2021年1月20日正午(日本時間1月21日午前2時)開催された大統領就任式を経て、第46代アメリカ合衆国大統領にジョー・バイデン氏が就任しました。
今回のブログでは、バイデン大統領就任後、変更となった言葉の表記に関する記事を中心に、時代と共に変わる言葉の表現について、少し紹介したいと思います。
また先日海外メディアでも大々的に報道された、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会・森喜朗会長の発言の訳についても、簡単にご紹介したいと思います。
外国人 Alien
日本で「Alien(エイリアン)」と言われた場合、多くの人が想像するのは、やはり映画「Alien」だと思います。
Alienと言う言葉は、本来「性質の異なる」や「外国人」と言った意味があり、そこから「地球以外の生命体」と言う意味で、Alien=宇宙人と言う事になったのですが、アメリカ合衆国法典では、Alien は「米国の市民権も国籍も持たない人物」と定義されています。
2018年、当時の司法長官だったジェフ・セッションズ氏は省内に送った電子メールの中で合衆国法典を引き合いに出し、米国内の不法滞在者を「illegal alien」と呼ぶよう検察に指示していた。
トランプ前大統領は野放しの不法移民を危険な存在と見なす演説の中で、頻繁に「alien」を使用した。メキシコとの国境沿いで先週行った演説では、この単語を少なくとも5回使っていた。
CNN.co.jp 【バイデン米政権、「エイリアン」一掃へ 法律文に浸透、トランプ氏は好んで使用】より
https://www.cnn.co.jp/usa/35165438.html
同記事では、バイデン大統領が提案した移民法の改正案では「Alien」の単語が法律文から一掃され、代わって「Non-citizen(非・市民)」という単語が使われると紹介しています。
外国人 Foreigner
Alien の他に、外国人を表す英語表現では「Foreigner」を思い出す人も多いのではないでしょうか? しかし、実は「Foreigner」にも「よそ者」と言ったニュアンスもあり、余り感じの良い表現とは言えません。
日本でも特に外交案件(官公庁案件)の場合は、Non-Japanese (非・日本人) と言うのが一般的になってきています。
また a person / people from abroad, guest(s) in the country などと言う事もあります。
観光客の場合はTourist や Visitor 、海外からの観光客と言う場合は、国が複数の場合は Tourists / Visitors from overseas countries や Overseas Tourists / Visitors 。
決まった国やエリアからの来訪者が多い場合は Tourists / Visitors from (国名やエリア名:例 Asia )と表現する事も多いです。
日本では、日本人以外の事を「外国人」と表現する事も多々ありますが、コレを短くして「外人」と言う場合も、以前は多かった様に思います。
しかし、この「外人」も「よそ者」的なニュアンスが強く感じられる表現の為、最近では目にする事が少なくなりました。
工数
man hours
IT業務や製造業等で、仕事を仕上げるまでに要する工程の数を「工数」と言ったりする場合があります。
この「工数」を表す単位として「人月」や「人日」「人時間」などが使われます。例えば「工数3人月」の場合は、1人が作業をしたら3ヶ月かかるような作業量の事を意味します。
この工数の単位を英語では、以前は man hours と表現していました。しかし最近では差別のない表現として labor hours, person hours と言う事が多いです。
この様に時代や状況と共に言葉の表現と言うのは変わります。最新の言葉の表現をチェックするには、新聞系や大手ニュース・メディアの表現を、頻繁にチェックするのが良いかと思います。
森喜朗会長の発言
さて、新聞系や大手ニュース・メディアと言えば、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会 森喜朗会長による、2月3日・日本オリンピック委員会(JOC)会合での「女性蔑視発言」に端を発した騒動は、海外メディアでも大きく取り上げられました。
- CNN
Top Tokyo Olympics organizing official apologizes for sexist remarks that women talk too much in meetings
https://edition.cnn.com/2021/02/04/sport/yoshiro-mori-comments-intl-hnk/index.html - REUTERS
Tokyo 2020 chief Mori makes sexist remarks at Games meeting-newspaper
https://www.reuters.com/article/olympics-2020-mori-int-idUSKBN2A325Z - The New York Times
Tokyo Olympics Chief Apologizes for Remarks Demeaning Women
https://www.nytimes.com/2021/02/03/sports/olympics/tokyo-olympics-yoshiro-mori.html - The Washington Post
Tokyo Olympics chief says women talk too much at meetings, calls it ‘annoying’
https://www.washingtonpost.com/sports/2021/02/03/yoshiro-mori-tokyo-olympics-sexist-comments/ - Japan Times
Tokyo Olympic head Yoshiro Mori says he won't resign despite uproar over sexist remark
https://www.japantimes.co.jp/news/2021/02/04/national/yoshiro-mori-women-comment/
英語で「わきまえる」は?
森喜朗会長による女性蔑視発言の中には、以下の様な表現がありました。
私どもの組織委員会にも女性は7人くらいおられる。みんなわきまえておられて、みんな競技団体のご出身で、国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりですから、お話も的を射たご発信をされて非常にわれわれも役立っている。
共同通信
https://this.kiji.is/729688736284590080?c=39546741839462401
この「わきまえおられて」は、英語ではどの様に訳されたのでしょうか?
REUTERS や BBC の記事では以下の様な表現が用いられています。
We have about seven women at the organising committee but everyone understands their place.
また The New York Times では以下の様に訳しています。
Those women, he suggested, are able to speak at a length that meets his standards for brevity.
つまり、REUTERS や BBC では「組織委員会には約7人の女性がいますが、誰もが自分の立場を理解しています」と訳し、The New York Timesは「わきまえている」事とはナニか?=「それらの女性は、彼の基準を満たす簡潔な長さで話すことができると彼は示唆した」としています。
立場を理解するとは?
「わきまえる」とは「物事の道理をよく知っている / 心得ている」と言う意味です。
それを踏まえて REUTERS や BBC では "everyone understands their place" つまり「立場を理解している」と訳したのでしょう。
また、この "Understands their place" には、いわゆる上から目線的なニュアンスも含まれています。
つまり「立場を理解する=Understands their place」には、自分の置かれた立場や状況、及び「適切な対応が求められている事を理解する(理解している)」ことも意味します。
今回の森喜朗会長の発言の踏まえると、英訳された "We have about seven women at the organising committee but everyone understands their place.” には、「我々の組織の7人の女性は、全員が立場を理解し、的確かつ適切な長さで発言をされるので、会議が長引く事はありません」と言う意味が含まれています。
参考リンク
厚切りジェイソン 森会長の「わきまえる」発言は英語では「立場をしれという…」
https://www.daily.co.jp/gossip/2021/02/05/0014057855.shtml
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