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通訳者の仕事道具 ~同時通訳編~

G7 広島サミット(第49回先進国首脳会議)が、2023年5月19日~21日まで開催されます。この様な外交の場 / 会議 等で行われる同時通訳にて、通訳者が使う仕事道具や事前準備について今回はご紹介したいと思います。

サミット 等での通訳

前回の本ブログでは、2023年5月19日~21日まで開催されるG7 広島サミットの情報を交えながら、外交の場での通訳方法について、簡単にご紹介しました。

政府首脳及び要人に随行/帯同する通訳者の多くは、相手の話の区切りの良いタイミングで話された内容を通訳言語に訳す逐次(ちくじ) 、または 「ささやき声」で話者が話しているのと同時に、ウィスパリングと呼ばれる方法で通訳を行います。

これらの通訳方法は、参加者が少数人、または 訳す言語が少ない場合が対象となります。

複数の言語、複数人が参加する会議の場合は「同時通訳」かつ「リレー通訳」で、言語を訳します。

「同時通訳」の場合、通訳者は専用のブースに入り、話者の話をイヤホン等で聞き取りながら通訳を行います。

今回の本ブログでは、同時通訳を行う際、通訳者が専用ブースの中で使用する「仕事道具」についてご紹介します。

通訳者の仕事道具
同時通訳編

コチラの写真は、2014年に撮影した弊社代表 通訳者の右田アンドリューの、通訳ブースに持ち込む仕事道具の一例を写したものになります。

もちろん、同時通訳をする際にブースに持ち込むものは、個々の通訳者によって若干異なりますし、時代によっても進化します。ですので今回紹介するのは、あくまで一例として捉えて頂ければ幸いです。

さて、写真に写っているものをメインに仕事道具をご紹介しましょう。

  • パソコン
  • ノート または メモ帳
  • ペン
  • イヤフォン
  • イヤフォン等の為の変換プラグ
  • リップ、目薬、ハンドジェルなど
  • モバイルデバイス
    写真はi-pod、このほかスマートフォンやタブレット型端末など
  • 音がならないタイマー
    ※写真掲載ナシ
  • 充電器やモバイルバッテリー
    デジタルデバイスやパソコン用
    ※写真掲載ナシ
  • 電子辞書
    ※写真掲載ナシ
  • USBメモリ

パソコンには、当日の会議などで使用する用語集などを事前に準備し、分かりやすい場所にまとめて保存しておきます。

ノート、またはメモ帳は、話者の発言内容を書き留める用です。

専用ブースでの同時通訳の場合は、机のスペースがある程度広い場合が多いので、大きいタイプを使用する事が多いですが、ウィスパリングや逐次の際には小さなメモ帳を使用したり、大きなメモ帳を挟んで使えるバインダー/クリップボード的なモノを使用する場合もあります。

ちょっと見えずらいと思いますが、3月に右田アンドリューが通訳として同行した 第4回野口英世アフリカ賞 受賞者 福島訪問 では、日⇔英 逐次/ウィスパリング通訳でしたので、右田はクリップボードにノートを挟んで使用しています。

また、コチラも3月に行われた Gサイエンス学術会議2023(G-Science Academy / S2023)での提案を直接岸田首相に渡す手交式 では、ウィスパリング通訳でしたので資料やメモ帳をクリップボードに挟み、話者の背後に座り通訳を行っています。

ペンは右田アンドリューは常に最低5本。内1つは赤を持参するそうです。

ヘッドフォンやイヤフォンは会場にも置いてありますが、自分の耳に合わない場合もあるので、持ち込む事が多いそうです。変換プラグは、会場の器具と自分のイヤフォンのジャックが合わない時に使います。

リップ、目薬、ハンドジェルなどのケア・アイテムは、会場が乾燥していたりする場合に使用します。ハンドジェルは、最近では皆さんも持ち歩かれる事が多いのではないでしょうか?

これ以外にもケア・アイテムとして、事前や休憩時などに噛むガムやミント系のアメ等があります。通訳者はウィスパリングや逐次などを、急遽 話者の近くでする事もあるので、口臭予防のアイテムを右田は常に持ち歩いているとのことです。

モバイル デバイス

モバイルデバイスは、パソコンのサブ機器として、また万が一パソコンが使用できなくなった場合のバックアップとして使用するケースもあるので、用意した「用語集」はクラウドサービスにも保存するなど、持参したパソコン以外からも簡単にアクセス出来るように管理しておく必要があります。

電子辞書を持ち込む方もいらっしゃいますが、最近はパソコンやモバイルデバイスで検索した方が早い場合もあるので、持参 / 利用率は低いとの事。

タイマー(音が鳴らないタイプ)は、パートナー通訳者との交代時間を計る為のモノですが、モバイルデバイスをタイマーとして使用する場合もあります。

ブース内で使用するデジタル機器の充電は、前日必ず行うそうですが、万が一の場合もあるので、充電器やモバイルバッテリーを持ち込むと安心です。

USBメモリも最近では使用することは、ほぼ無いとの事ですが、念のため持ち歩く人もいるとか。会議の資料を直前にUSBでもらう事もあるそうなので、モバイルデバイスだけでなく、パソコンを持参した方が安心です。

また 当日の会場の状況によっては、モバイルWi-Fiを持参した方が良い場合もあるので、インターネットのインフラ環境についての事前確認は重要です。

今回ご紹介したモノ以外にも、例えば資料を壁に貼る為のマスキングテープや、脳の疲れを取るための ちょっとした甘いもの、水筒などを持ち込む人もいます。

これらの仕事道具は、状況によっても若干変わりますし、持ち込めない場合もあります。

ブース内の機器は
音響会社が用意

ブース内にある機器については、通訳者が用意するものではありません。多くは音響機器会社が設置、レンタル等もしています。

しかし、通訳者も基本操作を覚えておく必要はあります。使った事のない機器の場合は、音響会社の方が使用方法について教えてくれるケースもあります。

同時通訳機器などを扱う様々な音響機器会社
参考例:株式会社放送サービスセンター

事前準備 / 用語集

会議の前に、通訳者には話者が話す内容も含めた資料が配られます。

特に話者が話す原稿等はギリギリになる場合も多いとの事ですが、事前資料を元に通訳者はその会議や通訳の場で使うであろうと思われる単語や、表現等を集めた用語集を作成します。

通訳者は、もちろん訳す言語のエキスパートではありますが、全ての言葉を確実に知っている訳ではありません。専門用語、業界用語、社内のみで使用している表現等もあるので、事前の下調べ及び用語集の作成は大事です。

また、会議に参加する人の名前の読み方、肩書などのチェックも重要です。

名前は、日本語でも通常の漢字の読み方とは異なる場合もありますし、英語でも一般的な綴りと読み方が異なる場合もあります(例:Michel=英語読みではミシェルが一般的ですが、マイケルの場合もあります)。

肩書も、会社や組織によって様々かつ、予め英語/日本語の肩書が決まっている場合もあります。

例えば「副社長」は、一般的には Vice-president ですが、Executive Vice President / Senior Vice President などとする場合もありますし、社長であっても President ではなく CEO の場合もあります。

また最近は会議に参加される方の 人名代名詞 / Pronoun についても注意が必要です。

このほか、地名や建物の名前なども特殊な場合もあるので、事前の下調べは重要です。

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