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通訳の仕事現場

通訳の仕事現場と言うと、どんなイメージを皆さんはお持ちでしょうか。今回のブログ記事では、意外と知られていない通訳者の仕事現場について、また通訳スキルのランク等についてもご紹介します。kp yamu JayanathによるPixabayからの画像)

通訳の仕事現場
逐次通訳と同時通訳

通訳の仕事現場と言ったら、どの様なイメージをパッと思い浮かべられるでしょうか?

一般的には、海外の有名映画俳優やミュージシャン、政治家や企業の偉い人、セレブリティの隣に立っていたり、近くに座って通訳する姿をイメージすることが多い気がします。

または、海外から専門家等を招いた大規模カンファレンス等で、登壇者の話を通訳者が同時通訳した内容をイヤフォンで聞いたり、放送等で耳にする事が多い同時通訳のイメージを思い浮かべる方もいらっしゃるかも知れません。

実際に通訳者が訳している姿を目にする場合、行われている通訳のスタイルは「逐次通訳(ちくじつうやく)」と呼ばれる、話者の話が一区切りついたら、その内容を都度=逐次(ちくじ)訳す方法が多いです。

以下画像は、2023年3月 G7広島サミット2023 を前に行われた、日本学術会議が主催する Gサイエンス学術会議2023(G-Science Academy / S2023)での提案を、直接岸田首相(当時)に渡す手交式の様子になります。

この時、通訳を務めた弊社代表の右田アンドリュー・ミーハンは、画面向かって左側に座るGサイエンス学術会議2023(G-Science Academy / S2023)のメンバーの少し後ろに座って、逐次通訳を行いました。

「同時通訳」の場合は、会見の壇上や話者(スピーカー)の隣や近くなど、会見等に参加した人から見える位置に通訳者が居る事はほとんどありません。

テレビ放送等での同時通訳の場合は、通訳者は放送局内に設置されたブース等にて通訳する事が多いです。

また、会見や会議などでの「同時通訳」の場合は、通訳者は「通訳ブース」と呼ばれるブースの中でモニター等を見つつ、ステージ上で話者(スピーカー)が話すのと「同時」に、話の内容を通訳します。

以下記事でも、同時と逐次通訳の違いについては説明していますので、ご興味のある方は、併せてご確認下さいませ。

研修や視察・
建設現場 等での通訳

最近では、海外からの旅行客に通訳者が同行し、日本語の説明や他言語での質問を通訳している姿を見たり、企業等の視察に通訳者が同行して訳している姿を見たりすることもあるかと思います。

通訳者は、必要とされれば基本的にどこにでも出向いて行きますが、時には意外な場所で通訳をしたり、恐怖で震え上がりそうなシチュエーションで通訳をする事もあったりします。

アメリカの大学院の
視察旅行での通訳

日本の国会議事堂(参議院・衆議院)、官公庁(特許庁他)、裁判所などを視察しに、アメリカの Master of Business AdministrationMBA / 経営学修士)を学ぶ学生や、弁護士、検察官、裁判官といった法曹になるための法科大学院 / Law school の学生が、来日する事があります。

簡単に言えば「単位も取れる修学旅行」で、滞在期間は1~2週間程度です。

MBAを学ぶグループの場合、国会以外にもクルマ等の工場見学をする事もあります。

彼らは春先に来ることが多く、今年 2025年も大学院1年生のグループが、アメリカから35名程度 来日。ミーハングループは、視察や見学先の申込書等の手配や、視察同行通訳を行いました。

本案件の視察同行通訳は、弊社では アラン・エバンス が担当。基本は逐次通訳(日英/英日)ですが、音声を一斉伝達できる無線システム(パナガイド等)を使って、同時通訳的に対応することもあります。

視察グループをアテンド、施設内等を説明する人の横に立って、通訳をする感じです。

専門用語も多数出てくる視察/見学ですので気は抜けませんが、想定外の出来事が起きる可能性は低いので、前準備や下調べをキチンとしておけば、安心して臨める通訳案件でもあります。

通訳者が経験したエピソード
建設現場での通訳

ビルや工場等の建設の様子や進捗状況を伺いに、施主(建設発注者)や施工を請け負った会社の偉い人、施工資金を出している投資家等が、建設現場に来る際の通訳を何度かやった事があります。

