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性別を特定しない人称代名詞 They ~プライド月間に寄せて~

Marcello MigliosiによるPixabayからの画像

6月は LGBTQ / LGBT+コミュニティーを祝うパレードや、権利啓発のイベントが開催される月間プライド月間 / Pride Monthです。そこで今回は性別を限定しない人称代名詞 They や、昨今のLGBTQ / LGBT+で使われる英語表現等について少し紹介したいと思います。

6月はプライド月間
Pride Month 

6月はLGBTQ / LGBT+コミュニティーを祝うパレードや、権利啓発のイベントが開催されるプライド月間・Pride Month です。

なぜ6月に開催されるのか?については以前にこのブログでもご紹介しましたが、1968年6月に アメリカ / ニューヨーク グリニッチ・ヴィレッジにあるゲイバー「ストーンウォール・イン」で起きた警察による強制捜査と、それに抵抗した性的少数者の争いが1つのきっかけになっています。

プライド月間
Magazine for LGBTQ+ Ally『PRIDE JAPAN』より

ストーンウォール暴動が起こったのが6月末だったことから、毎年6月最終日曜日にニューヨークやサンフランシスコでプライドパレードが開催されるようになりました。そこで、この週末をプライドウィーク、6月をプライドマンス(プライド月間)と呼ぶようになったのです。

https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/glossary/ha/2.html

性別を限定しない
人称代名詞 They とは

昨今は、ダイバーシティ&インクルージョン=多様性の受容が社会的に求められていますが、その代表例の1つとして性別多様化への受容があげられると思います。

この性別多様化への受容として、生み出されたのが性別を限定しない人称代名詞 They です。

They / Their / Them と言えば、学校で「3人称複数形」と習った方も多いのではないでしょうか。

人称代名詞とは、話の中、または文章の中で人物についてさし示す代名詞の事です。

コトバンクより

話し手(または書き手)自身をさす自称(一人称、「わたくし」「ぼく」「おれ」など)、相手をさす対称(二人称、「あなた」「きみ」「おまえ」など)、話し手や相手以外の第三者をさす他称(三人称、「このかた」「そのかた」「あいつ」「かれ」など)、不特定または未定の人物をさす不定称(「どなた」「どいつ」など)に分けられる。

https://kotobank.jp/word/%E4%BA%BA%E7%A7%B0%E4%BB%A3%E5%90%8D%E8%A9%9E-593760

英語では、1人称は I / My / Me 2人称は You / Your / You 、3人称は相手が単数=1人だった場合 男性ならば He / His / Him 女性ならば She / Her / Her 、そして3人称で相手が複数=1人以上だった場合は They / Their / Them と教わったと思います。

この They が、性別を特定しない3人称単数の代名詞としても使われる様になりました。

They
Cambridge Dictionary より

A1
used as the subject of a verb to refer to people, animals, or things already mentioned or, more generally, to a group of people not clearly described:

B1
used to refer to a person whose gender (= sex) is not known or does not need to be mentioned, to avoid having to say "he or she":

used to refer to a single person who describes their gender (= sex) as non-binary (= not simply male or female):

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/they?q=They

ケンブリッジ英英辞典で調べると、3人称複数としての They の説明(A1:すでに言及されている人々、動物、または物、あるいはより一般的に、明確に表されてない人々のグループを指す)に加え、性別を特定しない表現としての説明(B1)も記載されています。

B1
その人の性別(=性)がわからない、または言及する必要がない様に、"彼または彼女 "と言うことを避けるために使用されます。

自分の性別(=性)を、ノンバイナリー(=男性か女性と言うシンプルではない)と表現をする一人の人を指すのに使われます。

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/they?q=They

この They は、2019年に アメリカ メリアム・ウェブスター辞典(Merriam-Webster Dictionary) で「今年の言葉」にも選ばれています。

'They' Is Merriam-Webster's Word of the Year 2019 Take a deeper dive on our 2019 pick (Merriam-Webster Dictionary)

Non-binary
ノンバイナリー とは

性別を特定しない3人称単数表現としての They の説明にある言葉「Non-binary / ノンバイナリー」。

耳馴染みがないかも知れませんが、少し前に宇多田ヒカルさんがご自分の事を「ノンバイナリー」と表現して、注目された言葉でもあります。

宇多田ヒカルは男性?女性?「私はノンバイナリー」告白に共感相次ぐ「ミステリーウタダ」新敬称も提案をカミングアウト! その正しい“定義”とは (2021年6月28日 中日スポーツ・東京中日スポーツ)

バイナリーとは、元々コンピューター / IT 業界でよく使われていた言葉で、「2つの」や「2つから成る」と言った意味や、0と1からなる2進法、2進数、2分法などを意味します。

Non-binary / ノンバイナリーは、binary を否定(Non)する事で、2つには分けられない / 定義づけられない、つまり「男性とも女性とも定義づけない」という意味で使われています。

