関東も梅雨入りしたと思ったら、いきなり真夏の様な暑さと晴天が続いています。その上「梅雨前線が消滅」などと言う報道も...。そこで今回の記事では「梅雨」に関連した言葉や、英語表現等をご紹介したいと思います。(PexelsによるPixabayからの画像)
「梅雨」について
地域によって時期は若干異なりますが、5月~7月にかけて雨が多く降る時期の事を、日本では「梅雨 / ばいう・つゆ」と呼んでいます。
なぜ、この雨期の事を「梅雨」と呼ぶのでしょうか?
tenki.jp より
梅雨の漢字はどうして「梅」と「雨」?意外な理由を解説(滝沢睦・2021年06月08日)
梅雨は北海道を除く日本列島と、中国の長江下流域~朝鮮半島にかけて見られる雨期のことです。梅雨という言葉も、もともとは中国が語源とされていますが、その由来には諸説あります。1. 梅の実が熟す時期に降る雨だから
梅の花の見頃は2月~3月上旬くらいですが、梅の実が熟すのは初夏にあたる5~6月頃です。中国の長江下流域では、梅の実が熟す頃に降る雨であることから、「梅」の「雨」と書いて「梅雨(ばいう)」と呼んだという説があります。2. 黴(かび)が生えやすい時期に降る雨だから
5~6月は気温が上昇し始めるうえ、雨が降って湿度が高くなることから、カビが生えやすい時期でもあります。黴(かび)は音読みで「バイ」と読むため、この時期に降る雨を「黴雨(ばいう)」と呼んでいましたが、さすがに字面が良くないことから、同じ「バイ」と読む「梅」をあてて「梅雨」と読むようになったという説があります。以上のように、中国では「梅雨」を「ばいう」と呼んでいますが、日本では江戸時代に伝わった「梅雨」という言葉に「つゆ」という読みを当てています。
なぜ「梅雨 / ばいう」を「つゆ」と呼ぶのかについても諸説ある様で、記事 梅雨の漢字はどうして「梅」と「雨」?意外な理由を解説 では、「梅雨をつゆと呼ぶ理由」や「地域による梅雨の呼び方の違い」「梅雨の別名」等も紹介しています。
因みに、中国語では「梅雨」の事を 梅雨 méiyǔ,黄梅雨 huángméiyǔ(日中辞典 第3版 / コトバンク)と表現する様です。
梅雨前線
2025年6月17日 この時期では大変珍しい天気予報図になっていると、気象予報士等がソーシャルメディアやブログ等に投稿、ニュースの気象コーナーでも紹介されました。
- 異例、6月中旬に梅雨前線が消滅へ、わずか1%の確率(2025年6月17日 杉江勇次・気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属 Yahoo Japan エキスパート)
- 梅雨前線が「一時消滅」 高崎37.7℃、八王子36.8℃…「猛暑日」関東で今年初、18日も厳しい暑さ(2025年6月17日 東京新聞)
- 梅雨前線「一時消滅」で暑さに拍車 関東・東海・近畿中心に猛暑日に 名古屋は最高気温37℃予想 「6月とは思えない暑さ」「梅雨はどこに?」(2025年6月18日 TBS NEWS DIG TBSテレビ)
大変珍しい現象との事ですが、一旦消滅した「梅雨前線」の復活はあるのか否か。気泡予報士の方々も頭を悩ませている様です。
前線とは?(気象)
今回、一時的とは言え消滅してしまった「梅雨前線」。
この「前線」と言う言葉ですが、梅雨時期以外でも「寒冷前線」や「温暖前線」「停滞前線」等にて、よく耳にする表現だと思います。
では「前線」とは、どの様な気象状態・状況を指している言葉なのでしょうか?
学生時代に学んだような...でもハッキリとは... と言う方もご安心ください。Weathernews website の「1分でわかる天気のコトバ」より「前線」の解説を引用にてご紹介します。
暖かい空気と冷たい空気の境目
前線は天気予報では、高気圧、低気圧と同じくらいよく使われるコトバです。前線も低気圧と同様に雨を降らせます。では、前線とはどんな存在なんでしょうか?
