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たとえ話 ~通訳者の苦労話 その4~

会議などで言いたい事をより分かりやすく相手に伝えるために「たとえ話」をする人がいます。この「たとえ話」、実は通訳にとっては「やっかい」な場合もあります。今回のブログではそんな「通訳の苦労話」をご紹介します。Jo_JohnstonによるPixabayからの画像)

英語で何と言う?
たとえ話

たとえ話のことは、英語では parablemetaphor, allegories などと言います。

from Cambridge dictionary

parable noun
a short, simple story that teaches or explains an idea, especially a moral or religious idea
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/parable

metaphor noun
an expression, often found in literature, that describes a person or object by referring to something that is considered to have similar characteristics to that person or object:
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/metaphor

allegory noun
a story, play, poem, picture, or other work in which the characters and events represent particular qualities or ideas that relate to morals, religion, or politics:
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/allegory

https://dictionary.cambridge.org/

「たとえ話」は、会話や会議等で「自分の言いたい事を相手により分かりやすく伝える為」にするのが一般的です。

しかし、会議や会話に参加している人が コンテクスト=背景情報なども含めて「共通に認識」している物語や、話題を元に「たとえる」ならば分かりやすいのですが、そうでない場合は「???」となることも...。

特に「世代」や「育った環境」が異なる相手、つまり「異文化」の人との会話や会議の場合、自分の言いたい事を相手により分かりやすく伝える為にした「たとえ話」で相手が余計に混乱するケースも、無きにしも非ずです。

通訳泣かせでもある
たとえ話

この「たとえ話」実は通訳泣かせでもあります。

通訳が参加する会議の多くは、基本的に「育った環境」が異なる相手、つまり「異文化」の人が参加する会議です。

そんな場所で、自分が昔見たアニメやマンガの話を「たとえ話」として出されたら、説明に一苦労です。

ところがスポーツの場、サッカーだと「キャプテン翼」の話題がでたり、野球では「巨人の星」や「ドカベン」の話がでたりする事は、少なくないそうです。

通訳者は「会議に出そうな」単語や表現、話題などは事前に調べて「単語帳」にまとめる等の準備はしていますが、たとえ話までは網羅していない場合もあるので、現場でアタフタしてしまう事もあるそうです。

また 日本と言う事を意識して、海外からの参加者が「歌舞伎」や「能」などの伝統文化や、ジブリのアニメや「鬼滅の刃」などの最近のアニメやマンガを「たとえ話」に用いる場合もあるとか。

こう言った「予想外」の話題にも、咄嗟に、それも相手に伝わる様に訳さなければならないのが、通訳者の大変なところです。

関ヶ原の戦い
Battle of Sekigahara

最近、実際にあった「たとえ話」のエピソードを、弊社代表 通訳者の右田アンドリュー・ミーハンに聞いてみました。

先日参加した ある企業のミーティングでは、「たとえ話」に「関ヶ原の戦い」や、アニメ/マンガの「ドラゴンボール」、さらには映画の「ワイルドスピード」「ミッションインポッシブル」 が出てきました。

話者が、競合する企業との状況を「関ヶ原の戦い / Battle of Sekigahara」に 例えたのですが、途中でギリシャとペルシャの戦い=マラトンの戦い / Battle of Marathon も登場したので、聞き手が混乱しない様に訳すのに大変でした。

「ドラゴンボール」を用いた「たとえ話」は【サイヤ人はスーパーサイヤ人になることで戦闘力を強化した。つまり 我々も現状に満足する事なく、現在の事業を更に強化し、市場における戦闘力を高めなければならない】と言った内容でした。

映画「ワイルドスピード」と「ミッションインポッシブル」の話も、同様の流れで「たとえ話」に用いられましたが、基本的なストーリーを理解していないと分からない(訳せない)内容だっただけに、観ていて良かったと 胸をなでおろした次第です。

右田アンドリュー・ミーハン

日本人が参加する企業の会議や会話等では、四文字熟語やことわざ等が登場する事も少なく無いとか。

守備範囲(専門範囲)を超えていても、通訳者はその話題に即座に対応しなければなりません。たとえ知らなくても、または知っている話題だとしても、アタマをスグに切り替えないと話を見失ってしまいます。

ですので、話者の話を聞いてスグに判断・反応できる「瞬発力」や、様々な状況に「臨機応変」に対応できるスキルが、通訳者には求められます。

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