ノンバイナリー
Magazine for LGBTQ+ Ally『PRIDE JAPAN』より

性自認が男性と女性の間のグラデーションの上にあるとか、男性でも女性でもない(該当する性別がない)とか、どちらでもあるといった、男性/女性の典型的な二分法(バイナリー)に当てはまらない方全般を指します。

https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/glossary/na/2.html

代名詞 / Pronoun

日本語では「代名詞」と訳される Pronoun

Pronoun
Cambridge Dictionary より

a word that is used instead of a noun or a noun phrase:

Someone's pronouns are the way they choose to be referred to according to their gender identity (= their feeling of having a particular gender):

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/pronoun

ケンブリッジ英英辞典にもある様に、最近は 自分がどの様な人称代名詞= Pronoun で呼ばれたいかを、ソーシャルメディア等に記載する人もいます。

日本語では男性でも女性でも、1人称に「私」を使用する人もいますし、3人称単数でも性別を特定しない言い方(例:あの方、あの人)も可能なので、気にする事は少ないと思いますが、英語でのコミュニケーションでは、この3人称単数の代名詞について気をつける必要があります。

もし、人称代名詞について不安がある場合は Excuse me, what is your pronoun?Would you / Could you let me know your pronoun? または May I ask your pronoun? と丁寧に聞くと良いでしょう。

オードリー・タン氏の通訳

台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タンさんは、トランスジェンダーである事を公表しています。

弊社代表通訳の右田アンドリュー・ミーハンはタンさんの通訳を何度かしてますが、最初の通訳の時に、タンさんに人称代名詞を確認したところ「それを聞いてくれた通訳は、アナタが初めてだ」と喜んでくれたとの事。

英日/日英の通訳者や翻訳者は、この様な事にも対応/配慮する為、様々な言葉の変化に敏感である必要があります。

Don’t Say Gay Bill
ゲイと言ってはいけない法案

フロリダ州で2022年1月 子どもたちが学校で、性的指向や性自認、LGBTQ+に関する議論を行うことを禁止する法案=通称 Don’t Say Gay Bill (ゲイと言ってはいけない法案) が可決されました。これに対して大きな議論がアメリカでは巻き起こっています。

Don’t Say Gay Billは「ゲイと言ってはいけない法案」と訳されますが、ゲイを口にしてはいけない=禁句にして社会の一組織の存在を否定する意図が感じられるため、多くの人が反対、大きな議論となっているのです。

日本生まれイギリス育ちのミュージシャン Rina Sawayama (リナ・サワヤマ) さんは、世界最大級の音楽フェスであるコーチェラ(Coachella)のステージで「私は誇り高きクィア(Queer)の日本人で、イギリス人で、アジア人」と、同法案を批判しています。

リナ・サワヤマ、コーチェラで「ゲイと言ってはいけない」法案を批判「みんな『ゲイ』って言って!」 (2022年4月18日 FRONTROW)

クィア
Magazine for LGBTQ+ Ally『PRIDE JAPAN』より

LGBTQとかLGBTQ+という言い方をした時のQは、クエスチョニングやクィアを意味しています。LGBTQのQとしてのクィアは、L、G、B、Tのカテゴリーには当てはまらない、性的指向や性自認が非典型な方全般を指します。

また、クィアは性的マイノリティの総称としても用いられます(LGBTや性的マイノリティの代わりにクィアと言っても、問題ありません)

https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/glossary/ka/9.html

Rina Sawayamaさんは、Elton Johnさんと様々な理由で孤立した人々の新たな希望を謳う曲「Chosen Family」をリリースしています。

曲のタイトル Chosen Family = 選ばれた家族 という言葉は、LGBTQ+コミュニティに長らく存在している言葉で、血縁ではなくても、出会いによって生み出された繋がりを意味しているとの事。

楽曲詳細:https://avex.jp/rinasawayama/news/detail.php?id=1091174

第30回
レインボー・リール東京

セクシュアル・マイノリティをテーマとする作品を上映する映画祭「第30回レインボー・リール東京」が、2022年7月8日~14日シネマート新宿、7月15日〜21日 シネマート心斎橋、そして7月16日〜18日スパイラルホールで開催されます。

株式会社ミーハングループは「言語だけにとどまらない様々な背景を持った人々の心の橋渡し」をモットーに、通訳・翻訳業務を行っており、LGBTQ/LGBT+ 案件も数多く手掛けている事から、同映画祭の英訳ボランティアの一員として、代表である右田・アンドリュー・ミーハンが、第30回レインボー・リール東京 Website やパンフレット等に掲載されるコメントや文章の英訳翻訳等を手掛けています。

第30回 レインボー・リール東京 Website
https://rainbowreeltokyo.com/2022/


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