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サッカー女子ワールドカップ2023 ~通訳者の視点から~

オーストラリアとニュージーランドにて、2023年7月20日~8月20日まで開催されたFIFA女子ワールドカップ2023は、スペインが優勝。日本代表「なでしこジャパン」は準々決勝にてスウェーデンに敗れましたが、FIFAフェアプレー賞他を受賞しました。皆様、おめでとうございます!

弊社代表の右田アンドリュー・ミーハン及びミーハングループ 登録通訳者は、本大会にてFIFA記者会見の英日/日英通訳を担当致しました。そこで今回は、このワールドカップでの通訳エピソード等をご紹介したいと思います。Joshua ChoateによるPixabayからの画像)

女子ワールドカップ
FIFA記者会見での通訳

2023年7月20日~8月20日にかけて行われたFIFA女子ワールドカップ2023 オーストラリア&ニュージーランド大会。

優勝はスペイン、準優勝はイギリス、3位には準々決勝で日本を負かし、開催国オーストラリアを破ったスウェーデンが輝きました。

日本代表「なでしこジャパン」はFIFAフェアプレー賞を受賞、さらに 宮澤ひなた選手がゴールデンブーツ(得点王)を受賞しています。

FIFA女子ワールドカップ:ゴールデンボールほか各賞受賞者一覧(20 8月 2023 FIFA)

今回のサッカー女子ワールドカップ2023では、FIFAによる記者会見の英日/日英通訳(同時)を弊社代表の右田アンドリュー・ミーハン及びミーハングループ 登録通訳者が務めました。

そこで今回のブログでは、この記者会見で感じたことをアンドリュー・右田に紹介してもらいます。

サッカー用語

女子ワールドカップ2023 オーストラリア&ニュージーランド大会での、FIFA主催記者会見では 日本語、中国語、韓国語、ノルウェー、イタリア、ベトナム、アラビア、スペイン、ドイツ、スエーデン、フィリピン、オランダ、ポルトガル、フランス語の14言語が提供されました。

私、右田アンドリュー・ミーハン及びミーハングループ 登録通訳者は、この会見の英日/日英通訳を担当させて頂いたのですが、サッカー用語も時代と共に変わっている事を痛感しました。

私が子供の頃、マンガ「キャプテン翼」を読んで覚えたサッカー用語、例えば「自殺点」は「オウンゴール」、「ロスタイム」は「アディショナルタイム」等々。

また、延長戦に突入後どちらかのチームがゴールを決めた時点で試合終了する事を、サドンデス / sudden death と以前は言っていましたが、「突然死」を意味する為、現在ではゴールデンゴール方式 / Vゴール方式 等とも呼ばれています。

オウンゴール
wikipediaより

かつての日本では「自殺点」と呼ばれていたが、1994年(平成6年)に日本サッカー協会が、英語の「 own goal 」に準じて「オウンゴール」とすると発表し、以降はこの名称が使われている。

1994 FIFAワールドカップでオウンゴールをしたコロンビア代表のアンドレス・エスコバルが、帰国後の7月2日に射殺される事件があった。日本サッカー協会はこの事件を期に、それまで使われていた「自殺点」という表現をやめ、「オウンゴール」に改めることを、9月16日に発表した。同年には、それまで「サドンデス」(「突然死」の意)と呼ばれていたゴールデンゴールを「Vゴール」と改める同様の名称変更もなされていた。

比較文学者の井上健は、イギリス英語の俗語では「 own goal 」が「自殺(者)」を意味する場合もあると指摘し、「自殺点」は案外由緒正しき訳語なのである」と述べている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB

参考リンク:サッカーのルールや用語 わかりやすく!女子W杯のお供に(2023年7月25日 NHK NEWS WEB)

もちろん事前に下準備をし、最新のサッカー用語も覚えてFIFAの記者会見には臨みましたが、ついつい昔覚えた言葉が出てきてしまうこともあり、注意が必要でした。

記者会見で
よく出てきた表現

FIFAワールドカップには、当たり前ですが「サッカーに精通した人」が集まっています。

選手やコーチ、監督などの競技関係者はもちろん、メディアの人々も日頃からサッカーを取材している人が多く、それ故に言葉、特にテクニカルターム / technical term = 専門的な技術用語や術語を端折って話す事も多々あります。

例えば「間延び」。普通の会話の中でも使われる「間が延びた、しまりのない事」を意味する言葉ですが、サッカーでは「ライン間が必要以上に空いてしまうこと」を意味します。

サッカーの試合では、選手の陣形として「最終ライン、中盤、最前線」と大きく分けて3つのラインがあります。その間隔が開いてしまうことを「間延び」と呼びます。この言葉は記者会見でも良く出てきました。

