ミーハングループは、難航する交渉の場での通訳や翻訳案件を多く手掛けています。そんな時に欠かせないのが、相手に不快な思いをさせず、スムーズに物事を運ぶためのコミュニケーション術です。
本ブログでは、そんな様々な状況で培った英語で好印象を持たれるコミュニケーションのノウハウ、特に現在 必要不可欠なオンラインでのコミュニケーションの秘訣を、シリーズにしてご紹介していきます。第1回目の今回は基礎編です。
英語にも
丁寧な表現はある
日本語の敬語には「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」があり、その使い分けはかなり複雑です。またビジネスの場や公の場では、人や業界にもよりますが、概ね単刀直入な言い方より、婉曲な言い方が好まれます。
それに対して英語は、日本語よりも敬語表現が少なく、ダイレクトな表現が多いと言われます。
本当でしょうか?
コレもまた、人や業界、または国にもよりますが、日本語の敬語ほど複雑ではないにせよ、やはりビジネスの場に適した表現、適さない表現、丁寧な言い回し、相手に好印象を残す話し方や書き方と言うのは存在します。
ただ、もちろん日本とは文化が違うので、日本語の丁寧な表現をそのまま訳しても、相手に伝わらなかったり、誤解を生んだり、酷い場合は不快感を与える事もあります。
通訳 / 翻訳者は そのギャップを埋めるべく、空気を読んだり、対象国の文化や、ビジネス文化、交渉の文化を頭に置いた上で、日々奮闘しているわけです。
特に昨今は、オンライン(音声のみやテキストのみ)でのやり取りも増えています。ちょっとした内容なら、英語や他国語に自信が無くても、機械翻訳を使ってササっとやり取りと言うケースもあるでしょう。
そんな時、このシリーズでご紹介するテクニックを使って、よりスムーズなコミュニケーションを図って頂ければと思っています。
敬称の書き方
日本語でビジネスメールなどを送る場合、文章の前に相手の名前:△△会社 ■■部 部長 〇〇様 や、〇〇様 と書きますが、英語の場合も同様です。
男性の場合は Mr. 女性の場合は Ms. が敬称になります。
また日本と同じように職種による肩書を使用する場合もあります。医師や博士号の資格を持っている人の場合は Doctor の略記 Dr. 、教授の場合は Professor または略記 Prof. が性別関係なく使えます。
名前も性別もわからない場合 Sir or Madam (Ma’am) 複数なら Sirs and Madams 、性別は分っているけれど名前がわからない場合は Dear Sir / Dear Madam (Ma’am) と書くこともありますが、現在は、飛行機の搭乗アナウンスで使われていた Ladies and Gentleman と言う呼びかけが Everyone に変更される時代です。うかつに使う事はおススメしません。
また名前がわかっていても性別がわからない場合は、相手のフルネーム + , esq と書くこともありますが、最近はよっぽどお堅い文章や、弁護士に使用する以外は見かけません。
〇〇ご夫妻と書くシチュエーションがある場合 Mr. and Mrs. 〇〇 と書く事もありますが、夫婦が同姓ではないケースも最近は増えていることから、〇〇夫人を意味する Mrs. 〇〇 と言う敬称は余り使いませんし、使う場合は注意が必要です。
国際ビジネスの場では、既婚/未婚は基本的にプライベートな事なので、そこに踏み込む行為は、現在は失礼にあたりますから 未婚女性の敬称 Miss を使う事は稀です。
アメリカ大統領 ジョー・バイデン氏の妻であるジル・バイデン氏の事を、日本語ではバイデン夫人と言う事もありますが、彼女は博士号を持っている為、英語で敬称をつけた表記は Dr. Jill Biden となります。
性別がわからない場合、または相手が望む敬称が不明の場合、間違った敬称を使用してしまうと初っ端から印象を悪くする可能性があります。
現在は、ジェンダーニュートラルな状況も反映して Dear(相手のフルネーム)、または既にやり取りがある、知っている相手の場合は相手の望む敬称をつけるか、 Hello(相手のフルネーム / 相手のファーストネーム) と書く事が一般的になりつつあります。
ジェンダーニュートラルな敬称としては Mx. がありますが、これは業界にもよりますが、一般的にはあまり使用されていません。
言葉や表現は時代によりアップデートされます。そう言った事に敏感に対応/反応する事は、相手に好印象を与える場合が多いですが、時として旧い価値観を大事にする人もいますから、そこは注意が必要です。
そう言う意味では、日本で一般的に使われる敬称 〇〇様 はジェンダーが関係ありませんから、心配は少ないですね。
挨拶
ビジネスの場で、メールやテキストでやり取りする場合、日本では本題に入る前に「いつもお世話になっております」「(社内の場合は)お疲れ様です」と言った定型の挨拶を書く事は一般的です。
初めて連絡が来た相手なのに、挨拶で「いつも大変お世話になっております」と書かれていて、「初めてのやり取りなのに?」や「ナニか取引あったかな?」と思う場合もあったりしますが、如何でしょう?
