仕事をする際に、日本と海外では通訳者や翻訳者に求められる条件等が異なる場合があります。今回のブログ記事では、気がついた点について幾つか簡単ではありますが紹介したいと思います。
日本と海外
求められる資格や条件
国境に関係なく、それぞれの言語と専門性を持って世界の様々な場所で活躍する通訳者、そして翻訳者。
しかし、働く時の立場や求められる資格など、日本と他国では異なる事があります。
まず、日本ではまだ通訳や翻訳の国家資格は存在しませんが、他国だと国家資格を設けている国もあります。
- 世界の翻訳資格事情(日本翻訳協会)
- National Accreditation Authority for Translators and Interpreters (Australia)
- American Translator's Association
※日本では「報酬を得て外国人に対して旅行案内を行う」通訳案内業=全国通訳案内士のみ、国家資格が設けられています。全国通訳案内士試験概要(JNTO)
海外で通訳・翻訳者として活動する場合、国家資格が存在する国ではその資格の有無が求められる場合もありますし、例えば AIIC(国際会議通訳者連盟)など、通訳や翻訳者の組織や団体への所属の有無などが必要な場合もあります。
これ以外にも、大学または大学院での通訳や翻訳を専門に勉強をしているか否か(通訳・翻訳の学位を持っているか否か)が、大前提となる場合もあります。
これら資格の所持や、通訳・翻訳の団体・組織への加盟、大学等での学位の有無が求められるのは、資格や所属団体・組織、または学位が通訳・翻訳者の実力を客観的に評価、認定しているからに他なりません。
もちろん資格や学位が無くても、それに匹敵する実績を持っていれば、それが通訳・翻訳者の実力評価として認められる場合もあります。
日本の場合、通訳や翻訳の仕事依頼はエージェントを通して行われる事が多く、通訳者や翻訳者の実力は依頼をするエージェントが担保する場合が多いです。
一方、海外の場合、特に欧米ではエージェントを通さず、企業から通訳または翻訳者に直接依頼が少なくなく、加盟している団体や組織を通して依頼される場合も多いので、通訳や翻訳の資格等、実力を明確に示すモノが必要となるのではないでしょうか。
※通訳や翻訳者にも様々な種類があります。ここで話しているのは会議通訳や企業案件、司法案件等の通訳・翻訳者のケースで、外部に依頼する場合となります。社内通訳者や翻訳者の場合や、書籍の翻訳やゲーム・マンガ・映像(字幕)翻訳などでは状況が異なる場合もあります。その点はご理解、ご了承くださいませ。
日本での
通訳・翻訳検定試験
日本ではまだ通訳や翻訳の国家資格は存在しませんが、通訳や翻訳の実力を認定する検定は実施されています。
- ビジネス通訳の標準試験 TOBIS / 特定非営利活動法人 通訳技能向上センター
- 司法通訳技能検定試験 / 一般社団法人 日本司法通訳士連合会
- 医療通訳技能認定試験【専門 / 一般】/ 一般財団法人 日本医療教育財団
- 医療通訳技能検定試験 / 一般社団法人 日本医療通訳協会
- 一般通訳検定 TOUI / 通訳品質評議会
- JTFほんやく検定 / 一般財団法人 日本翻訳連盟
- JTA公認翻訳専門職資格試験 / 一般社団法人 日本翻訳協会
通訳や翻訳の検定試験については通訳翻訳ジャーナルのWebsiteでも紹介しています。
- 通訳関連の検定試験
https://tsuhon.jp/interpretation/skill/exam_interpretation - 翻訳関連の検定試験
https://tsuhon.jp/translation/skill/exam_translation/
また通訳翻訳ジャーナルWebsiteでは「通訳者・翻訳者になる!デビュールートを知ろう」と言う特集記事も掲載中です。ご興味のある方はチェック下さいませ。
司法通訳・翻訳
における違い
裁判所等 司法関係の通訳・翻訳業務を請け負う場合、アメリカの場合、フリーランスであっても案件遂行中は officer of the court と言う立場になります。
つまりその案件において一時期間を公務員として業務を遂行する立場になる訳です。
日本では司法を含む官公庁から通訳・翻訳者への発注構造は異なるので、同じような立場は存在しませんが、強いて言うのであれば「嘱託公務員」として業務を遂行する、と言った感じでしょうか。
もちろん通訳者・翻訳者は、司法関係の業務を請け負う場合は、必ず契約書(年間契約ならば年間契約書)を交わしますし、内容によっては事前のセキュリティ・クリアランス・チェックが必要な場合もあります。
また、アメリカでは複数州が通訳者・翻訳者の採用試験を実施。試験を通った通訳者・翻訳者のみが登録をし、官公庁の業務を請け負う形をとっているケースもあります。
この為、登録翻訳者は登録した機関が認める(任命する、公認する)者として翻訳証明証書を発行する事ができます。
※翻訳証明書
VISA申請等、公的機関への提出書類の翻訳内容を証明する書類のこと。
翻訳証明書(公正証書等)は、日本の場合は、通訳者・翻訳者は認証できず、内容によっては公証役場や行政書士等の認証が必要となります。
因みにミーハングループ 翻訳部門は、大使館申請書類や訴状、議事録、各種法文翻訳も数多く扱っており、翻訳証明書 / Certificate of translation、公証取得 / Notarizationにも対応しています。