北米3か国16都市にて、2026年7月19日まで開催されるFIFA World Cup 26。ノルウェー代表の応援方法で、今大会で大きな注目を集めている Viking Row / ヴァイキング・ロウ については、前回の記事にてご紹介しましたが、今回はヴァイキングの言語 古ノルド語が、英語に与えた影響について、少しご紹介したいと思います。(kayによるPixabayからの画像)
ノルウェー サッカー代表
ユニフォームの文字
FIFA World Cup 26 にて7月6日 朝5時(日本時間)からブラジルと対戦したノルウェー代表は、2対1で勝利を収め、会場であるニューヨーク・ニュージャージースタジアムに詰めかけたサポーターたちと、喜びに満ちた Viking Row / ヴァイキング・ロウ を披露しました。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、サッカーノルウェー代表のユニフォームは、古代北欧のルーン文字をベースにした独特なフォントにて背番号と選手名が書かれています。
ノルウェー代表ユニ「背番号わかりにくい」 “古代文字フォント”が話題「かわいい」(2026.7/1 Yahoo Japan News / Football Zone)
デジタル大辞泉 / コトバンクより
ルーン‐もじ【ルーン文字】
《rune》古代ゲルマン人、特にスカンジナビア人とアングロサクソン族の間で用いられた表音文字。主として3世紀以後の刻文にみられ、北欧の一部では17世紀ごろまで用いられた。https://kotobank.jp/word/%E3%82%8B%E3%83%BC%E3%82%93%E6%96%87%E5%AD%97-3175823
長枝ルーン / Long twig runes
Peehyoro Acala, Public domain, via Wikimedia Commons
この様な文字を、サッカー・ノルウェー代表のユニフォーム以外でも見た様な...と思われた方は鋭いです。
実は、様々な機器をスマホやパソコンにワイヤレスで繋げる近距離無線通信規格 Bluetooth / ブルートゥースのロゴがルーン文字になります。
ルーン文字の
プレゼント
この写真は、ミーハングループ 日英翻訳担当 アジア太平洋チームリーダー アラン・エバンス / Alan Evans が提供してくれました。
アランは若い頃 ルーン文字に興味があり、それを知った彼のご両親が、このルーン文字のセットをプレゼントしてくれたそうです。素敵ですね。
ヴァイキングの言語
古ノルド語
ルーン文字の説明には「表音文字」と書かれていました。
デジタル大辞泉 /コトバンクより
ひょうおん‐もじ〔ヘウオン‐〕
【表音文字】
文字の分類の一。一つ一つの字が意味をもたず、音のみを表す文字。かな・ローマ字・梵字など。音節文字と音素文字とがある。音字。音標文字。→表意文字https://kotobank.jp/word/%E8%A1%A8%E9%9F%B3%E6%96%87%E5%AD%97-121207
つまりルーンは「文字」そのものを指し、言語ではありません。ではヴァイキングが話していた言語は、なんでしょうか?
それは「古ノルド語(こノルドご /Old Norse ) 」と言われています。
古ノルド語について
Polytranslator
古ノルド語は、約7世紀から15世紀にかけてスカンジナビアとその海外植民地の住民によって話されていた北ゲルマン語です。これはバイキングの言語であり、アイスランド、グリーンランド、フェロー諸島、イギリス諸島やフランスの一部を含む広大な地域に広がりました。古ノルド語は主にルーン文字で書かれ、後にラテン文字に移行しました。この言語は、アイスランドのサガ、詩的エッダ、散文エッダなどの豊かな文学伝統に保存されており、これらはノルド神話の主要な資料を形成しています。古ノルド語は現代スカンジナビア諸語の祖先であり、イングランドにおけるバイキングの定住を通じて英語の語彙に大きく貢献しました。特に、「空」(sky)、「卵」(egg)、「窓」(window)、「彼ら」(they)などの一般的な英単語は古ノルド語に由来しています。
上記説明が掲載されている、希少言語・古代言語・先住民言語を専門とする総合翻訳プラットフォーム Polytranslator は、古ノルド語をアイスランド語、ファロー語、デンマーク語や、そのほか230以上の言語に翻訳可能とのこと。
「古ノルド語のよく使うフレーズ」や「英語–古ノルド語 辞典」などもあるので、ご興味のある方はチェック下さいませ。
Polytranslator 古ノルド語翻訳機
https://www.polytranslator.com/ja/old-norse/
Polytranslator
https://www.polytranslator.com/ja/
英語の Row と
ノルウェー語の RO
Polytranslator の説明にもありましたが、古ノルド語は、ヴァイキングがイングランドに定住したことにより、英語の語彙に大きく貢献。古ノルド語に由来する様々な英単語があるとのこと。
前回のブログ記事 Viking Row ~サッカーW杯から学ぶ英語表現~では、サッカー・ノルウェー代表サポーターが Viking Row で船を漕ぐ動作をする時の掛け声は、ノルウェー語で RO!「(船を)漕ぐ 」と言う意味を持つ動詞 å ro の命令形とご紹介しました。
「RO!」って何?ノルウェー全土が熱狂する謎の掛け声「バイキング・ロウ」が世界を席巻するまで(6/25 Yahoo Japan / Yahoo エキスパート 鐙麻樹 北欧ジャーナリスト, ノルウェー国際報道協会会員, 写真家)
このノルウェー語の RO!=(船を)漕ぐ と、Viking Row にも使われている 英語の Row = オールを使って船またはボートを漕ぐこと は非常に似ていると思いませんか?
