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NHK 連続テレビ小説「虎に翼」その2 ~通訳者の視点から~

NHK 連続テレビ小説「虎に翼」。2024年4月から放送が開始された本作は、日本初の女性弁護士で、のちに裁判官になった三淵嘉子さんの実話に基づくオリジナル・ストーリーのドラマです。今回のブログでは「虎に翼」で注目された英語の話題をご紹介。また家庭裁判所における通訳の仕事についても併せてご紹介します。Sang Hyun ChoによるPixabayからの画像)

NHK 連続テレビ小説
虎に翼

2024年4月から放送が開始されたNHK 連続テレビ小説「虎に翼」は、日本初の女性弁護士で、のちに裁判官になった三淵嘉子さんの人生を基にしたオリジナル・ストーリーのドラマです。

2024年6月時点では、伊藤沙莉さん演じる主人公の佐田寅子(さだともこ・旧姓 猪爪)が、戦後の日本国憲法に希望を見出し再び法曹の世界へ舞い戻った様子が描かれています。

NHK『虎に翼』Website
https://www.nhk.jp/p/toranitsubasa/ts/LG372WKPVV/
X(Twitter)@asadora_nhk

以前、本ブログではドラマ「虎に翼」に因み、アメリカ最高裁での女性裁判官の歴史や法廷での通訳の歴史等を、かいつまんでご紹介しました。

ドラマ「虎に翼」と 英語

2024年6月3日から放送された第10週「女の知恵は鼻の先?」48話(6月5日放送)・49話(6月6日放送)では、ブレイク・クロフォードさん演じる GHQのアルバート・ホーナーと、主人公 寅子(ともこ)エピソードが描かれました。

「虎に翼」チョコくれたホーナーさんはNHK大河の常連だった 過去5作品に登場【ネタバレ】(2024/6/6 Yahooニュース / デイリースポーツ)

この48話・49話では、GHQの人物が登場したことから「英語」にまつわる話題も、ソーシャルメディアで注目を集めました。

Not at all

6月5日放送の48話では、GHQのアルバート・ホーナーと主人公 寅子の間で、英語でこんなやり取りがありました。

アルバート・ホーナー
One chocolate is hardly enough, is it?
字幕:1つでは足りませんね

寅子
Not at all.
字幕:大丈夫です

ドラマ「虎に翼」より

これは、GHQのアルバート・ホーナーが主人公の寅子にチョコレートをあげるシーンで、交わされた会話です。

差し出された1枚のチョコレートを受け取りながら、寅子は自分の娘1人と同居する甥っ子2人が喜ぶとホーナーに話しました。

ですので、ホーナーは「1つでは足りませんね」と寅子に聞いたのですが、これに対して寅子は「大丈夫です」との意味で Not at all と答えました。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、この場合 Not at all と返事をすると「全然(足りません)」と言う意味にもなります。

Not at all は、日本人からすると少しトリッキーな表現です。

誰かから Thank you と言われた時の返事として Not at all を言うと「全然!気にしないで」的な意味になりますが、誰かから何かを質問された場合 Not at all と答えると「全然○○」と質問の内容を否定することになる場合があります。

例えば Are you a fan of 〇〇? (〇〇のファンですか?)と聞かれて、Not at all と答えると「全然(好きじゃない)」と相手に伝わる可能性が高いです。

つまり Not at all は感覚的に言うと、日本語の「全然」と言う表現に近いです。

日本語でもそうですが「全然」の後ろに省略された言葉は、時として相手に「否定」として伝わる場合もあります。

先ほど紹介したアルバート・ホーナーと主人公 寅子の会話は、寅子が英語を流暢に話せない事や、英語による誤解を表しているシーンでもあった様で、ソーシャル・メディアでは、この間違いに気づいた人々が「誤訳?」「演出?」と投稿し、話題になりました。

ドイツ語訛りの英語

この Not at all の会話を受けて、翌日 6月6日放送 49話でホーナーは、沢山のチョコレートを抱えて寅子の家を訪問します。ホーナーは、寅子の Not at all を「全然(大丈夫です)」ではなく「全然(足りない)」と理解した様です。

そして、チョコレートをもらって喜ぶ子供たちの笑顔や、家族団らんの様子を見て涙します。

実は、アルバート・ホーナーの祖父母はユダヤ人で、彼もドイツから亡命してアメリカに渡った人物でした。

この放送の後、再びソーシャル・メディアで話題になったのが、アルバート・ホーナーが話していた英語のアクセントです。

アメリカ軍 ダグラス・マッカーサー/ Douglas MacArthur が最高司令官を務める GHQ=General Headquarters で働く人物なのに、アルバート・ホーナーがドイツ語訛りの英語を話していたので、疑問に思っていた人もいた様ですが、彼がドイツからの亡命者だとわかり、その演出の細かさに驚いていました。 (※あくまで視聴者による推測で、公式見解ではありません)

