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「金継ぎ」を英語で紹介 ~通訳者の視点から~

世界でも注目を集める日本の伝統文化「金継ぎ」。今回はこの「金継ぎ」について少しご紹介しつつ、ワークショップでの通訳についてなどもご紹介したいと思います。(画像提供・漆芸舎

金継ぎ とは

「金継ぎ」とは、陶器などの割れや欠け、ひびなどを修復する日本の伝統的な修復技法のこと。別名「金繕い」等とも呼ばれます。

コトバンク / デジタル大辞泉 より

きん‐つぎ【金継ぎ】
割れたり欠けたりした陶磁器を漆うるしで接着し、継ぎ目に金や銀、白金などの粉を蒔まいて飾る、日本独自の修理法。修理後の継ぎ目を「景色」と称し、破損前と異なる趣を楽しむ。現代では漆の代わりに合成接着剤を使うこともある。金繕い。

https://kotobank.jp/word/%E9%87%91%E7%B6%99%E3%81%8E-481548

BBCも、金継ぎについての紹介動画及び記事を掲載。その伝統文化と精神は世界中から注目を集めました。
Kintsugi: Japan’s ancient art of embracing imperfection(9 January 2021 BBC)

漆芸修復師
清川 廣 氏

BBCの動画でインタビューが紹介されている漆芸修復師 清川 廣氏は、江戸時代に確立された伝統技法の継承者として、50年にわたり 漆を用いた「漆芸」修復に携わっていらっしゃいます。

また、伝統工法を幅広く紹介することを目的に、京都と東京で金継ぎ教室を主宰されています。

2018年テレビ東京、2020年イギリス公共放送BBC、2023年NHK World に出演。その他、雑誌・新聞等各メディアで活動が取り上げられており、2022年には外務省の招聘で、バチカン市国ベネディクト16世ホールを皮切りに、イタリア各地で公演も行っていらっしゃいます。

現在は、株式会社 漆芸舎 代表・NPO 法人ROLE 代表理事として、後継者作りや文化保持に意欲的に取り組んでおられます。

清川廣樹が創業した金継ぎ・漆芸修復の工房
平安堂 京都 / 漆芸舎
Website
https://www.heiando-kyoto.com/

金継ぎ / 日本の伝統工芸
を紹介する場での通訳

2024年4月上旬 東京にて「金継ぎ」のワークショップが開催され、漆芸修復師 清川 廣氏が参加者に金継ぎの魅力などをレクチャー。

弊社代表で通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、このワークショップでの通訳を担当させて頂きました。

金継ぎ 及び 日本の伝統工芸や文化を紹介する場で、通訳をする際の注意点について、右田がコメントを寄せてくれたので、ここでご紹介したいと思います。

通訳者
右田アンドリュー・ミーハン
コメント

今年で職人歴50 年を迎えられる漆芸修復師 清川 廣先生。日本の文化を守っている京都で、神社仏閣の修復なども行われている方の言葉は、やはり日本の歴史・日本の心を反映した表現が多くなります。

今回の清川先生の「金継ぎ」のワークショップでも「日本人の感性」「日本人の誠心誠意なるもの」「侘び寂びの世界」「千利休の教え」や、その周辺のお話、イメージ等が多々出てきました。

因みに「金継ぎ」は英語でも Kintsugi です。

具体的にワークショップで出てきた言葉や説明の代表例を挙げてみましょう。

  • 極楽浄土の説明
  • 日本人の死生観、無常感
  • 先人たちの想い
  • 日本にしかない素材の説明
  • 師匠の本意
  • 御礼奉公(おれいぼうこう)
  • 蒔絵(まきえ) などなど

これらの言葉や話を英語で通訳するには、それなりに日本史、古典/古文、日本の古美術等の勉強と理解が必要になります。

さらに清川先生がワークショップで伝えたいメッセージは何かを、事前の打ち合わせを通して充分理解しておかなければなりません。

また 実際に通訳をする場では、先生の話の中で何が重要か、または重要でないかを判断し、重要なポイントでない場合は単純な訳に留め、大事なポイントの場合は補足説明をするなどして、話を聞く相手の理解が深まる様に訳す事も大事です。

その場に居る人が充分に先生の話を理解出来る様にするには、話を聞く側のバックグラウンド(出身国等)もある程度知っておかないと、相手に伝わる(相手が理解できる)通訳は出来ません。

ですので、事前の下調べでは参加者のプロフィールも調べます。

さらに通訳する場では、通訳者が話す分量にも配慮が必要です。せっかく日本情緒が味わえる場でもあるのに、通訳者が のべつ幕無し話しっぱなし(訳しっぱなし)では、それが損なわれる場合もありますから。

そこで今回のワークショップでは、清川先生を始め講師の方々のキャリアや、職人としての目線を理解した上で、聞き手が理解しやすい訳を考えつつ、うるさくなり過ぎない様にバランスを見ながら訳すことを大事にしました。

こう言う場での通訳が、ある程度のレベルで出来る様になったのは、私も通訳としての経験を重ねたと言うのもあるでしょうが、人生経験を重ねたからと言う部分もあると思います。

とは言え、まだまだですけれどね。今回のワークショップでの通訳を終えて「これからも精進していかないと」と、想いを新たにした次第です。

右田アンドリュー・ミーハン

画像提供・漆芸舎

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