかし英語での表記は Coronation =戴冠式 ではなく Enthroned / Enthronement または Enthronement Ceremonythe ceremony of accession と表現されています。

From Cambridge dictionary
enthronement noun
the act of putting a king, queen, etc. through the ceremony of sitting on a throne (= chair used in ceremonies) in order to mark the official beginning of their period in power:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/enthronement

From Cambridge dictionary
accession noun
the time when someone starts a position of authority, especially a king or queen:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/accession

参考リンク:The Ceremonies of the Accession to the Throne of His Majesty the Emperor (February 2020 政府広報オンライン)

この様な国家的儀式や儀礼で使用される言葉や表現は、事前に各国の政府広報機関や関連機関等より発表され、各メディアはその表記を基準に記事等を作成します。また放送通訳者を始め、翻訳者や通訳者もそれら表現を使用します。

参考リンク:宮内庁「即位の礼関係諸儀式」資料(2019年10月7日更新)

英国以外の敬称

ミーハングループは駐日各国大使館からの依頼も多く、特に中東地域の高位の方々「陛下」「殿下」「王子」「王女」などの通訳を務めたこともあります。

因みに中東地域の場合も、英語では陛下の場合 His / Her Majesty 、殿下や妃殿下には His / Her Royal Highness と言う敬称を使用。His / Her Highness と言う敬称を使う場合もあります。

なお、高位の方に呼び掛けるさい 敬称を略した呼称 Sir Ma’am を使う場合もあると先ほど書きましたが、通訳者の場合、特に中東の高位の方に対しては、常に正式な敬称を使用しなければならないので Sir Ma’am はほとんど使用しません。

2022年9月に行われた安倍晋三元首相の国葬では、ミーハングループ代表 通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、ある中東の国の通訳を務めましたが、いつも使っている英語表現 / 日本語表現の域を超えた言葉の連打だったので、大変苦労したとのこと。

その他 敬称

日本語の「殿(どの)」を英語に訳す場合は Honorable を使用する事が多いそうです。The Honorable 〇〇(←名前)と言った使い方で「名誉ある」「格式ある」といった意味になります。また Honorable は 高位の方の総称としても使う場合もあります。

政府要人については His / Her Excellency (H.E) を使う場合や、Governor を使う場合もあります。

国際儀礼
プロトコール

国の重要な式典や行事を始めとした、いわゆる「外交」の場では国際儀礼=プロトコールが非常に重要視されます。今回ご紹介した敬称もプロトコールの1つにあたります。

日本の外務省のWebsiteには「国際儀礼(プロトコール)」についてのページがあり、基本的な考え方はもちろん、各国の元首名等一覧(敬称含む)や、駐日各国大使リスト等もありますし、海外からのお客様を迎えるにあたり「よくある質問」をまとめたページもあります。

外務省 プロトコールの基本
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/po/page25_001892.html
国際儀礼(プロトコール)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/protocol/index.html
プロトコールでよくあるご質問
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/po/page25_001893.html

※外務省のWebsiteで紹介されているのは 基本的 / 一般的な内容になりますので、実際の外交の場では催しごとに微調整が入ります。

通訳者でも、外交の場で通訳をする場合は インターナショナル・プロトコールを理解している事が求められます。

右田アンドリュー・ミーハンは、北京、ロンドン、ソチオリンピックにて国際オリンピック委員会(IOC)のチーフインタープリター・メンバーとして日英/英日通訳を務めましたが、その前にアジア競技大会でも通訳を務めており、その際にプロトコール部門の通訳も行った事から、徹底的に国際儀礼=プロトコールを学ばされたとのこと。

通訳者に限らずですが、国際外交の場での活躍を希望している方は語学だけではなく「プロトコール」についても学ぶことは重要です。

ロンドン・オリンピックのオープニング・セレモニーでプロトコール・マネージャーを務めた Andrea Miliccia (アンドレア・ミリッチャ)氏が創業、代表も務める House of Protocol では、プロトコール・スクールなども実施しています。

House of Protocol
https://www.houseofprotocol.com/

-ブログ, 異文化, 翻訳, 言語, 通訳
-, , , , ,