「クッション言葉」はご存知でしょうか?言いにくい事や依頼などをする時、相手への印象を和らげる言葉を指します。今回はそんな「クッション言葉」を中心に、英語で好印象を持たれるコミュニケーションの秘訣、表現をご紹介します。(Abelardo Ochoa AnayaによるPixabayからの画像)
クッション言葉 とは
冒頭でもご紹介しましたが「クッション言葉」とは、ビジネスシーンにおいて、会話の前置き等に良く使われる言葉で、「ビジネス枕詞」と呼ばれたりもします。
特に、相手に依頼をしたり、逆に依頼を断ったり、言いにくい内容を伝える際に前置きとして添えると、「クッション」の様に、相手への印象を和らげる言葉を指します。
元フジテレビアナウンサー
三上彩子さん
YouTubeチャンネルより
クッション言葉とは? 場面別の一覧や役立つシーン、例文、注意点を紹介 (2023/03/22 マイナビニュース)
英語における
クッション言葉的表現
日本語における「クッション言葉」的表現は、英語にはあるのでしょうか?
パっと思いつくものと言えば、丁寧な表現の代表例 Please でしょう。言葉の頭や最後に Please を付ける事で、確かに印象が柔らかくなります。
しかし Please を使ったからと言って、相手が Yes と言うとは限らないのが難しいところです。
Beyond Politeness: Is “Please” a Politeness Marker or a Strategic Tool? (May 18, 2024, Neuroscience News.com)
Please 以外だと、何かを尋ねる時などには Excuse me / Sorry / Sorry to bother you / Sorry for interrupting you. 等の表現を使って「すみません / お邪魔してすみません」と伝える事があります。
Sorry は「謝罪の言葉」と日本では教えられる事が多いですが、「すみませんが...」的なニュアンスで、伝えたい言葉の前に添えて使うこともあります。
また Do you have a moment? / Please give me a moment. / May I have a moment of your time? などの、「少しお時間を頂けますか?」と言う意味の、相手を気遣う言葉を本来 伝えたい事(言葉)の前に添える場合もあります。
因みに Do you have time? と良く混同される Do you have the time? は「何時かわかりますか?」の丁寧な言い方です。これより婉曲(丁寧)な言い方としては Sorry, could you tell me the time please? もあります。
これらの表現は、学校で習う What time is it now? よりも、ビジネスシーンや目上の人に聞く際には適しています。
また、その他のクッション言葉的な英語表現としては I would / if possible / I was wondering 等を使って、ソフトな言い方にする場合もあります。例えば以下の様な使い方です。
- I would be delighted if you were able to attend the event if at all possible.
可能ならば、イベントに参加頂けると嬉しいです - I would be so happy if we had the opportunity to meet again.
またお会いできる機会があればうれしいです。 - I was wondering if you could give me a little bit of help.
もしよかったら、ちょっと手伝ってもらえませんか。
こう言った I would / if possible / I was wondering または Could you と言った丁寧な表現・婉曲表現は、クッション言葉として英語では良く使われます。
※もちろん言い方や文脈により、丁寧な表現も丁寧ではなくなる場合もありますから、その点は注意が必要です。
オーバーツーリズム=
マスツーリズムの弊害
このところ日本でも、観光地に旅行客が押し寄せ、そこに住む人々の生活もままならない状況になる「オーバーツーリズム / Overtourism (観光がもたらす弊害・公害)」が、頻繁に報じられる様になりました。
最近話題になった富士山の見えるコンビニエンス・ストアの問題についてはBBCも紹介しています。
もちろん各自治体や関係機関は、ポスターやパンフレットを作成したり、呼びかけをしたりして注意喚起をしている様ですが、全ての観光客にマナーやルールを知らしめるのは難しいですし、さらに、それらを完璧に守らせるのは不可能と言えるでしょう。
この様な Overtourism (観光がもたらす弊害・公害)は、海外を含む観光が、気軽に出来る様になった=観光の大衆化 / mass tourism ・マスツーリズム により引き起こされた問題です。
マスツーリズムとは?大衆観光の変遷から次世代の観光を解説(2021年11月30日 訪日ラボ)
残念ながらこの様な状況は、何も日本に限った事ではなく、世界各国の観光地で同じような問題が起きており、その対策に各国が頭を抱えています。
海外からの観光客に
何かを伝える際に
気をつけたい事
海外からの観光客の中には、事前に訪れる国の文化・日本の文化やマナー、ルールについて学び、理解した上で旅行に来る人も居ますが、全ての人がそうだとは限りません。
特に最近は、本来 観光地ではなかった場所に観光客が集まり、地域住人の方々の迷惑になったり、問題が起きるケースも多発しています。
その様な場所には、海外観光客向けの注意喚起ポスターやパンフレットが無かったり、あったとしても文化や常識の違いから、その様なマナーやルールの必要性や、守らなければいけない理由を理解できない人も居ます。
そんな人たちが、日本の常識では考えられない行動をしていた場合、思わず何か言いたくなったり、注意したくなったりする人もいるでしょう。
その際に思い出してほしいのが、冒頭に紹介したクッション言葉です。
いきなり注意をしたり、非難されたり、文句を言われたら相手も驚きますし、そもそもルールやマナーを理解していない人にしてみたら、何を注意されているのか?理解できず困惑したり、時には攻撃的な態度に出る場合もあります。
相手が日本語を理解せず、こちらも相手の言語が分からない時には、翻訳アプリを使って意思疎通をする場合もありますが、そんな時でも伝えたい内容だけを翻訳するのではなく、クッション言葉を添えた、丁寧な言葉使いの日本語を翻訳する事をお勧めします。
例えば「すみません。子供が眠っているので少し静かにしてもらえませんか?」を、Google翻訳を使って英訳すると Sorry. My child is sleeping, so could you please be a little quiet? と最初にクッション言葉が付きます。
あまりにも婉曲な表現だと誤訳が発生しやすくなりますから、その点は注意が必要ですが、丁寧かつシンプルな短い文章であれば、大抵の場合 問題無く訳せると思います。
もちろん、相手の行動や状況、または言語の問題などで、スムーズに会話が出来ない場合や、直接注意をするのが難しい場合もあるでしょう。そんな時は、速やかに公共機関(警察や施設関係者)に相談したり、専門家に頼る事も大事です。
異文化コミュニケーションでは、言語だけではなく、背後にある文化や常識の違いを踏まえて、こちらの意思や意図を伝えないと、拗れる場合があります。
その点を考慮した上で、日本の人々と海外観光客がより良いコミュニケーションを行い、素晴らしい経験をされる事を、我々は切に願っています。