語源辞典 Online Etymology Dictionary で調べたところ、以下説明がありました。
row(v.)
propel (a vessel) with oars or paddles, Middle English rouen (mid-14c.), from Old English rowan (intrans.) "go by water, row" (class VII strong verb; past tense reow, past participle rowen), from Proto-Germanic *ro- (source also of Old Norse roa, Dutch roeien, West Frisian roeije, Middle High German rüejen), from PIE root *ere- "to row."
オールやパドルで(船を)進ませる, 中古英語 rouen(14世紀中頃)、古英語 rowan(自動詞)「水上を進む、漕ぐ」(第VII強変化動詞;過去形 reow、過去分詞 rowen)、原始ゲルマン語 *ro-(古ノルド語 roa、オランダ語 roeien、西フリジア語 roeije、中高ドイツ語 rüejenも同源)、印欧語族の語根 *ere-「漕ぐ」から。
古ノルド語 が
英語に与えた影響
古ノルド語 が英語に与えた影響ついては、本当に範囲が広く、かつ専門的な話になるので、このブログで簡単に説明できるものではありません。
しかし、慶應義塾大学文学部教授で英語学・社会言語学がご専門の井上逸兵氏と、同じく慶應義塾大学文学部教授で英語学・英語史がご専門の堀田隆一氏による YouTubeチャンネル いのほた言語学チャンネル では、この様なトピック等について、詳しく説明されています。
また、堀田隆一教授はご自身のブログ hellog~英語史ブログでも古ノルド語 が英語に与えた影響について紹介しているので、更に詳しく、または文字で読みたいと言う方は、ぜひチェックしてみて下さいませ。
#4820. 古ノルド語は英語史上もっとも重要な言語
https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2022-07-08-1.html
hellog~英語史ブログ / old_norse
https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/cat_old_norse.html
ノルウェー 対
イングランド
さて FIFA World Cup 26 準々決勝、ノルウェー代表は7月12日 アメリカ・マイアミスタジアムにて、イングランドと対戦します。
歴史等に興味のある人達は、イングランドの歴史で良く知られるヴァイキングのリンディスファーン修道院襲撃 Viking Raid on Lindisfarne 等を例に、このW杯の対戦に期待する投稿なども、ネット上では見受けられました。
さらには、878年 エディントンの戦い Battle of Edingtonでヴァイキングを撃退した英雄 アルフレッド大王の遺骨にまつわる話を、英国の新聞 The Sun がW杯 準々決勝の試合に絡めて紹介しています。
ALFRED THE GREAT OMEN Lost remains of king who beat the Vikings tracked to car park in timely omen Three Lions will beat Norway at World Cup ( 7 Jul 2026 The Sun)
イングランド代表によき兆候? バイキング撃破王の遺骨が歴史的発見か…英歴史家「W杯優勝の兆しかも」(26/7/8 ゲキサカ)
11日の北中米ワールドカップ準々決勝ノルウェー戦を前に、イギリス国内で「吉兆」とも受け取れる歴史ロマンが話題となっている。歴史家グラハム・フィリップス氏が、バイキング軍を撃退してイングランド統一の礎を築いたアルフレッド大王の遺骨が英ウィンチェスター市内の駐車場地下に眠っている可能性を突き止めたと主張した。英『ザ・サン』が伝えている。
https://web.gekisaka.jp/news/worldcup/detail/?455089-455089-fl
歴史的にも関係性が深いノルウェーとイングランドの戦い。7月12日に行われるFIFA World Cup 26 準々決勝では、どちらが勝つのか?
試合は試合として楽しみつつ、歴史的背景や、言語的な両国の関係性についても知っていると、試合結果だけではない、広がりのある雑談が楽しめる...かも知れませんね。






