事件捜査や司法の場で活躍する通訳者について、本ブログでも何度かご紹介致しておりますが、今回は海外での犯罪や司法の場における通訳の状況について、少しご紹介したいと思います。
海外での事例
日本での警察や司法における通訳の状況については、以前と前回、このブログでもご紹介致しました。
ブログ記事「警察通訳人について」で、少し触れていますが、今回は海外における警察や司法関連の通訳事例についてご紹介したいと思います。
司法通訳・翻訳者の
認定制度
アメリカ、カナダ、ドイツ、オランダ等では、司法通訳・翻訳者の認定制度が実施されています。
ミーハングループ代表 通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、東京地方裁判所にて通訳者登録をしていますが、以下海外の裁判所でも、裁判所認定法廷通訳者として登録をしています。
- 米国:NY, NJ, DC, TX, FL 地裁等, 検事局 NY, NJ, DC等, 国際貿易裁判所等
- 英国:ロンドン国際仲裁裁判所
- スイス:スポーツ仲裁裁判所 (Tribunal Arbitral du Sport)
- オーストリア:ウィーン国際仲裁センター
- マレーシア:クアラルンプール高等裁判所
また、アメリカでは司法省連邦刑務所局公認通訳士、司法省連邦捜査局嘱託言語学者(contract linguist monitor)としても登録しています。
アメリカ司法省連邦捜査局とは Federal Bureau of Investigation の事、つまりFBIにおける捜査の通訳者と言う事です。FBIで、通訳者として登録するには、語学スキル等は基より、非常に厳密な身元調査が行われます。
右田アンドリュー・ミーハンは出身が長崎県佐世保市であった為、2年近く身元調査に時間がかかったとの事。それだけ厳重な調査を経て、登録となります。
通訳者が対応する
司法の場
日本であれば日本語、アメリカであれば英語、つまりその国の母語を理解しない人が関わる司法の場においては、通訳者が全て介在します。それは被害者、被疑者に留まらず、証人なども含まれます。
アメリカの例になりますが、通訳者が介在する裁判所には以下が上げられます。
- Civil Court
民事裁判所:ここでは生活におけるトラブル=例えば、家主とのトラブル、契約違反、交通事故、医療ミスなどを各州の州法によって裁きます(アメリカは州ごとに若干法律が異なります) - Federal Court
連邦裁判所:ここでは刑事法に触れる事件を、アメリカ全土共通の法律で裁きます。 - Family Court
家庭裁判所:ここでは、日本と同様に離婚、親権問題、養子縁組などを扱います。
様々な国籍やルーツを持つ人々が暮らすアメリカでは、裁判において扱う言語も様々です。The United States CourtsのYouTubeチャンネルでは、司法通訳が介在する事例やセミナー、また電話による通訳の仕組み等を動画にて紹介しています。
裁判所以外の場での通訳
通訳者は、裁判所だけで通訳をする訳ではありません。例えば刑務所・拘置所・勾留場で通訳をする場合もあります。
弊社代表通訳の右田・アンドリュー・ミーハンは、司法省連邦刑務所局公認通訳士としても登録をしていますので、アメリカの刑務所での通訳の経験もあります。
もちろん登録している通訳者とは言え、好き勝手に刑務所は入れる訳ではなく、行く場合は弁護士や検察官が刑務所に行く理由を承認する、または同行するなど、スポンサードをしてくれないと入れません。
そして刑務所は場所にも寄りますが、治安が悪い場所にある場合もあるので、行く途中含め気をつけないと危険な目にあう場合もあります。実際に右田は刑務所に向かう途中、とんでもなく硬いリンゴを道にたむろっていた若者から投げつけられたことがあるそうです。
また、証人の聞き込み等も含め、捜査に通訳者が帯同する場合もあります。
日本語が
必要となる司法の場
アメリカで、日本語の通訳が必要となる司法の場は、もちろん日本人が犯罪に巻き込まれたり、被害者、被疑者、または証人になったケースが上げられます。
さらに、家庭裁判所では離婚や親権、養子縁組の際にも、日本人が対象者であれば通訳者が必要になります。
民事裁判所では、例えば各国における常識や生活ルールの違い、契約等における行き違い等における訴訟が上げられます。
これ以外で日本語が必要となる事例としては、企業案件などによる著作権、特許権侵害等が上げられます。
アメリカのような訴訟社会では、日本にはないデポジションという訴訟手続がありますが、この時にも日本人、または日本語を母語とする人、日本企業等が関係するのであれば、日本語通訳は必要となります。
2020年9月に日本人ジャズピアニスト 海野雅威さんが、在住されていたニューヨークで、ヘイトクライムにより大ケガをされた事は、皆さんもご記憶にもあるかと思います。
もちろん海野さんは、英語は堪能でいらっしゃいますが、ご家族や関係者には堪能でない方もいらっしゃる場合もありますし、ご本人も怪我をした上に、慣れない捜査の対応を母語以外でしなくてはなりません。そう言う場合、要請があれば通訳者は当然対応します。
因みに海野さんは、その後リハビリを続け2022年3月にはアルバム『Get My Mojo Back』をリリースされました。
暴行中聞こえた「アジアン・ガイ」…NYで集団暴行受け大ケガ 日本人ピアニストが語る“ヘイトクライム”(Yahooニュース/東海テレビ 2022年8月24日)
海野さんの怪我からの回復及びピアニストとしての復活には、並々ならぬご苦労があった事と思います。心から海野さんの今後のご活躍を祈りたいと思います。
募集・企業での通訳
言語サポートスタッフ
通訳/翻訳会社ミーハングループでは、業務依頼増加により通訳者の募集を現在 積極的におこなっております。
主に企業での通訳及び展示会での言語サポート等になります。各案件については以下リンクにてご確認下さいませ。経験を積みたい方でも対応可能な案件もございますので、ぜひご連絡頂ければ幸いです。