本来であれば、隙が出来ない様にフォーメーションを組んでいるのに、試合中にそれが崩れて、相手に入り込まれる隙が出来てしまう状態を「間延び」と表現しています。

これを英語にする場合は、上記意味を踏まえて 例えば creating gaps or holes between the players (usually midfielders). または becoming less compact などと表現できますが、これはあくまで一般的な訳の一例です。

実際の記者会見では「間延び」と言う日本語が出た場合の、前後の文脈に併せて臨機応変に訳す事が求められます。

参考サイト: Tactical theory: Receiving and playing between the lines (#28 July 2nd 2020 Total Football Analysis Magazine)

「間延び」以外にも記者会見で頻繁に使われた言葉があったので、幾つかご紹介します。

  • ミドル
    中盤の事を意味します。英語では midfield 、選手の場合は midfielder
  • サイド
    サッカーフィールド内で脇に居る選手を指す事が多いですが、英語では「サイド」とは表現せず left and right / left or right と言います。ですので、話の中で右左がはっきりしてれば右からの攻撃、左の守備 等 話の流れに合わせて訳します。
  • コンパクト
    これは「間延び」とは逆の状態を表す言葉です。「最終ライン、中盤、最前線」の間隔が狭い事。これは英語でも compact と表現します。
  • スリーバック / 3バック
    ゴールキーパーを除いた、自陣のゴールを守備する選手 / 守備の最終ラインの選手数が3人の事を意味します。4人になれば4バック、5人になれば5バックとなります。しかし英語では back three と表現されます。(言葉が前後逆です)

因みに守備の最終ラインの選手数を3人、4人ではなく、3枚、4枚と表現する事もあります。

それと大事なことですが、イギリス英語ではサッカーは Football ですが、アメリカ及び今回のFIFA女子ワールドカップ主催国 オーストラリアとニュージーランドでもサッカーは Soccer です。

リレー通訳

冒頭にも書きましたが、今回のFIFA記者会見では日本語、中国語、韓国語、ノルウェー、イタリア、ベトナム、アラビア、スペイン、ドイツ、スエーデン、フィリピン、オランダ、ポルトガル、フランス語の14言語が提供されました。

これらの言語はピボット言語(英語)を介したリレー通訳にて訳されました。

リレー通訳とは、例えば、日本代表選手の記者会見の場合、選手が日本語で発言すると以下の順序で訳されます。

選手(日本語)→日英通訳者(英語)→各言語通訳者(各言語)

またフランス語のメディアの人が仏語で日本の選手に質問をした場合は、以下の流れになります。

フランス・メディア(仏語)→仏英通訳者(英語)→英日/日英通訳者(日本語)→選手(日本語)

日本対スペイン戦のFIFA記者会見では、AIIC(国際会議通訳者連盟)のスペイン語/ 英語の通訳者の訳にてリレー通訳をしました。

対ノルウェー戦ではノルウェー語 / 英語通訳者とリレー、対スウェーデン戦ではスウェーデン語 / 英語役者とのリレー通訳となりました。

スペイン語/ 英語のリレー通訳は初めてではありませんでしたが、ノルウェー語・スウェーデン語 / 英語のリレー通訳は初めてでした。

因みにノルウェー語・スウェーデン語の通訳者もAIICのメンバーでした。

AIIC(国際会議通訳者連盟)は、通訳者の権利保護や地位向上を目指す綜合専門職能団体で、国際連合(国連)や世界銀行、国際オリンピック委員会(IOC)などの国際団体、主要国首脳会議(G7 /G20)等と提携。FIFAも多くの通訳者をAIICから採用しています。

右田アンドリュー・ミーハン

AIIC (国際会議通訳者連盟:読み方は アイイク)は、日本ではまだ馴染みが薄い組織ですが、世界100ヶ国以上、約3,000名の通訳者が登録。

日/英の通訳者は20名ほどが会員となっており、日本在住のメンバーは7名(2023年8月現在)。弊社代表の右田アンドリューミーハンもその内の1人です。

AIIC Website
https://aiic.org/

AIIC
English Retour Workshop

2023年8月26日 東京・新宿にてAIICのEnglish Retour Workshopが開かれます。こちらはAIIC会員で無くても参加可能です。

講師は Matthew Perret 氏。英語/スペイン語(イタリア語、フランス語)の通訳者で、欧州議会 等の通訳をされています。

また、会議通訳者のトレーニングなども行っている方で、国際機関やAIICのトレーニングのトレーナーとして世界的に活躍するほか、アジア言語を母国語とする通訳者を対象に、定期的にアジアでも講師を務めています。

申込及び詳細は、AIIC Website / English Retour Enhancement with Matthew Perret にてご確認下さいませ。

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