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アメリカと日本の裁判の違い ~通訳者の視点から・その2 ~

今回は、通訳者目線による「アメリカと日本の裁判所の違い」のご紹介(その2)。2023年1月アメリカで行われた裁判で、弊社代表 通訳の右田アンドリュー・ミーハンが通訳を務めたことから、改めて気が付いたことをご紹介したいと思います。

アメリカと日本の
違い

前回、このブログでは主にアメリカと日本の裁判所及び裁判に関わる通訳者(司法通訳者)の待遇や、法廷文化の違いについて、ご紹介しました。

今回の記事では、弊社代表 通訳の右田アンドリュー・ミーハンが通訳を務めた、2023年1月アメリカで行われた裁判の様子を中心に、アメリカと日本の違いをご紹介したいと思います。

陪審員裁判

今年1月 右田アンドリュー・ミーハンが通訳を務めた、ニューヨークで行われた裁判は、Jury Trial(陪審員裁判)でした。

アメリカでは、半日の裁判だと通訳者は1名ですが、全日(1日がかり)の場合は、通訳する状況に応じて1名~2名となります。

例えば 証人への質疑の時だけ通訳をつける場合は全日でも1名、裁判官のために通訳者が参加する場合は、同時通訳対応で2名といった具合です。

因みに国連では 逐次通訳の場合 半日は1名、全日なら2名体制となります。同時通訳の場合は、半日だと2名、全日の場合は3名体制となります。ですので、アメリカの法廷で通訳をするばあいは、スタミナが必要になります。

陪審員席 / Jury box は、最大15名が座れるように席が用意されていますが、裁判によって参加人数は異なります。

今回の陪審員裁判での陪審員/ juror 数は9名でした。

連邦地裁 / federal district court は、裁判官が1人と、裁判官の秘書の様な仕事をする courtroom deputy 及び law clerk が1名づつ付きます。

law clerk はロースクールを出た人が行い、裁判官の担当事案のリサーチ全般や、公判中のメモを取ることが主な仕事です。

courtroom deputy は、法廷の管理 及び 裁判官の担当事件やスケジュール管理などが主な仕事になります。

さらに今回は民事でしたので居ませんでしたが、刑事事件の場合は、被告に付き添い管理するスタッフも居ます。

裁判員裁判

日本には裁判員裁判がありますが、裁判員 / lay judge は通常3名づつ、裁判官・裁判長が座る列の右と左端に座ります。

その下の列には書記官、通訳(半日だと1名、全日だと2名)、速記者(全日だと3~4人が20~30分交代で対応)が座ります。

因みに 日本では、裁判員が被告などに質問をする機会が設けられていますが、アメリカの陪審員は質問する機会はありません。他にも裁判員裁判と陪審員裁判の違いは色々ありますが、今回は割愛します。

陪審院裁判の様子

公判前・審理手続き

まず pretrial conferenceで、今まで確認された内容の再確認や、最後のやり取りのまとめなどが行われます。 pretrial conferenceとは裁判開始前の打ち合わせを意味し、原告被告と裁判体での協議となります。

だいたい pretrial conference は午前中に行われ、午後に陪審 / Jury の選定が行われます。

選定は半日かけて行われ、20~30人の候補者が被告側・原告側弁護人から、学歴など色々な質問を受けます。日本企業や日本人が被告や証人の場合、日本または 日本人に対する印象・知識・偏見なども検証されます。

法廷

法廷では、席は2列になっており、原告は前の列、被告は後ろの列に座ります。

傍聴席はさらにその後ろに配置されています。ちなみに傍聴席は硬い木製の席なので、クッション等を持ってくる人も散見されました。

日本と同様に裁判官が入廷する際には全員が起立ます。courtroom deputy All rise!(みな 起立!)と大きな声で言います。これは休憩の際も同様で、毎回起立が命じられます。

陪審員 / Jury

陪審員 / Jury を法廷内に案内したり、退廷する際の誘導は courtroom deputy が行います。

陪審員 / Jury が入ってくる時も、裁判官と同じく全員起立しなければなりませんが、彼らは別の入り口を使うため、起立する際には陪審員 / Jury の方を向いて、起立するのがポイントです。

陪審員 / Jury が再入場する際には、ドアを大きく3回ノックした後 Jury entering!(陪審員 入廷!)と言います。

陪審員が退廷した後、裁判官が弁護士や証人に指示などの話をすることがあります。これは、陪審員に聞かれたら「偏見」を生じさせてるかもしれない内容の指示をする場合が多いです。

証人尋問での通訳

承認尋問での通訳の場合、通訳者は公判に呼ばれた証人の尋問が終了したら、そこで業務終了となる場合が多いです。

今回、弊社代表 通訳者の右田アンドリュー・ミーハンが参加したのは、合衆国法でさばく民事裁判:契約の違反に関する損害賠償事件で、証人が日本人の為 通訳者として参加しましたが、証人に対しての刑の宣告はなかったので、証人尋問終了後に業務は終了しました。

アメリカでの民事訴訟で
通訳者が求められること

アメリカで行われる、日本人や日本企業が関連する裁判は、民事の場合、契約や特許関連が絡む案件が多いです。

通訳者が事前に証拠文献を見せてもらえることは稀なので、契約書の条文の文言(legalese / 法律用語)の朗読の通訳や、特許の文言( patentese / 特許用語)の通訳を、事前準備ナシにする事も多々あります。

ですので、民事の法廷で通訳をする場合は、Diplomatic English / 外交で用いられる英語 を含む Business English / ビジネス英語 のほか、legalesepatentese 等の習得も Trial interpreter には求められます。

Diplomatic English / 外交で用いられる英語は、一般ビジネス英語のより洗練された、日本語で言えば謙譲語の様な表現 / 英語を意味します。

また、陪審員裁判では「わかりやすい英語」がポイントなので、英語ネイティブの通訳者が求められる事が多いです。

参考リンク : Federal Court Interpreters (United States Court)

ISO 規格

国際標準化機構 / ISOには、ISO/TC37/SC5 (technical committee 37, sub committee 5)といった通訳や翻訳のISOもあります。

弊社代表 通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、上記規格も含めISO/TC37/SC5での委員を、2015年から担当しています。

法廷での注意すること

日本でもそうですが、法廷内での飲食はアメリカでも原則禁止です。

透明な飲料=水だけが持ち込み可能となっていて、弁護士団は水を1ケースづつ持って入ってる事が多いです。

通訳者は、日本では飴などを持ち込む場合がありますが、水は持ち込めないことが多いです。

アメリカでもミント系の飴は持ち込み可能とされていますが、ガムやグミなど音が出るものは食べてはいけません。また包み紙等をうっかり置き忘れると、裁判官から大目玉を食らう事があります。

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