大坂なおみ選手の全仏オープンテニス2021を棄権するに至る問題は、多くの人の注目を集め話題となりました。さらに大坂選手が棄権を表明した際に告白した彼女自身の状況や精神状態についても大きな衝撃を与えました。
今回は大坂選手が、彼女のソーシャルメディアに投稿したと言われるアルバムジャケットに書かれていた言葉「Good Riddance」について少し説明したいと思います。
大坂なおみ選手
全仏オープン棄権
大坂なおみ選手が、2021年5月30日から開催されている全仏オープンテニスを棄権した事は、皆さんご存知の事と思います。
大坂選手は全仏オープン開催直前に、試合後の記者会見に応じない意向を発表。5月30日の1回戦のあと会見に出席しなかったため、主催者から罰金を科されました。
この発言と行動は、多くの人の注目を集め、賛否両論を巻き起こしました。
また、6月1日自身のTwitterにて棄権を表明した際に、大坂選手が告白した「2018年の全米オープン以来、長い間、気分が落ち込むことがあって対処するのに本当に苦労した」と言う発言についても、話題となっています。
【全訳】大坂なおみがツイッターに綴った「全仏撤退の理由」と「本当に伝えたかった思い」
COURRIER JAPONより
Good bye & Good Riddance とは
大坂なおみ“さよなら、これでせいせいするわ”インスタグラムで写真掲載
日刊スポーツより
大坂なおみ選手が、6月1日に全仏オープンを棄権する事を表明する前に、彼女のインスタグラムアカウントにて、ストーリーズ機能（ライブ機能と言う報道もあり）を使って投稿されたと言うアルバムジャケットは、アメリカのラッパー Juice Wrld（ジュース・ワールド）のアルバム「Good bye & Good Riddance」のジャケット写真になります。
この件について報道した日本のメディアでは、アルバムタイトル「Good bye & Good Riddance」を「さようなら、これでせいせいするわ」と訳しているところが多かった様に思います。
Good Riddance の意味
さて「Good Bye」は良いとして、「Good Riddance」とはどういう意味なのでしょうか？
まず Riddance の意味を英英辞典で調べると the act of getting rid of something undesirable or unpleasant; deliverance or removal（Collins English Dictionary より） と書かれています。
つまり「望まないもの、または不快なものを取り除く行為、開放または除去」と言う意味です。
それに「Good」がつくので、「望まないもの、または不快なものが取り除かれて良かった」つまり「せいせいした」や「厄介払い」または「いい厄介払いが出来た」となります。
最近では Riddance だけで使う事は少なく、 Good Riddance とセットで使われる事が多い表現で、Juice Wrldのアルバムタイトルだけではなく、アメリカのバンド Green Day も Good Riddance (Time of Your Life) と言うタイトルの曲を1997年にリリースしています。
ただ、このGreen Dayの曲の歌詞からすると、この場合の Good Riddance は、「せいせいした / 厄介払い」と言ったニュアンスではなく、「これが正しい判断（不要なものを除去する事が良い事）」と言う意味の様に取れます。その証拠に、この曲はアメリカでは、卒業等のシーンで良く歌われる曲だそうです。
Green Day / Good Riddance (Time of Your Life) 歌詞
この様に、前後の言葉や状況によって言葉の持つ意味は異なってきます。
大坂なおみ選手が、どの様な心境でJuice Wrld のアルバム「Good bye & Good Riddance」のジャケット写真を、ソーシャルメディアに投稿したのか？本当に「（全仏オープンやテニスの試合における記者会見、またはこの騒動に対して）さようなら、せいせいした」と思っているのかどうか？その真意はその人自身しかわからないのではないでしょうか。
言葉は自分の気持ちや考えを表す手段の1つですが、コミュニケーションにおいて言語情報が占める割合は7％、非言語情報（聴覚：話す声のトーンや速さ / 資格：見た目や動作）は、93％を占めていると言う説もあります（メラビアンの法則）。
通訳や翻訳は、言葉を訳すのが仕事ではありますが、言葉以外の情報も考慮して訳さないとならないのは、そう言うわけなのです。