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ベルギー出張 ~通訳者の視点から~

弊社代表で通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは3月末から2週間ほど、通訳業務の為 ベルギーに出張しました。今回はその時の様子に絡めて、国際会議で通訳者はどの様なスケジュールで過ごすのか?や、通訳者が直面する語学能力以外の事柄=セキュリティ・クリアランス等、あまり知られていない側面等をご紹介したいと思います。Dimitris VetsikasによるPixabayからの画像)

ベルギー出張

弊社代表で通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、とある国際会議に参加する日本人の為の通訳として、2025年3月末から2週間ほど、ベルギーに滞在しました。

今回のブログ記事では、このベルギー出張に絡めて、国際会議で通訳者が直面する事柄や、どの様なスケジュールで過ごすのか?など、余り世の中では知られていない側面についてご紹介したいと思います。

averystyによるPixabayからの画像)

さて、皆さん。ベルギーと言ったらどんなイメージをお持ちでしょうか?

やはりベルギー・ワッフルやチョコレート、ビールと言った食べ物のイメージですか?

それともヨーロッパの美しい街並みでしょうか?

Ji-Sun YooによるPixabayからの画像)

WalkersskによるPixabayからの画像)

右田アンドリュー・ミーハンも、やはり美しい街並みや美味しい食べ物に魅了されたそうです。しかし、昨今の世界経済では当たり前の話にもなってきましたが、やはり物価が高かったとのこと。

因みにベルギーの公用語はオランダ語とフランス語、そしてドイツ語。より詳しく説明すると、北部フランドル地方はオランダ語圏、南部ワロン地方はフランス語圏、東部地方はドイツ語圏となっています。

とは言え、ブリュッセルやアントワープなどの大都市では英語は通じますし、若い世代の人達も英語を話す人が多いとのこと。

今回、右田が参加した会議も英語と日本語で行われました。

※今回 記事にて掲載している写真は全てフリー画像サイトからの写真になります。右田自身が撮影したモノではありません。ご理解・ご了承くださいませ。

ベルギー王国 / Kingdom of Belgium
(外務省 Website より)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/belgium/

国際会議での
通訳者のスケジュール

さて、海外/国内問わず国際会議で通訳を行う際、通訳者はどんなスケジュールで業務を行うのでしょうか?

ベルギーでのスケジュールをサンプルに、弊社代表 / 通訳者 右田アンドリュー・ミーハン自身のコメントにてご紹介。併せてベルギーでの食事価格事情等もご紹介します。

因みにベルギーは中央ヨーロッパ夏時間(CEST / Central European Summer Time)の為、日本との時差は7時間。

夏時間は、2025年は3月30日~10月26日までとなっており、その期間は日本の方がベルギーより7時間進んでいます。それ以外の期間は中央ヨーロッパ時間(CET / Central European Time)の為、8時間進んでいる事になります。

ベルギーで行われた国際会議での
通訳スケジュール

右田アンドリュー・ミーハン

今回の通訳は2名体制・英語を日本語に逐次通訳するお仕事でした。

逐次通訳は、話者が話している最中はメモを取り、話が一区切り または完了したら、そのつど訳すスタイルになります。

会議は朝9時から始まる事が多かったです。

ですので、私は会議が始まる5時間くらい前、朝4時頃には起床し、メールの処理をしたり、別の案件を片づけたり、当日の会議の準備などをした後、8時30分までには朝食をとる様にしていました。

宿泊していたホテルは会場から近かったので、私は毎日徒歩で会場に向かい、だいたい8時45分~50分には到着。

会場についた後はスタッフの方のエスコートにて、その日 会議をする場に向かい、午前中 9時から12時まで行われる会議にて通訳対応。

その後、1時間のランチ休憩を挟み、午後は13時~17時 または18時まで会議での通訳を行いました。

因みに、今回は会議終了後 各々自由に行動することが多かったですが、案件によってはランチやディナーでの通訳をお願いされる場合もあります。

今回は、会議終了後 私はホテルに直帰し、当日会議に出てきた新しい言葉の整理や、翌日の会議の為の予習等をしていました。

なぜなら、今回の会議は事前資料も少なく、会議で使用した資料の持ち出しも厳禁、ほぼ「ぶっつけ本番」で通訳をしていたからです。

ですので、出てきた言葉等、憶えていることは全てその日のうちに整理をしておかないと、翌日大変なことに...

本当は美しいベルギーの街並みを散策したり、食事やビールを堪能したかったのですが、そんな時間的または気持ち的余裕は全くありませんでした(苦笑)

ベルギーでの食事価格事情

Barry PitelenによるPixabayからの画像)

最近は当たり前になってきましたが、どこに行っても物価の高さに驚かされます。

場所によって多少値段は異なるでしょうが、ベルギーでは都市の場合、メインとなる1皿が20~30ユーロ=約3,500円~5000円。飲み物が10ユーロ=約1500円、これにサラダとかも注文したらプラス15ユーロ~18ユーロ=2000~3000円...

