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接待や会食について ~異文化コミュニケーションの視点から~

今回はビジネスにおける接待や会食の場での、日本とアメリカ、または諸外国との違いや、気をつけたい点について、簡単ではありますが、ご紹介したいと思います。コロナ禍などを経て、日本の接待や会食のスタイルも、だいぶ変わってきていると言われていますが...。Tomoyuki MizutaによるPixabayからの画像)

日本の接待や会食

コロナ禍などを経て、酒席で取引先をもてなす事が当たり前だった日本の接待や会食のスタイルも、だいぶ変わってきていると言われています。

世代や考え方の違いから、仕事関連の接待や会食、または会社や部署などの飲み会を断る人も多くなってきており、特に「飲みニケーション」と呼ばれる昭和的な酒宴は、少なくなってきているのではないでしょうか。

一方で、アルハラ=アルコールハラスメントなんて言葉もある様に、意識の変わらない人や組織があるのも事実です。フジテレビ問題なども、接待や会食に対する意識の変わらなさ、企業風土を表していると思います。

※因みにアルコールハラスメントは和製英語です。

日本を拠点に執筆活動をされている日独ハーフの サンドラ・ヘフェリンさんは、先日、そのフジテレビ問題に関連する形で「接待に若い女性を「利用」する日本…ヨーロッパで歓迎される接待とは」と言うコラムを書かれました。

このコラムでは、サンドラさん ご自身の体験なども織り交ぜながら、ヨーロッパ(特にドイツ)での仕事関連における親睦の図り方や、日本との考え方の違い、特に接待の場での若い女性の在り方等について書かれています。

接待に若い女性を「利用」する日本…ヨーロッパで歓迎される接待とは / サンドラ・ヘフェリン(2025/02/14 読売新聞オンライン 大手小町)

そこで今回は、日本と海外の接待や会食についての考え方の違いや、気をつけたい点について、簡単ではありますが、本ブログでもご紹介したいと思います。

※全ての事柄において例外はありますし、個々において異なる状況が発生する場合もありますが、本記事では、あくまで一般的なビジネスの場での接待や会食の在り方、考え方についてご紹介したいと思います。

海外の接待や会食

最近は、会社の規定で接待を禁止する企業も少なくありませんが、仕事をより円滑に進める為、親睦を図る事を目的とした接待の場を設けたり、会食をしたりする事は、海外のビジネス・シーンでもあります。

ただ、サンドラさんのコラムにもあった様に、仕事に直接関連しない若い女性社員が接待や会食の場に同席する事は、アメリカをはじめとする英語圏やヨーロッパなどでは滅多にありません。

また、そもそも海外では余り見かけないのもありますが、日本のキャバクラやホステスクラブの様な場所に接待と称して行く事もありません。

一方で、日本では余りありませんが、接待や会食の場に「家族」や「親しい人(恋人やパートナーを含む)」が同席する事はあります。

これは、その仕事をする人を支えるパートナーや家族も、直接ではなくても業務を支えていると言う考えや、身近な人が共にいた方が落ち着いて参加出来ると言う考えがあるからだと思います。

また、最近は日本でも行われている様ですが、朝食や昼食を共にして親睦を図るケースもあります。

日本でも一時期 流行りましたが、昼食を共にしながらビジネス・ミーティングを行う事は、パワーランチ/ Power lunch などと呼ばれます。

大きなプロジェクトが無事成功した場合や、難航していた商談が上手く行った時、遠方からわざわざ出張して来訪した際などに、レストラン等にて昼食や夕食を共にする事もあります。

さらには、スポーツ観戦を共にする事もありますし、自宅で催すパーティーに家族も含めて呼ばれる事もあります。

アメリカをはじめとした英語圏及びヨーロッパでのビジネスにおいては、双方の家族や親しい人が同席するリラックスした雰囲気の中で交流をし、親睦を深め、お互いの人柄を理解する事が、接待や会食をする際の大きな目的の1つとなっています。

海外企業を
日本で接待する場合

海外企業とのビジネスにおいて、相手の方が来日した際に、接待をしたり、会食の場を設ける事があると思います。

弊社代表で現役通訳者でもある 右田アンドリュー・ミーハンも、その様な場に通訳として同席する事もありますが、日本では「気が利く」と褒められる事でも、海外企業、特にアメリカ等の英語圏やヨーロッパ企業が相手の場合、絶対にしない方が良い事があると言います。

それは、接待や会食に同席した人(特に女性)がお酌をしたり、食事を取り分けたりする事です。

ホテル等にあるレストラン、特に西洋料理のレストランで会食や接待を行う場合、給仕を行う専門のスタッフが各テーブルについて対応してくれますが、お店や料理によっては、その様な人がいない場合もあります。

そんな時、気を利かせて同席した日本の女性社員(または女性)や、末席の社員がお酌をしたり、料理を取り分けたり、次の注文を聞いたりと、何かと食事における雑事をしてくれる事があります。

日本では珍しい光景ではないですし、むしろ「気が利く」と評価される行為でもある事は、私も重々わかってはいますが、その様な状況を目の当たりにした場合、海外、特にアメリカ等の英語圏やヨーロッパ企業の人は、余り良い顔をしません。

それどころか、相手に不快な気持ちを抱かせる場合もあります。

私が それとなく、日本側に「その様な行為は止めた方が良い」と耳打ちしても理解せず、これが日本の「おもてなしの精神」と頑張ってしまうケースもあり、結果、気まずい雰囲気になって終わることも、無きにしも非ずです...。

右田アンドリュー・ミーハン

会食や接待の目的はお互いの目を見て会話をし、リラックスした雰囲気の中で交流を深め、親睦を図る事と思っている相手に対し、同席した人が給仕に勤しむのは、それが女性であれ、男性であれ、相手との交流を拒絶している様にも見えます。

また社員であった場合、業務外の事を命じる会社と言う印象を与えかねませんし、社員でない場合でも、皆が楽しむことが目的の場で、1人(または複数人)の人に給仕作業を押し付けていると言う、余り良くない印象を与える可能性があります。

ですので、海外企業の方々を日本で接待する場合は、相手の文化や料理の好み、食べられる物、食べられない物のチェック以外に、連れて行くお店の給仕の仕方なども確認しておく必要があります。

特に、冬場には美味しいお鍋など取り分ける必要がある料理等は要注意です。

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