新型コロナウイルス・オミクロン株が日本でも急速に感染拡大しています。今回のブログでは、2022年1月6日及び11日に行われた新型コロナウイルス対策の会見で使われた言葉「リエゾン」についてご紹介。併せて新型コロナウイルスに関連した表現も再紹介します。
さらに今回は、病院等で奮闘する医療通訳者の意外な難しさについても簡単にご紹介致します。
リエゾンとは
2022年1月6日の「まん延防止等重点措置の適用の要請等についての会見」にて、「リエゾンチーム」と言う言葉が使われました。
「リエゾン liaison 」とは、元々はフランス語で言葉を話す時に音が繋がる事を意味していますが、ビジネスの場等では、渉外や仲介、連携や橋渡しと言った意味で使われています。
これは軍隊で、2つ以上の組織間の連絡・調整を担い、異なる組織をつなぐ役割を果たす人を「リエゾン・オフィサー liaison officer」と呼んだ事に由来します。因みに日本語では 「リエゾン・オフィサー」は「連絡将校」等と訳されます。
1月6日の会見で岸田首相は「特に感染拡大が著しい沖縄県については、官邸や各省幹部とホットラインで対応するリエゾンチームを派遣し、県庁に常駐させることといたしました。」と発言しています。
この場合の「リエゾンチーム 」は、官邸や各省庁幹部と沖縄県の連携を図るチーム(連絡/調整を行うチーム)と言う意味になると思います。
英語ではこの様な業務やチームの事は task force とよく言います。つまり、その連絡などを任せられた(業務を任された)チームと言う意味です。liaison team とは一般的には言いません。
また「リエゾン liaison 」は、英米では代議士や政治家に付いてる秘書のことを指す場合もあります。
医療の場における
リエゾン
「リエゾン liaison 」と言う言葉は、最近では医療でも「コンサルテーション・リエゾン精神医学 Consultation Liaison Psychiatry」や、「リエゾン療法」「リエゾン介入」と言う形で使われています。
コンサルテーション・リエゾン精神医学は、身体医療の中で起こる様々な精神医学問題に対して、医師を含む医療スタッフと精神科医が共同してあたる治療・診断やシステム、それに関する研究のことを意味します。
またリエゾン療法や介入も同様に、異なる「科」 例えば精神科と外科、内科等、または医師・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカーが連携/協働して治療を行う事を意味する様です。
参考リンク
リエゾン(心のケア)チーム(千葉県救急医療センター)
新型コロナウイルス関連
の英語表現
本ブログでは、これまでに何度か新型コロナウイルス関連の英語表現を紹介しています。
オミクロン株 Omicron variant の急速な感染拡大に伴い、実施が急がれているワクチンの追加接種。このワクチンの追加接種の事は、英語では Booster または COVID-19(Corona Virus) Vaccine Booster Shots 等と表現されます。
また感染力が高いオミクロン株で、今まで以上に注目を集める事になった濃厚接触者は Close Contact と英語では表現します。
その他「ワクチン接種」や「まん延防止等重点措置」、「再増加 / 再流行」等、テレビのニュースで最近よく耳にする言葉の英語表現例を下記に再掲載致しました。ご参考として頂ければ幸いです。
ワクチン接種に
関連する英語表現
- 予防接種
vaccination - 接種
inoculation / vaccination - 注射
injection / shot / jab - 注射する
administer the/an injection - 免疫
immunization / immunity / immunized against - 集団免疫
herd immunity - 基礎疾患
underlying conditions / underlying medical conditions - 慢性疾患
chronic illnesses / medical conditions - ワクチンの有効性
vaccine's effectiveness - 副作用 / 副反応
side effect / adverse drug reaction - 効力
potency
再増加 / 再流行
- Rebound in COVID-19 infections/cases
COVID-19感染症の再流行 - COVID-19 cases rise again in Japan
日本におけるCovid-19の患者数が再び増加 - Omicron variant is on the rise in Japan
オミクロン変種が日本で増加している - Omicron variant rapidly spreads in Japan
オミクロン変種が日本で急速に増加
まん延防止等重点措置
- Stricter measures to prevent the spread of the virus
コロナウイルスの拡散を防ぐためのより厳格な措置 / 対策 - More stringent COVID-19 measures
より厳格なCOVID-19措置 / 対策 - More restrictive Covid measures
より厳しいCovid措置 / 対策 - More stringent / enhanced (updated) coronavirus measures short of an emergency declaration
(緊急事態宣言以外の)コロナウイルス対策の厳格化 / 強化
「緊急事態宣言」は 英語では State of Emergency または State of Emergency Declaration
「まん延防止等重点措置」については同じ様な意味の英語表現が無い為、以下の表現もメディアでは用いられていました。
focused anti-infection measures - NHK World, July 5, 2021
tighten anti-infection measures - NHK World, Jul 8, 2021
quasi-state of emergency - Japan Times, Jul 8, 2021
semi-state of emergency - CNN, 10th July 2021
入国規制
- Border closed
- Entry bans for 〇〇
※for 以下は禁止対象者:例 travelers - Refused entry in to 〇〇
※in to 以下は場所等:例 Japan - immigration restrictions
医療崩壊
日本の英字報道では「医療崩壊寸前」について、以下の様な表現が2021年3月には用いられていました。
- Medical care on brink of collapse (in COVID-19)
- Medical Systems in Japan on Verge of Collapse
- Health care system may collapse
ただし、海外の報道では「医療崩壊」をダイレクトに表現せず、以下の様な表現を用いる事が多い様です。
- crisis-level shortage (of beds, staff, etc)
- hospitalization surge
また医療がひっ迫している事は strain / straining や overwhelm を用いて表現される場合もあります。
- The Japanese capital Tokyo, faced with acute strains on its medical system from the COVID-19 pandemic.
