ミーハングループは、通訳では主に英語と日本語に対応。翻訳は希少言語含む様々な言語に対応していますが、多くの依頼は英日/日英 の翻訳になります。今回は英日/日英の通訳や翻訳で求められることについて紹介する記事の2回目「日本語をどの様に学習するか」についてご紹介したいと思います。(WOKANDAPIXによるPixabayからの画像)
英日 / 日英
通訳者 / 翻訳者に
もとめられること
前回のブログにも書きましたが、通訳者や翻訳者が第一に求められるのは「言語スキル」です。
日本語が母語の人は、第2言語のスキル 日/英の場合は「英語」のスキルが注目されがちではありますが、実は「母語=幼児期に習得した言葉」のスキルも、通訳者 / 翻訳者にとっては大事である事をご紹介しました。
※母語とは、幼児期に習得した言語=生まれ育った環境の中で覚えた言葉を指します。似た様な言葉に「母国語」がありますが、これは自分が生まれた国や、所属している国の言語(公用語)を意味します。
参考:「母語」「母国語」「第一言語」「公用語」の意味と違い(社会人の教科書)
ミーハングループ代表で現役 英日 / 日英 通訳者 / 翻訳者でもある右田アンドリュー・ミーハンは、1968年に長崎県佐世保市 生まれ、学校はいわゆるインターナショナル・スクールですが、高校まで日本にて就学。
その後 アメリカの大学を卒業し、住友銀行ニューヨーク支店に入社。1994年より翻訳者・通訳者としての活動を始めました。
つまり、右田アンドリュー・ミーハンにとっては、英語も日本語も「生まれ育った環境の中で覚えた言葉=母語」になります。
しかし、右田曰く「日本語も英語も日常で使う表現や、書籍/文章などの表現は理解はしていたが、社会に出てから新たに学んだ言葉も沢山ある」との事。
そこで今回は、右田アンドリュー・ミーハンの経験をもとに言語スキルの向上方法、特に「日本語の学習方法」についてご紹介したいと思います。
謙譲語 / 尊敬語 / 丁寧語
学生時代に多少は身に付けていたとしても、就職や、社会人として仕事を始めた時にぶつかる悩み事のヒトツに『謙譲語 / 尊敬語 / 丁寧語 の使い方がわからない』があると思います。
ミーハングループ 代表 通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、日本にあるインターナショナル・スクールで学生時代を過ごしたため、日本語は、日常会話は問題ありませんでしたが、いわゆる大人の話し方=謙譲語 / 尊敬語 / 丁寧語には不慣れだったとの事。
生まれてから高校を卒業するまでは日本に住んでいました。
父親がアイルランド人 母親が日本人だった為、家庭内では日本語と英語を話し、近所の人とは日本語で会話。学校はインターナショナルスクールだったので、校内では英語が主な言語でした。
古文・漢文は「IBコース=国際バカロレア・コース」で勉強しましたが、授業外で使う日本語はいわゆる「日常生活レベル」のみ。
もちろん自宅で本を読んだり、テレビやラジオを通じて様々な日本語表現にも触れ 理解はしていましたが、高校生までの日本語のレベルなんてたかが知れています。高校卒業後はアメリカの大学に進学した為、大学時代は全くと言っていいほど日本語を使わない生活になり、たまに家族等と日本語で話すと言葉が出てこなかったり、幼児が使う様な言葉しか思い出せない場合もありました。
大学卒業後 社会人として初めて働いたのは、今は無き世界貿易センターにあった住友銀行のニューヨーク支店。面接時は気合を入れて話したので場に適した日本語を話せましたが、仕事を始めてから職場ではボロが出まくって、社会人としての日本語の話し方をイチから叩き込まれました。
ニューヨーク支店とはいえ、社内は日本企業ですからね。
右田アンドリュー・ミーハン
特に私の場合 出身が長崎なので、子供の頃から慣れ親しんでいた日本語は「長崎弁(佐世保弁)」+ 母親が大阪出身でコテコテの大阪弁を話していたので、それも混じっていました。
ですので、謙譲語 / 尊敬語 / 丁寧語の他に、イントネーションやアクセント等も徹底的に直され 大変苦労しました。
この様な経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?
社会人として「謙譲語 / 尊敬語 / 丁寧語」を交えた適切な話し方はもちろん、ビジネス・マナーなど、勤める企業や業界により多少の違いはあれど、学生時代とは異なる振る舞い、つまりプライベートとは異なる「仕事」での話し方や態度を求められ、四苦八苦した事は皆さんご経験があると思います。
社会人として求められる日本語、そしてビジネスマナー等を身に付けた右田は、その後 住友銀行を退社。1994年より翻訳者・通訳者としての活動をニューヨークで始めます。
住友銀行を辞めたあと 日本企業の案件を扱う法律事務所で、英日 / 日英の社内翻訳の仕事を始めた私は、日本語の企業資料、それも簡単なものから 特許や取締役会などの難しいモノまで、毎日毎日 読む様になりました。
この頃 アメリカで訴訟となると、何百箱もの資料の提出が求められました。それらの資料は全て日本語なので、全部英訳をしなければなりません。
古い物だと20~30年前の資料 つまり 1970年代の手書きの文書もありましたし、旧い表現や書式、何度もFAXされ判読しづらい資料なども提出する為に読み込み、必死に英訳をしました。
この 来る日も来る日も日本語の企業資料を読むことが、私の日本語上達の大きな助けとなりました。企業内で使われる様々な日本語表現をカラダで覚えた感じです。その時は、まだ電子辞書やインターネットも余り普及していなかった為、ニューヨークにある紀伊國屋書店で日本語の辞書をかなり購入したのを覚えています。
右田アンドリュー・ミーハン
当時 法律事務所では長時間労働が普通で、週に70~80時間 翻訳してるのはザラでした。
いわば その法律事務所での仕事が、英日 / 日英 翻訳者として駆け出しだった私の「翻訳道場」と化したわけです。この時の経験が今の私に繋がっていると思います。
つまり、仕事 / 企業で使われる日本語の表現を身に付ける為には、先ずは大量に「その表現」に触れ、読み、意味を深く理解する事が大事なのではないでしょうか。
言葉の意味を深く知らなければ他の言語に適切に訳す事は出来ません。
第2言語の習得する場合、日/英の場合は「英語」を習得する場合も同じことを言われると思いますが、話せる=適切に訳せるではありません。
適切に訳す為には、母語も第2言語も「言葉の意味を深く知る」事が重要になります。
英日 / 日英
通訳者 / 翻訳者の
日本語学習方法
「言葉の意味を深く知る」ために通訳者や翻訳者は日々、どの様に「言葉」を学習しているのでしょう?
