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ロスト・イン・トランスレーション / Lost in Translation

日本では2004年に公開されたソフィア・コッポラ監督の映画「ロスト・イン・トランスレーション / Lost in Translation」。このタイトルとなった言葉、実は通訳や翻訳の現場等で実際に使われる表現でもあります。そこで今回の記事では、 Lost in Translation について通訳者の視点から感じること等を、少しご紹介したいと思います。(二 盧によるPixabayからの画像)

映画
ロスト・イン・
トランスレーション

日本では2004年4月に公開されたソフィア・コッポラ監督の映画「ロスト・イン・トランスレーション / Lost in Translation

映画.com
ロスト・イン・トランスレーション

https://eiga.com/movie/1507/

ビル・マーレイが演じた、ウィスキーのCM撮影のため来日したハリウッドスターのボブと、スカーレット・ヨハンソンが演じた、写真家の夫に同行して東京へやって来たシャーロット。

異国の街・東京で出会った孤独なアメリカ人男女・ボブとシャーロットの心の交流を繊細に描いた本作は、言語の問題だけでなく夫と妻、男と女、老人と若者、友人間など、人間関係における相互理解の難しさもテーマとしていると言われています。

第76回アカデミー脚本賞をはじめ数々の映画賞に輝いた本作は、海外から日本に観光に来る人々の間では、現在でも人気の高い映画です。

Lost in Translation

さて、映画のタイトルにも使われた言葉 Lost in Translation ですが、直訳すれば「翻訳で失われるもの」や「翻訳で抜け落ちたもの」となります。この英語表現が真に意味する事はなんでしょう?

映画「ロスト・イン・トランスレーション」の予告編冒頭に、ウィスキーのCM撮影現場シーンがあります。

ビル・マーレイ演じるハリウッドスターのボブに対して、日本語でアレコレと注文するディレクターの言葉を通訳者が with intensity と訳したのに対し、ボブが Is that everything? Seems like he said more than that. と通訳者に聞いています。

このシーンは Lost in Translation の1つの状態を良く表していると思います。

通常 Lost in Translation とは、A言語からB言語に訳す際に「本来の意味やニュアンスが失われてしまう状態」や「全てが訳されていない状態 」、または通訳を介したやり取りにおいて「意味の全てが伝わっていない、あるいは端的に意味が伝わっていない」状態を意味します。

では、このシーンで通訳者は 全てを訳していない / 意味の全てが伝わっていない通訳をしたのでしょうか?

映画の予告編で ダイアモンド☆ユカイさん演じるCMディレクターは「時間が無いんだよ、ね、パッションが、カメラ、テンション上げて」と言っています。

確かに通訳者は、CMディレクターの一言一句を訳してはいません。しかし、ディレクターが言わんとしたこと / 発した言葉の真意を捉えて with intensity と訳したのではないでしょうか。

from the Cambridge dictionary / American Dictionary

intensity noun
the quality of being extreme in strength or force:
ART
Intensity in a work of art describes the strength of the color, sound, light, or feeling.

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/intensity

つまり、感情表現として「強さ」が求められていると言う意味では、CMディレクターが発した言葉の英訳として with intensity が間違っているとは思えません。

しかし、自分に向けて発せられた言葉数やディレクターの態度から、通訳者が伝えた with intensity だけでは全てが訳されていると思えないボブは Is that everything? Seems like he said more than that. と聞いたのだと思います。

Lost in Translation とは、Aと言う言語を異なる言語Bに訳す時、言葉に含まれたニュアンスや、文化的背景、感情、価値観などが失われる事を基本的には意味しますが、通訳や翻訳を挟むことで、話者が伝えようとした内容が相手にずれて伝わる=真意が上手く伝わらない状態や、訳した内容が正しくても相手に不信感を与えてしまう=誤解を与える状態、話が噛み合わない状態なども意味する場合があります。

通訳者からのTips

大きな契約や訴訟等、慎重な発言が求められる場での通訳で Lost in Translation と言われる事があります。

質問した内容や知りたい事に対して、満足できる返答が相手から得られない時などに言われる事が多いのですが、これは相手が予め用意した答えを読んでいたり、答えたくない内容なので話をはぐらかしている為、やり取りが噛み合わないケースも多々あります。

この様な状況で Lost in Translation と言われた場合、私も若い時は本気で反論をしたり、状況を説明したりした時もありましたが、今は「話された内容は全て訳していますが、文化的な違いもあって真意が伝わりずらいのかも知れませんね」と、言う様にしています。

全ての問題を通訳者の責任にされるのは困りものですが、事細かく説明したところで、相手が理解してくれたり、話が進むとは限りません。

また、訴訟などの場合、聞かれたり、話された内容の意図が伝わっていない様な回答をわざとして、それを通訳者のせいにし、時間稼ぎをする人も居ます。

Lost in Translation と相手に思わせない様に通訳をする事は大事ですが、 Lost in Translation と言われてしまった場合でも、通訳者の責任では無いケースもあるので、その見極めは大事です。

右田アンドリュー・ミーハン

パーク ハイアット 東京

話は少し変わりますが、ホテル パーク ハイアット 東京は、映画「ロスト・イン・トランスレーション」で ビル・マーレイが演じたハリウッドスターのボブと、スカーレット・ヨハンソンが演じたシャーロットが宿泊していたホテルとしても知られています。

本ホテルは、2024年5月より実施中の開業30周年を記念した大規模改修工事を経て、2025年12月9日にリニューアルオープンします。

パーク ハイアット 東京

パーク ハイアット 東京は、映画「ロスト・イン・トランスレーション」公開後、記者会見場や海外の取引先との会議の場としても大変人気で、弊社代表で通訳者の右田アンドリュー・ミーハンも仕事でよく訪れたとか。

来日したスターが宿泊先にパーク ハイアット 東京を指定したり、利用する事も多かったそうで、右田が仕事で訪れた際に、エレベーターで俳優のキアヌ・リーブスと鉢合わせしたり、ロックバント・エアロスミスのボーカリスト スティーヴン・タイラーを見かけたりしたこともあったそうです。

今回のリニューアルは、パリを拠点とする建築デザイン事務所「ジュアン マンク / Jouin Manku」が監修。天然素材の風合いや自然光を活かした設計、 より快適な動線、そして最新設備の導入により、オリジナルデザインとの調和を保ちつつも、新たな魅力と現代の旅やライフスタイルに相応しい快適性を備えたホテルへと生まれ変わるとのこと。

2025年12月9日リニューアルオープン後の宿泊やレストランの予約受付は、2025年9月より行われており、海外からの観光客はもちろん、ビジネスやイベント会場としても注目を集めています。

パーク ハイアット 東京
Website

https://www.hyatt.com/park-hyatt/ja-JP/tyoph-park-hyatt-tokyo

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