建築途中ですから、外壁が無かったり、窓にガラスが入ってなかったり、階段も簡易的にしか出来ていない場合もあります。

視察する建物が高層階建築だったりすることもありますが、低層階だけを見て終了と言うことは少なく、だいたい全てを見て回ります。

そんな、吹きさらしで足元も不安定、安全性の確保が難しい場所にも、当然 通訳者は同行して通訳をするんですが、クライアントから「ちょっとカメラを持っててもらえる?」等とお願いされる事も...。

若い頃は「これも経験だ」と思って、なんでもハイハイ言っていましたが、手すりもない様な階段だったり、強い風が吹き込む建設途中の施設内で、逐次通訳に必要なメモ帳や資料を手にしてる上に、カメラも持たされる訳で...。ホントに恐怖で震え上がりました。

今だったらお願いされても即NOです。怖くて通訳に集中できないなんてなったら、本末転倒ですからね。

右田アンドリュー・ミーハン

通訳スキル ランク

さて、視察に同行する通訳の場合でも、先ほど紹介した前準備や下調べをキチンと行っておけば、基本的に安心なレベルから、想定外の出来事が起きる可能性の高い通訳案件まで、求められる通訳レベルは様々です。

通訳者のスキルによるランク付けとしては、海外だと大きく分けて senior interpreterjunior interpreter の2種類になります。

Senior interpreter は、経験豊富で高度な通訳スキルを持つ通訳者の事を指し、専門用語に熟知しており対応分野も広く、通訳チームの統括などリーダー的な役割を担う事も出来る人を意味し、同時通訳に対応可能なのも senior interpreter になります。

Junior interpreter は、経験の浅い通訳者のことを指し、時には「見習い中」の人も含まれます。

また、専門的な知識や経験は浅いものの、特定の分野やイベントに特化した通訳を担当する事が可能な通訳者を、junior interpreter と呼ぶ場合もあります。

因みに、弊社代表で通訳者の右田アンドリュー・ミーハンは senior interpreter , アラン・エバンスは junior interpreter となります。

日本の場合

日本の場合、通訳者のスキルランクは細かく設定されているケースが多いですが、その呼び方やランク付けは会社によっても、微妙に異なります。

C, B, A, S (Sが最高ランク)としている会社もありますし、数字でランク付けしている会社もあります。

因みに ビジネス通訳検定(Test of Business Interpreting Skills・略してTOBIS)では、通訳者のスキル ランクを以下基準にて、1~4級に分類しています。

TOBIS ビジネス通訳検定 Website 判定基準 よりキャプチャ

TOBIS ビジネス通訳検定では、4級~2級までが逐次通訳対応可能。2級取得者から同時通訳の検定に参加でき、1級取得者は同時通訳も対応可能となります。

通訳スクールの本科を落ちずに卒業した人であれば、TOBISの検定だと3級くらいの実力になると思われます。

ビジネス通訳検定
司法通訳士認定試験

TOBIS ビジネス通訳検定は、CAIS(NPO法人 通訳技能向上センター)が運営している「ビジネス通訳のスキル」を客観的に評価する検定となり、年2回・7月と12月に試験が行われています。試験内容等詳細については、以下サイトよりご確認下さい。

TOBIS ビジネス通訳検定 Website
https://www.cais.or.jp/tobis/

司法通訳に特化した通訳試験としては、一般社団法人 日本司法通訳士連合会 が運営する「司法通訳士認定試験」があり、コチラは年1回 試験が開催されています。

※2025年は10月12日・13日に開催。ただし1次募集は、2025年7月22日までの消印・7月24日必着となっています。詳細は以下サイトにてご確認下さいませ。

一般社団法人 日本司法通訳士連合会
Website

http://japanlawinterpreter.org/

外国語を⽤いて海外からの旅行者等に付き添い、報酬を得て、旅⾏案内をする通訳の場合、国家試験に合格した方のみが「全国通訳案内士」と言う名称の元、活動する事が可能です。

特定の地域内において、報酬を得て、海外からの観光客等の旅行案内をする通訳の場合は、各自治体が行う研修を受講し、登録を受けた方々が「地域通訳案内士」と名乗れます。

通訳案内士の資格を持たない方でも、外国語を⽤いて海外からの旅行者等に付き添い、報酬を得て、旅⾏に関する案内をする事は出来ますが、全国通訳案内士や地域通訳案内士、又はこれに類似する名称を使用することは出来ません。

詳しくは、国土交通省・観光庁 Website 通訳ガイド制度 のページにてご確認下さい。

国土交通省・観光庁 Website
通訳ガイド制度

https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/tsuyaku_guide/index.html

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