元スマップの中居正広氏と女性との性的トラブルへの対応が、問題視されているフジテレビ。この件は、海外のメディアでも報道されています。今回は、海外のメディアが報じたフジテレビ問題の記事等から、幾つか英語表現をご紹介したいと思います。(Ralf RuppertによるPixabayからの画像)
性的同意・不同意・
性的トラブルに使われる
英語表現
中居正広氏と女性との性的トラブルへの対応が、問題視されているフジテレビ。この件を報じる海外メディアの見出し等で多く使われているのが sex scandal や sexual assault です。
以前、このブログでも 痴漢 / セクハラ 不同意わいせつ行為に関する英語表現 と言う記事で触れましたが、改めて、性的同意・不同意や性的トラブルに関連する英語表現を、ご紹介したいと思います。
先ず、相手に性的同意を得る事は、他者の行動や提案への「承諾」なども意味する consent を使って、Sexual consent と表現されます。
双方(またはその場にいた全員)の同意は consensual つまり合意の上の性交渉は consensual sex、双方の同意が得られていない場合、つまり不同意での性交渉については、一般的には non-consensual sex と表現されます。
性的トラブルについては、幾つかの表現に分れます。
- sexual harassment
主に会社等の組織における性的な嫌がらせ - sexual assault
相手の同意なく、性的なことを目的に行われた犯罪行為 - sexual abuse
性的虐待 - sexual violence
性暴力 - sex crime
性犯罪
今回の報道では、相手の同意が得られていないとの理解から sexual assault が海外メディアの報道では多く使われていますが、明確ではない為、記事内他にて sex allegation = 性行為/わいせつ行為 疑惑 や sexual misconduct = 性的不祥事 を使って報じている場合もある様です。
スキャンダル
ゴシップ
カタカナ表現でも良く目にするスキャンダル / scandal は、日本語では「名声を汚すような不祥事・不正事件。また、情事などのうわさ」と言った意味ですが、英語の scandal には「世間の人々が衝撃を受け、道徳的反感を抱く行いや出来事」の他に「衝撃や不評を買うような行動や出来事についてのレポート」と言う意味もあるので、今回の件の見出しでも使われているのだと思います。
from Cambridge dictionary
scandal noun
(an action or event that causes) a public feeling of shock and strong moral disapproval
reports about actions or events that cause shock and disapproval:
a situation that is extremely bad:
因みにスキャンダルに似た言葉で、英語が語源のカタカナ表現には「ゴシップ / gossip 」があります。
コチラの日本語の意味は「個人的な事情についての、興味本位のうわさ話」ですが、英語も同様です。
from Cambridge dictionary
gossip noun
conversation or reports about other people's private lives that might be unkind, disapproving, or not true:
海外報道における
フジテレビ問題
ここで、幾つか中居氏と女性との性的トラブル及びフジテレビ問題を報じた海外メディアの記事をご紹介したいと思います。
- Masahiro Nakai, a TV host and former pop star in Japan, retires after sexual assault report(January 23, 2025, AP)
- Masahiro Nakai, a TV host and former pop star in Japan, retires after sexual assault report(January 23, 2025, The Washington Post)
- Japan's Fuji TV executives resign over sex scandal linked to former boy band star (January 27, 2025, CBC NEWS)
- Fallout from alleged sexual assault by former J-pop star marks cultural shift in Japan(Fri 24 Jan 2025, The Guardian)
- Top executives resign over Japanese TV host's sex scandal(27 January 2025, BBC)
- Fuji Media, rocked by sexual misconduct allegations, says executives to resign(January 29, 2025, Reuters)
resign は、最近日本のビジネスの場でも時折使われるアサイン / assign とは逆の言葉、つまり この場合は「辞任」を意味します。
The Guardian の記事の見出しにある Fallout には様々な意味がありますが、この場合は「不同意性交疑惑の影響」と訳せます。
また Reuters の記事の見出しに使われている rocked にも様々な意味がありますが、この場合は rock verb (SHOCK) / If an event rocks a group of people or society, it causes feelings of shock つまり「性的不祥事に揺れた・揺れる Fuji Media」と訳す事が出来ます。
Activist Investors
Outrage
海外メディアの記事は、報じた日にちによっても異なりますが、フジテレビの株主でもある海外投資家のコメントを載せている記事もあります。
from Reuters
Fuji Media, rocked by sexual misconduct allegations, says executives to resign
Activist investors who have criticised Fuji Media's handling of the crisis include U.S.-based Dalton Investments, its second-biggest stakeholder at 5.8% based on LSEG data, as well as Zennor Asset Management, a UK-based fund which holds just over 1%.