つまり、合計すると 1人前 / 1食 10,000円... 1食ですよ!!!! さらに食後のコーヒー、デザート、ビール等も入れたらもっとします。別に高級ではなく、ごく普通のレストランでこの価格です。

先程コメントした様に、今回のベルギー出張では時間や気持ちに余裕がなかったのもありますが、こんな物価高では私のお財布の余裕も...(溜息)

なので今回の出張での食事は、Uber Eatsに頼んだ方が2割くらい安かったので、毎晩ホテルでデリバリーを頼んでいました(苦笑)

因みに、ベルギーで驚いたのがコーヒーがとても熱かったこと。一緒に組んだ通訳者も、私も別に猫舌でもないのに、舌をちょっと火傷してしまいました。 

別のホテルや、通訳をした会場にあったスタバも同じ熱さだったので、ビックリしてしまいました。

でもコーヒー豆、特にエスプレッソ豆はすごく美味しかったです。もしかしたらベルギーと言えばで知られるチョコレートよりも美味しかったかも知れません。

右田アンドリュー・ミーハン

セキュリティ・クリアランス
国際会議で通訳する場合
求められること

ひとくちに国際会議といっても、そのレベルは様々です。

ここでは国内外問わず、重要な情報を扱う機密性の高い国際会議で通訳を行う場合、語学能力以外に求められる条件や事柄について、少しご紹介したいと思います。

デジタル・デバイスの
持ち込み禁止

最近の通訳を行う現場では、多くの通訳者がパソコンを含めたデジタル・デバイスを持ち込み、事前に用意した用語集をチェックをしたり、資料を見たりする事が少なくありません。

しかし、重要な情報を扱う会議の場合、情報の機密性のレベルにもよりますが、デジタル・デバイスの持ち込みが禁止だったり、PCを持ち込むことは出来るけどネットワークに繋ぐことが出来ないケースもあります。

その場合、事前に作成した用語集や資料などは、PC持ち込みが可能であればデスクトップ上に保存して使用、持ち込み禁止の場合は、紙に印刷して持ち込むしかありません。

また辞書等も、いわゆる書籍タイプの辞書を持っていくなど、アナログな方法で対処するしかありません。

最近では、デジタル・デバイスやネットワークにつなげて使用する辞書が普及している為、書籍タイプの辞書を引くのが苦手な方もいらっしゃると思いますが、場合によっては、デジタル・ツールが使用できない事もあるので、アナログな方法を知っておくのも大切だと思います。

セキュリティ・クリアランス
Security clearance

国際会議に通訳者として参加する際に求められる条件の1つに、 セキュリティ・クリアランス / Security clearance があります。

セキュリティ・クリアランスとは、重要な情報=機密情報を扱う場に参加する場合、信頼性のある人かどうか 身元を調査し、機密情報にアクセスできる資格者として政府が認定する制度を意味します。

通訳者であっても、政府機関が関係する機密性の高い情報を扱う国際会議に参加する場合は、セキュリティ・クリアランスのチェック を受けなければなりませんし、企業主体の国際会議でも重要な情報を取り扱う場合、セキュリティ・クリアランスが付与されているか否かをチェックされる場合もあります。

日本では、2024年5月10日に重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律、いわゆる「セキュリティ・クリアランス」制度の創設に向けた法律が可決。2025年5月16日より施行されます。

弊社代表の右田は、アメリカの司法省連邦刑務所局公認通訳士、司法省連邦捜査局嘱託言語学者(contract linguist monitor)としても登録しており、その際にセキュリティ・クリアランス・チェックを受けています。

アメリカ司法省連邦捜査局とは Federal Bureau of Investigation =FBI のこと。司法省連邦刑務所はFederal Bureau of Prisons = BOP と呼ばれます。

つまり、司法省連邦刑務所局公認通訳士 / 司法省連邦捜査局嘱託言語学者とは、アメリカ合衆国司法省の傘下にあるFBIの捜査や、連邦機関の刑務所において通訳を行う通訳者を意味します。

これら機関の通訳者として登録するには、語学能力等は基より、非常に厳密な身元調査を受けなければならず、右田アンドリュー・ミーハンは出身が長崎県佐世保市であった為、2年近く身元調査に時間がかかったとのこと。

通訳者であっても、それだけ厳重なセキュリティ・クリアランス・チェックが、アメリカ合衆国司法省傘下の機関では行われます。

因みに、国連を始めとした様々な国際機関は、AIIC(アイイク / 国際会議通訳者連盟)と契約している場合が多く、セキュリティ・クリアランスが必要な会議で通訳を務める際にも、AIICのメンバーであれば有利となるケースもあります。

通訳者からのTips

通訳者は、自分が思ってもみなかった様な機密性の高い情報に、業務を通して触れる事があります。

当然、業務を行う前に依頼主と交わす契約には「守秘義務条項」が含まれますが、扱う情報や内容によってはセキュリティ・クリアランスが必要となります。

私がアメリカの司法省連邦刑務所局公認通訳士、司法省連邦捜査局嘱託言語学者の登録をする際には、上記にある様に、身元調査に2年かかりました。

最近ではセキュリティ・クリアランス・チェックの際に、ソーシャルメディアでの発信内容等を見られる場合もありますので、投稿には注意が必要です。

右田アンドリュー・ミーハン

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