社会やビジネスの場で求められることの1つに「和を乱さない」と言う考えが、日本にはあります。でも実は、この考えはアメリカにもあるのです。今回のブログではこの「和を乱さない」と言うことについて、異文化コミュニケーションの視点から、英語表現等も交えてご紹介したいと思います。(Klas_luによるPixabayからの画像)
和を乱さない
Don't disrupt the peace
社会やビジネスの場で求められることの1つに「和を乱さない」と言う考えが、日本にはあります。でも実は、この考えはアメリカにもあるのです。
そもそも「和を乱す / 和を乱さない」と言うのは、どういう意味でしょうか?
和を乱す(実用日本語表現辞典)
https://www.weblio.jp/content/%E5%92%8C%E3%82%92%E4%B9%B1%E3%81%99
協調関係や協力関係を保たずに、敵対したり非協力的になったりするさま。和を保つことをしない様子。
つまり「和を乱さない」とは上記意味の反対のことを意味します。
以下類語を見てもわかる通り「和を乱さない」とは「物事を円滑に進めるために、協調すること」と言えるでしょう。
和を乱さないようにの
類語・言い換え・同義語
揉め事を起こさないように物事を行うさま
- 波風を立てず
- 穏便に
- 平穏に
- 揉め事を起こさず 等
Weblio 類語・言い換え辞書より
https://thesaurus.weblio.jp/content/%E5%92%8C%E3%82%92%E4%B9%B1%E3%81%95%E3%81%AA%E3%81%84%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB
「和を乱さない」の英語表現
「和を乱さない」を英語で表現すると Don’t disrupt the peace でしょうか。
また、似た表現としては Don’t make waves / Don't rock the boat があります。直訳は「波を起こすな」「ボートを揺らすな」ですが、転じて「波風を立てない」「揉め事を起こさない」と言う意味になります。
和を乱す人の事は Not a good team player などと言ったりもしますし、和=Teamと考えた場合、日本以外でも「和を乱さない」事を求められるのは、当たり前とわかります。
「和を乱さない」の定義
では「和を乱さない」の日本とアメリカの違いはなんでしょう?
実は先ほどご紹介した「和を乱さない」の日本語の類語には、「無難に」「目立たないように」も含まれています。
この「無難に」「目立たないように」は、日本での「和を乱さない」の定義を良く表していると思います。
つまり日本の場合「和を乱さない」行動や振る舞いとは、協力や協調の他に、その場の規律を守る、常識に従う、さらには「主張し過ぎないこと」も求められると言えるのではないでしょうか。
では、アメリカでの「和を乱さない」行動や振る舞いとはなんでしょう?
それは「フレンドリー」であること。笑顔で接することが揉め事を起こさない為の秘訣と思われています。
日本の様に「無難に」「目立たないように」すること=主張をしない、自分の意見を言わない事は、アメリカでは「信用されてない」「興味を持っていない」「冷たい」「何を考えているかわからない」さらには「交渉が難航してる」=和を乱す行為と見なされます。
この違いを理解することは、異文化コミュニケーションでは重要です。
Squeaky wheel
英語には Squeaky wheel と言う表現があります。
これは squeaky wheel gets the grease の簡略表現 で、直訳すると「キュッキュッなってる車輪は油をさされる」と言う意味ですが、「何か言わなければ状況は変わらない」ことを意味しており、転じて「黙ってると何も変わらない」または「言うだけ無駄と思っちゃダメだよ」と言う表現になります。
アメリカで「和を乱さない」ない為には、「無難に」「目立たないように」するのではなく、「フレンドリー」だけど「主張はハッキリと」と言うのが大事です。
とは言え、日本でもアメリカでも「話すぎ / Talk too much 」はもちろん、「余計な一言」を言うと嫌われるのは同じです。ご注意下さい。
因みに英語で「余計な一言」は、下記の様な表現が使われます。
- That was unnecessary
直訳:不必要なことを言う - stop while you are ahead
直訳:勝ってるうちに手を引く=水を差すようなことは言わない - know when to stop talking
直訳:余計な一言を言う前に話しやめるタイミングを知っておくこと=黙るタイミングをわきまえる - misstep
直訳 足の踏み外し=余計な一言
余計な詮索
余計な一言の表現については先ほどご紹介しましたが、具体的に何が「余計なこと」なのか、考えてみましょう。
アメリカの場合「和を乱さない」為には、フレンドリー / Friendly =友好的であること / 親しみやすいこと、または to be open =閉鎖的 ではないことが求められます。
しかし Friendly または to be open にも、さじ加減があります。相手との距離感と言えば分かりやすいでしょうか。これを間違えると、いささか面倒なことになるので注意が必要です。
例えばビジネスの場で「ビジネスに関係する以外の事」について、アレコレ聞くことは「余計なこと / 余計な詮索」と見なされます。
パートナーの有無、結婚の有無、子供の有無、年齢、出身地等についてアレコレ聞くのはNGです。
特に Where are you originally from? と言った質問は、場合によっては非常に危険な質問です。肌の色や見た目から「本来はどこの出身か?」と聞く事は、人種差別的と見なされる場合もあります。
また、日本でも最近は徐々に定着して来た様ですが、「最近痩せた?/ 太った?」等と人の体形についてアレコレ言ったりするのは Body Shaming と呼ばれ、相手を不快にさせます。
これら「余計な詮索 / Uncomfortable Questions」をされてしまった場合、英語でどの様に切り抜けると「波風を立てず」に済むかについては、以下動画で紹介しています。
また、この動画で紹介されている様なリアクションを、相手からされた場合は「余計な詮索」をしたのだと気がつく事も出来るのではないでしょうか。
※英語表現Tips
Uncomfortable Questions は、20 questions と呼ばれる事もあります。理由は「質問」の連打だから。そして「連打」されると、どんどん居心地悪くなるからです。
年末年始の挨拶で
気をつけたいこと
最後に毎年恒例ではありますが、英語での「年末年始の挨拶」で気をつけなければいけない事について、今年もご紹介したいと思います。
年末年始の英語での挨拶と言えば、最近は Happy Holidaysや Season’s Greetings が一般的です。
相手が Merry Christmas と言ってきた場合は、同じように返しても大丈夫。
アフリカ系の年末行事を祝う言葉 Happy Kwanzaa や、ユダヤ教の年末行事を祝う言葉 Happy Hanukkah などもありますが、こちらも相手が言ってきた場合にのみ使うのが無難です。
カード等の書面や、メール等で行うビジネス・シーンでの年末の挨拶では With the Season’s Warmest Wishes, With warm regards, OR Warm regards 等を使うのが安全です。
または Wishing you a Peaceful New Year と言うのもアリです。
年の瀬や新年早々「和を乱す / 波風を立てる」ことにならない様に...