Tokyo raises COVID-19 alert to highest as medical crunch looms / Reuters - The panel called for additional measures to deal with infection clusters to prevent medical facilities from being overwhelmed by COVID-19 patient.
Doctors say ‘3rd virus wave’ here; limits to remain at sports sites / THE ASAHI SHIMBUN
よくある症状の
英語表現
- 最もよくある症状
Most common symptoms - 発熱:fever
- 空咳:dry cough
- 倦怠感:fatigue
- 時折みられる症状
Less common symptoms - 味や匂いの喪失
loss of taste or smell - 鼻詰まり
congestion / nasal congestion - 結膜炎
conjunctivitis / red eye / pink eye - 喉の痛み:sore throat
- 頭痛:headache
- 筋肉や関節の痛み:muscle and joint pain
- さまざまな種類の皮膚の発疹
different types of rash / skin rash - 吐き気または嘔吐:nausea or vomiting
- 下痢:diarrhea
- 悪寒またはめまい:chills / vertigo
ここで紹介した英語表現、また当ブログで紹介している英語表現は、あくまで一例です。他の表現もある事をどうぞお忘れなく。
このほか、新型コロナウイルスに関連した英語表現についての記事は、以下リンクまたは画像をクリック頂くと一覧で御覧頂けます。併せてチェック頂ければ幸いです。
https://meehanjapan.com/tag/covid-19/
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医療通訳の難しさ
新型コロナウイルス感染拡大により、多くの医療従事者が厳しい日々を過ごしています。
そしてスポットが当たる事はあまりありませんが、日々アップデートされる医療現場の言葉を、患者さんや医療従事者の為に訳す医療通訳者も、忙しい日々を送っています。
医療通訳者は、もちろん医療用語の修得や医療現場への理解が必要となりますが、実は多様な表現への柔軟な対応や、異文化コミュニケーションの高いスキルも求められる事はご存知でしょうか?
例えば日本語に多い「擬音表現」は、医療の場でも多く使われています。
「お腹がシクシク痛む」「アタマがズキズキする」「クラクラと目まいがする」「胸がギューっとしめつけられる」等と、身体の状態を擬音で表す事は日本の医療現場でも良く見かけますよね。
しかしこれらの言葉を他言語に訳す場合、「擬音」をそのまま使う事はまずありません。擬音による表現は、日本語ほど他言語では一般的ではないのです。
たとえば先ほどの日本語を英語に訳す場合は、擬音は一切使わず以下の様に表現します。
- お腹がシクシク痛む
my stomach feels queasy. - アタマがズキズキする
My head is pounding. - クラクラと目まいがする
I feel dizzy and weak.
※安定を無くすと弱くなると英語では表現ます。 - 胸がギューっとしめつけられる
Chest feels tight.
通常とは異なる状況で
医療の場では子供や高齢者が患者の場合もあります。
子供が患者の場合、まだ言葉が成熟していない為、幼いことばや方言、流行り言葉、社会人/大人が使う言葉とは異なるくだけた言葉や表現を使う事があります。
また、高齢者 とくに後期高齢者が患者の場合、一般的な表現や昨今の表現とは違った古い表現を用いた話し方になるケースもあります。
こう言った場合、医療用語は理解していても、大人が使う一般的な日常表現の語学知識しかない人だと、正確に通訳をするのに苦戦することがあります。
また、大人でも急な病気や怪我により、気が動転して上手く説明できない場合や、こちらの話を理解出来なくなる事もありますし、興奮状態の患者さんや、心臓発作を起こしかけてる患者さんなど、通常の状態でない人の通訳をする場合にも、コツが必要となります。
さらには、文化や宗教観の違いにより日本では一般的な治療でも拒否される場合や、激しい抵抗を受ける場合もありますし、医療制度が全く異なる場合、保険や支払いでトラブルが発生する場合もあります。
こう言った様々な状況に対し、医療通訳者は事前の資料や打ち合わせもなく対応しなければなりません。
つまり医療通訳者は、専門的な用語を駆使した迅速かつ正確な訳が求められるのに加えて、異なる価値観や多様な言語表現を理解し、柔軟に対応する事が求められます。そこが医療通訳の難しい点でもあります。
ミーハングループ代表通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは、大学でバイオメディカルエンジニアを専攻。大使館や海外の大学からの依頼が主になりますが、弊社では医療通訳/翻訳も手掛けております。
医療関係の通訳/翻訳に関するご相談やご質問がございましたら、通常の通訳/翻訳業務同様、お気軽にお問合せフォームよりご連絡、またはお問合せ電話番号 03-5413-3500 までご連絡下さいませ。
※ミーハングループは新型コロナウイルスの感染リスクを軽減する為、在宅勤務(テレワーク)を継続。必要時のみの出勤体制にて業務を行っております。何卒ご理解・ご了承の程、よろしくお願い申し上げます。