因みに、アルバート・ホーナーが話したドイツ語訛りの英語アクセントの特徴は【th→z または s の発音、w→v の発音】になりがちと言ったものでした。

このドラマ「虎に翼」に登場したアルバート・ホーナーは、ドイツ生まれで、ヒットラーによるユダヤ人迫害から逃れてアメリカに亡命した実在する司法官 アルフレッド・オプラー(Alfred C. Oppler)をモデルとしているそうです。

虎に翼 第10週「女の知恵は鼻の先?」を振り返って / 明治大学法学部教授、大学史資料センター所長/図書館長 村上 一博(2024.06.07 Meiji NOW )

家庭裁判所 / Family court
での 通訳

弊社代表で通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、日本及びアメリカの家庭裁判所でも通訳を行った経験があります。

アメリカの場合、家庭裁判所はファミリーコート / Family court と呼ばれ、州法で裁く裁判所 / State court に属す裁判所になります。

両国共に家庭裁判所では、基本的に夫婦の問題を含む家庭問題や青少年の問題を扱います。

※アメリカの場合、管轄(対応)する内容 及び 裁判所は州によって異なります。

日本の家庭裁判所の場合は、裁判官等が話す日本語を英語及び他言語に、対象者が話す英語及び他言語を日本語に訳し、アメリカでは裁判官等が話す英語を日本語及び他言語に、対象者が話す日本語及び他言語を英語に訳します。

※弊社代表の右田アンドリュー・ミーハンは、英/日・日/英の通訳を行います。

通訳者は、通訳をする対象者が違法行為を犯したり、問題を起こした場合以外、被害者となったり、巻き込まれたり、証人として証言をする場合でも通訳を行います。

通訳対象者がある程度 日本語や英語を話せたとしても、法律上の言葉や慣れていない環境での対応となる為、日本やアメリカの裁判では通訳者がつくことが多く、特に夫婦や家庭内の問題において子供が出席する場合は、心理的負担の大きさを考慮し、裁判官や調停官、調停委員、弁護士、通訳者等、裁判及び調停に関わる人々は、児童心理の専門家も同席のもと、質問の方法や内容、言葉使いについて、事前に綿密な打ち合わせを行うそうです。

右田曰く、家庭裁判所での通訳は、刑事事件や企業トラブル等を含む民事裁判とは、また異なる大変さがあるとのこと。

特に日本人×外国人夫婦の場合、異文化コミュニケーションが上手く行かず、トラブルになるケースも少なくないそうです。

アメリカの
ファミリーコート

日本は最高裁判所 及び 高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の5種類の裁判所がありますが、アメリカは大きく分けて2つ、合衆国法で裁く 連邦裁判所Federal court と、州法で裁く州裁判所 / State court があります。

アメリカの家庭裁判所=ファミリーコート / Family Court は、州裁判所 / State court に属し、基本的に州法に基づき審理・審判します。

日本の家庭裁判所は下級裁判所の1つとして全国に50ヵ所 設けられていますが、アメリカの州裁判所は、各州の最上級裁判所は「最高裁判所」または「控訴裁判所」になりますが、下級裁判所の組織構成は州によって大きく異なります。

多くの州では、下級裁判所の組織として限定的管轄権(下位管轄権)を持つ裁判所が設けられており、家庭裁判所もこの限定的管轄権(下位管轄権)を持つ裁判所 / Limited Jurisdiction Court に含まれることが多く、管轄する(対応する)内容も州によって異なります。

※家庭裁判所は、州によって Limited Jurisdiction Court ではなく一般的管轄権(上位管轄権)を有する裁判所 / General Jurisdiction Court に含まれる場合や、管轄(対応)内容によって Limited Jurisdiction Court / General Jurisdiction Court にまたがる場合もあります。

Lady Justice

最後に、本ブログ記事のトップ画像にも使った正義の女神像についても、少しだけご紹介したいと思います。

正義の女神が剣と天秤を持つ姿は、司法、裁判の公正さを表すシンボルとして、古来より裁判所や法律事務所など、司法関係機関に飾る彫刻や塑像、絵画の題材として扱われています。

正義の女神は、ギリシア神話の女神 テミス(Themis)や ローマ神話の女神 ユースティティア(Jūstitia) とも呼ばれますが、英語では単に Lady Justice と呼ばれる事が多いです。

NoName_13によるPixabayからの画像

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