Zennor said in a statement that the actions of the board showed "the company is finally taking this matter as seriously as they should."
from BBC
Top executives resign over Japanese TV host's sex scandalIn an open letter, investment firm Rising Sun Management which is the majority shareholder of Fuji TV's parent company, said that the scandal "exposes serious flaws in your corporate governance".
※BBC記事は、BBC NEWS JAPANにて日本語訳が読めます。フジテレビの会長と社長が引責辞任、中居氏の性的スキャンダルへの対応めぐり(BBC NEWS JAPAN)
記事にある Activist Investors は、日本語では「モノ言う株主」等と訳される事が多い表現で、株主としての権利を積極的に行使して、企業に影響力を及ぼそうとする投資家の事を指します。
アクティビスト/モノ言う株主(アクティビスト/モノいうかぶぬし)SMBC日興証券
フジテレビの株主で海外投資会社のダルトン・インベストメンツ/ Dalton Investments の関連会社 ライジング・サン・マネジメント / Rising Sun Management は、2025年1月14日に「第三者委員会の設置および信頼回復に向けた対応をお願いする書簡」をフジ・メディア・ホールディングスの取締役会に送付。
その書簡の中で Outrage と言う表現を使っています。
from The Japan Times
“The lack of consistency and, importantly, transparency in both reporting the facts and the subsequent unforgivable shortcomings in your response merit serious condemnation that serves not only to undermine viewer trust, but also leads directly to erode shareholder value,” read the statement, published by Dalton, which is known as an activist investor. “As one of your largest shareholders, controlling over 7% of the Company’s stock, we are outraged!”https://www.japantimes.co.jp/news/2025/01/15/japan/media/fuji-tv-investor-masahiro-nakai/
Outrage は「激怒、激しい憤り」等と訳される言葉で、日本のメディアも「強いメッセージ」等と報じていました。
フジ 「アウトレイジ」米ファンド要求「第三者委」ではなく「調査委」 メンバーは「基本的には我々が…」(2025/1/17 スポニチAnnex)
しかし Outrage は、実は英語での企業間のやり取りの中で「遺憾」を表す場合、割と目にする表現でもあります。
ダルトン・インベストメンツの日本語サイトには、この書簡を含め、フジ・メディア・ホールディングスに同社が宛てた書簡の日本語訳が掲載されています。
ダルトン・インベストメンツ日本語サイト
https://www.daltoninvestments.co.jp/
また、日本の英語メディア Japan Today は動画にて、このフジテレビ問題を、日本社会の視点 及び 海外からの視点を交えて、英語で解説しています。
コンプライアンス・
ガバナンス・GRC
日本では「法令遵守」等と訳される事の多いコンプライアンス / Compliance 。フジテレビの10時間に及ぶ記者会見でも、何度もコンプライアンス、または略語のコンプラが登場しました。
しかし現在「コンプライアンス」は、法令だけではなく、社会的常識やルールを守る事も意味していると思います。
from Cambridge dictionary
compliance noun / Business English
the fact of obeying a particular law or rule, or of acting according to an agreement:https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/compliance
また同記者会見で「コンプライアンス」と同じく、何度も登場した言葉に「ガバナンス / Governance 」があります。
from Cambridge dictionary
governance noun
the way that organizations or countries are managed at the highest level, and the systems for doing this:https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/governance
英語での Governance の意味は「組織や国が最高レベルで管理される方法、およびそのためのシステム」ですが、今回のフジテレビの記者会見で使われた「ガバナンス」は、いわゆる「コーポレートガバナンス / Corporate Governance」を指していると思います。
では「コーポレートガバナンス」とは何か?「企業統治」等と訳される事も多い言葉ですが、金融庁が2021年に発表した「コーポレートガバナンス・コード改訂案」では、以下の様に定義されています。
※コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業が行う企業統治(コーポレートガバナンス)においてガイドラインとして参照すべき原則・指針を示したものです。
本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。
「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~(改訂案)」(2021年04月 金融庁)
因みに、この Governance そして Risk management, Compliance は、それぞれの頭文字をとって GRC と呼ばれる場合もあり、ビジネス環境が急速に変化し、法規制が厳格化する現代において、企業経営における重要な要素および枠組みと海外では認識されています。
【GRC】 ~1分で分かるキーワード #229(2024-10-03 ソフトバンクニュース)
日本でも企業幹部・役員等を対象にした「ガバナンス研修」は実施されています。
コーポレートガバナンス・コード(CGC)の提唱者であり、金融庁主催コーポレートガバナンス連絡会議にも所属するニコラス・ベネシュ/Nicholas Benesh 氏が代表を務める公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)でも「ガバナンス塾」を始め様々な研修を行っており、英語で受ける役員研修等も実施。弊社代表で通訳者の右田アンドリュー・ミーハンも受講済です。
公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)
Website https://bdti.or.jp/