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ハルシネイト・ハルシネーション / Hallucinate・Hallucinationとは ~通訳者の視点から~

Cambridge Dictionary が11月中旬に、今年2023年 同辞書に追加された言葉や意味の中から選ぶ Word of the Year を発表。選ばれたのは Hallucinate でした。そこで今回のブログでは、この ハルシネイト・ハルシネーション / Hallucinate・Hallucination について、背景情報等も含めてご紹介します。Gerd AltmannによるPixabayからの画像)

Cambridge Dictionary
Word of the Year

1995年から英語学習者のための辞典を出版している Cambridge University Press が、運営している無料オンライン辞書 Cambridge Dictionary

このブログでも引用等で度々お世話になっている辞書です。

Word of the Year は、毎年 Cambridge Dictionaryに追加された言葉や意味の中から選ばれる、日本語的に言えば「今年の言葉」となります。

因みに 2022年は homer 、2021年は perseverance でした。

Hallucinate とは

そのCambridge Dictionaryが、11月中旬に発表した2023年の Word of the Year は「Hallucinate 」でした。

ポップ・スター デュア・リパ / Dua Lipa が、2020年にリリースしたアルバム「フューチャー・ノスタルジア / FUTURE NOSTALGIA」には、「ハルシネイト / Hallucinate 」と言う楽曲が収録されています。

このミュージックビデオの訳詞にある様に、本来であれば Hallucinate は「幻覚」と言った意味の言葉になります。

from Cambridge dictionary
hallucinate verb
to seem to see, hear, feel, or smell something that does not exist, usually because of a health condition or because you have taken a drug:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/hallucinate

でも、今回 Word of the Year に選ばれた理由は、今までとは異なる使われ方をされ始めたからの様です。

元々は Machine Learning / ML 分野、つまりコンピューターサイエンス / AI (Artificial Intelligence) に関わる人々が、今回 Word of the Year に選ばれる様な使い方をし始めたとのこと。

では、今回「Hallucinate 」がCambridge Dictionary の Word of the Year 選ばれた理由や、意味、使い方などを見ていきましょう。

AIにおける Hallucinate
ハルシネイト・ハルシネーション とは

The Cambridge Dictionary Word of the Year 2023
https://dictionary.cambridge.org/editorial/woty

Hallucinate は、先ほども書いたように Machine Learning / ML 分野、つまりコンピューターサイエンス / AI に関わる人々が使い始めた「俗語表現」で、一般用語では Confabulate と表現されます。

コンピューターサイエンス / AI 領域での Hallucinate の意味は、簡単に言えば「 AI が出した 間違った回答・結果」です。

それがナゼ Hallucinate になるのでしょうか?

AI(機械側)は、わざと間違った回答を出す訳ではありません。学習した情報や、取り込んだ情報に基づいて処理をし、たどり着いた結果を出しているにすぎません。

その「結果」が間違った内容になる理由は、元になった情報が偏っていたり、結果を出す工程や、結果表示の仕組み等に問題があると考えられています。

つまりAIは学習を基にした結果を出しているにすぎず、意図的に間違った情報を出している訳ではないのです。

しかし、その「間違った結果」を人間側=利用者側から見た場合、AIがまるで「幻覚」を見ている様に見える、または AI自体が「妄想」や「もっともらしい嘘」をついているかの如く見えるのを、大げさに Hallucinate と言う言葉を使って、コンピューターサイエンス / AI に関わる人々が一種の「ジョーク」として表現しているのです。

因みに Hallucinate は、微細な間違いと言うよりは、冗談の様な突拍子もない(ありえない)結果や、とんでもない回答、つまり「このAI、幻覚でも見てるんじゃないか?」と思う様な結果が出た場合に使われるとのこと。

しかしAIは、いかにも「正しい回答」の様に結果を表示するので、AIに質問/お願いした内容に詳しくない場合、表示された回答が「正しい結果」か、それとも「間違った結果」なのか、判断しずらいと言った事態も発生します。

from Cambridge Dictionary
hallucinate verb
When an artificial intelligence (= a computer system that has some of the qualities that the human brain has, such as the ability to produce language in a way that seems human) hallucinates, it produces false information:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/hallucinate

from Cambridge Dictionary
confabulate verb
to invent experiences or events that did not really happen:

When an artificial intelligence (= a computer system that has some of the qualities that the human brain has, such as the ability to produce language in a way that seems human) confabulates, it produces false information:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/confabulate

日本では Hallucinate は、Hallucination (noun) / ハルシネ―ション と呼ばれ、その現象については、先ほど上げたように「もっともらしい嘘」や「AIによる妄想」などと訳されている事が多い様です。

ハルシネーション(野村総合研究所)
ハルシネーションとは、人工知能(AI)が事実に基づかない情報を生成する現象のことです。まるでAIが幻覚(=ハルシネーション)を見ているかのように、もっともらしい嘘(事実とは異なる内容)を出力するため、このように呼ばれています。

https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/ha/hallucination

類語

Word of the Year 2023 の Hallucinate に近い表現としては Disinformation があります。俗語は Fake news

Misinformation は単純に間違えた情報を意味しますが、Disinformation は意図的に間違えた情報を意味し、Propaganda とも呼ばれる事もあります。

Cambridge dictionary の Word of the Year 2023 のページには、Hallucinate / Hallucination 以外にもAIに関連した表現が紹介されています。併せてチェックする事をお勧めします。

The Cambridge Dictionary Word of the Year 2023
https://dictionary.cambridge.org/editorial/woty

AI について

現在、様々なケースで「AI」と言う言葉を目にします。一種の流行言葉、人の目を引くためのマーケティング言葉になっている気もします。

AIは Artificial Intelligence=人口知能の略語ですが、現在AIと呼ばれているモノの多くは正確に言うとMachine Learning=機械学習の範疇である場合も多い様です。

機械学習・AI(人工知能)・ディープラーニングの違いを解説!(株式会社電算システム)

通訳・翻訳業界で言うとMT (machine translation) は機械翻訳のことを意味します。

この機械翻訳は、現状は Hallucinate =誤った結果 含め、文脈や目的、用途を理解した訳や、適切な訳が完璧に出せるわけではない、つまり「信頼性」が高くはない為、結局 通訳者や翻訳者によるチェックや、ポスト・エディットが欠かせません。

特に「シンプルかつ、分かりやすい表現でやり取りされる」様な場でない場合、つまり外交を含む 交渉の場や、司法 / 医療 等の専門用語が多く、訳の高い正確性が求められる業界、文芸や映画など、背景情報や作者の意図、各国の常識等を加味して訳す事が必要とされるコンテンツは、まだまだ人による翻訳/通訳が必要とされています。

いずれ近い将来 Hallucinate 問題も解消され、AI / 人工知能がより多くの作業を担う時代も来るかも知れません。

その時、どの様な事が起きるのか、どんな社会になるのか、半分楽しみでもあり、半分心配でもありますね...

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https://meehanjapan.com/tag/interpreters-view/

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