自分が抱える案件や担当する業種に関連した言葉や表現については、資料等を基に調べることによって身に付ける場合もあります。
それらの言葉や表現を、通訳者や翻訳者は「単語帳」にまとめたり、言葉や表現のデータベースを作ったりしています。
自分専用の仕事用辞書の様なものですね。
では 仕事に関連しない、様々な言葉の表現についてはどの様に勉強しているのでしょうか?
これは言語に関わらずなのですが、例えば英語だったら、英語のドラマやニュース、日本語だったら日本語のドラマやニュースなどを観て勉強するのも1つの方法です。
右田アンドリュー・ミーハン
特にドラマの場合、ストーリーがあったり、役柄の言葉=セリフを役者さんが話す為、背景情報の理解にも適しています。
因みに私は、この頃は、NETFLIXで日本語ドラマを見てはメモを取りまくっています。
メディアを通じて、様々な表現を習得する方法ですね。これだと楽しみながら学ぶこともできます。
また 以前 当ブログで、「英語」の学習方法でご紹介した「パラフレーズ」も、様々な日本語表現を勉強するのにも適していると言われています。
これ以外にも、例えば新聞の校閲部などが展開しているブログやサイト等をチェックするのも良いと思います。
- 毎日新聞校閲センター
「毎日ことばplus」
https://salon.mainichi-kotoba.jp/ - 東京新聞校閲部Twitter
https://twitter.com/tokyo_kouetsubu - 朝日新聞校閲部Twitter
https://twitter.com/asahi_kotoba
毎日新聞社の文化活動を担う毎日文化センターでは、Zoomウェビナーによる翻訳校閲・校正講座なども実施されています。
第4回翻訳校閲オンライン講座「メカニズムを知って誤りを潰そう!」
講師は翻訳校閲者・校閲者の久松紀子さん
開催日:2023/6/25(日) 10:30~12:00
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02cruqib33131.html
一般的に言われている事ですが、語彙や様々な表現を増やす為には、本や新聞などを読むこと等も有効だと言われています。
デジタル時代になり、様々な言語の文章を原文で読む事が手軽にできる様になりました。また、英語などの第2言語学習アプリ等も増えていますが、時には「母語=日本語」の学習に目を向けてみるのも大事かと思います。
通訳 / 翻訳は
AI に取って代わられる?
昨今は、AI学習による機械 / 自動翻訳技術の進化が目覚ましく、近い将来AIに取って代わられる職業として「翻訳」や「通訳」が上げられる事も少なくありません。
確かに The aloof interpreter is dead と言う言葉が、最近 通訳業界でもよく言われます。
from Cambridge Dictionary
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/aloof
aloof adjective
not friendly or willing to take part in things
not interested or involved, usually because you do not approve of what is happening:
aloof とは、日本語では「よそよそしい」や「冷淡」などと訳される事が多い表現ですが、 The aloof interpreter is dead の場合は「親切ではない(よそよそしい)通訳=言葉だけをAからB言語に置き換えるだけの、背景情報を考慮しない通訳」を意味します。
つまり「ただ言葉を置き換えるだけの通訳者は(この機械翻訳やAIが目まぐるしい進化をしている時代の中で)生き残ることは出来ない」と言う意味になります。
本ブログでも何度かお伝えしていますが、言葉の背後には様々な背景情報や、文化に基づいた表現、考え方があります。
この画像にもあるように「言語」はあくまで氷山の一角で、その下にある見えない部分の方が大きく、その大きな部分が表出している部分を支えています。
つまり通訳/翻訳に置き換えると、発せられた言葉、書かれた言葉の裏側にある「価値観、思考、見方、文化、常識 等々」を考慮して訳すこと、人間だからこそできる +アルファの通訳/翻訳が、これまで以上に求められるのではないでしょうか。
それを行うためには「母語」も「第2言語」も、言語だけを習得するだけではなく、その背後にあるものに目を向けて学ぶことが大事になります。
AIIC
国際会議通訳者連盟
英日 / 日英 通訳者
弊社代表 通訳者の右田アンドリュー・ミーハンもメンバーのAIIC(アイイク)は、日本語では 国際会議通訳者連盟 と訳される団体です。
世界100ヶ国以上、約3,000名の会員が登録するこの会議通訳者組織には、英日 / 日英 通訳者は全部で20名、日本在住者は7名が登録しています。
彼らは英語はもちろん、日本語のさまざまな表現にも精通、また日々努力もしています。
AIIC website
https://aiic.org/