英語でメールやテキストを送る場合、こう言った「定型の挨拶」は特にありません。あるとすれば、本文に入る前に名前と共に、丁寧な場合は Dear 、一般的な感じであれば Hello 、親しい間柄なら Hi と書き添えるくらいでしょうか。
それ以外の挨拶を書く場合は、関係性や状況によって変わりますが、いわゆる「挨拶」を書かなければならないと言うルールはありませんし、書かなくても失礼には当たりません。
一般的には、書いたとしても
- Dear 〇〇 I hope all is well with you.
- Dear 〇〇 Hope you are well and safe.
※and safe を書かない場合もあり。
程度です。日本の正式な文章の冒頭にある様な「○○様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」なんてことを書くと、連絡してきた目的はナニ?と思われる事もあります。
挨拶は簡潔に、それが英語のテキスト(オンライン)コミュニケーションのマナーです。
チャットや
メッセージの場合
最近は、ビジネス等でもチャットやソーシャルメディアのメッセンジャーシステムを使って、コミュニケーションをとる事も多いと思います。
その場合、メールよりも簡潔にやり取りする事が求められるのは、英語でも日本語でも同じかと思います。
しかし、いくら英語だからと言って Hello も Hi もナシでは、相手から嫌がられます(もちろん親しい間柄であれば、話は別ですが。それでも普通は Hi くらいは付けます)
それ以外で気をつけたい点は、例えば対面で会った事がない相手の場合、アイコンに使われている写真が若かったり、面白い写真だったとしたとしても、真面目な要件で連絡するのであれば、丁寧な言葉遣いは必須です。
アイコンの写真=実際の相手の年齢や性格を反映しているとは限らないからです。
また省略語や、若者言葉(流行している表現)を使うのも危険です。例えばオンラインで to You の事を 2U と書いたり、In my opinion を IMO と書いたりしますが、コレをビジネス的なやり取りで使う事は、親しい間柄でなければ避けた方が良いでしょう。
相手が明らかにその略語/略表記を知っている場合以外は、業界用語的な略語も同様です。
チャットやメッセージだと、ついカジュアルな英語になりがちですが、自分から「カジュアルな英語で書き出さない」ことは大切です。
相手がカジュアルな英語でメッセージをして来たら、それに合わせた形で返すのは良いですが、必要以上にカジュアルになりすぎない注意も必要です。
プライベートで使っているソーシャルメディアで、略語やネットスラング等を使う事は、別に問題ありません。
しかし、ネットスラングの流行は、一般的な言葉の流行より、はやりすたりが早い事でも知られています(洋の東西問わず)。得意げになって多用していると、実は....って事もありますので、ご注意下さいませ。
スムーズに
物事を運ぶためには
日本語でも英語でも、スムーズに物事を運ぶ為のルールやマナーがあります。
しかし、その大半はそれぞれの国や言語の、文化や常識等を反映している事が多いです。
このシリーズでは、そんな「異文化コミュニケーション」を円滑に行う為のテクニックや考え方を、具体的な例なども交えながら、今後もご紹介していきたいと思います。