地球をとりまく空気は、場所によって様々な性格を持っていて、この性格の違う暖かい空気と冷たい空気の境目のことを前線と呼んでいるんですね。
「前線」については、イギリスの気象庁 Met Office (UKMO) のWebsiteでも Weather fronts と言うページで紹介しています。
From Met Office website
Weather fronts mark the boundary or transition zone between two air masses and have an important impact upon the weather.https://weather.metoffice.gov.uk/learn-about/weather/atmosphere/weather-fronts
つまり梅雨前線 を、直訳的に英語に訳すと Baiu rain front となりますが、梅雨 / Baiu が何を意味するか分からない場合もある為 Seasonal rain front と訳す事が多い様です。
しかし「前線 = front 」と言う表現は気象用語であり、日本の気象表現や天気予報の言葉に理解がある人ではないと、英語に訳してもピンと来ない場合もあります。
通訳者からのTips
「前線」ですが、アメリカ等だと大雨や台風が接近した場合等にしかニュースで使われない表現です。台風に関連した「前線」の表現は、例えば a storm front is approaching と言った感じです。
日本の天気予報番組は細かく説明しますから、日本人も「前線」と言う表現には慣れていますが、他国の場合、そこまで細かく説明しない、または説明の方法が異なる場合もあるので seasonal rain front と言っても、伝わらない場合もあります。
「梅雨前線」を。その様な人たちに分かりやすく説明するとしたら a storm front is approaching in June 等でしょうか。
日本では文化的な背景等もある為、季節に関連した天候等を表す表現 や 季語などが沢山ありますが、その様な文化的背景を共有しない人にとっては、詳細な季節の話や天気の話をしても余りピンと来ないケースも多々あります。
右田アンドリュー・ミーハン参考リンク:なんと400語以上あるとも言われる情緒あふれる日本語の「雨の呼び名」を一挙ご紹介(2021年7月3日 Japaaan編集部)
気温の急上昇 を英語で
日本のニュース等を17言語で放送・配信している NHK WORLD-JAPAN の記事では、この梅雨時期の晴天続きについて「気温上昇」を中心に報道、熱中症に対する警戒を促しています。
Mercury soars across Japan, heatstroke warnings issued(June 17, 2025 NHK WORLD)
本記事のタイトルにある Mercury soars ですが、単純に訳せば「水銀の上昇」となります。※Mercury は彗星も意味しますが、この場合は水銀を意味します。
最近は、デジタルで表示する体温計や気温計が一般的なので、見たことがない・知らない人も居るかもしれませんが、以前は気温や体温、または気圧などは水銀を使った計測器で計ることが一般的でした。
その為、計測器に設置された水銀柱が示す温度や気圧等も Mercury を使って表現される場合もあります。
つまり 本記事のタイトル Mercury soars across Japan, heatstroke warnings issued は、日本各地で気温が急上昇、熱中症注意報発令 と言った意味になります。
Mercury is soaring は、気象予報士、天気予報のキャスター、あるいは学校の理科の先生等が使いそうな表現ですが、日常でも良く使われる英語表現でもあります。
※一般的な温度計や体温計は thermometer と英語では表現されます。
👀 Mabel Amber, who will one dayによるPixabayからの画像
soaring / rising の違い
水銀柱の上昇=計測している温度や気圧の上昇、つまり気温の上昇を表す場合 Mercury soars または mercury is soaring 等とも表現しますが、the mercury is rising と言う場合もあります。
soars/soaring と rise/rising の違いは何でしょう? soars/soaring は、どんどん上昇 / 急上昇といったイメージですが、rise/rising は徐々に上昇 / 段階的に上昇するイメージになります。
つまり、今回の様に「気温が急上昇」と言った場合は soars/soaring を使って表現されますが、季節の移り変わりに伴い、段階的に気温が上がる場合は rise/rising を使って表す事が多いです。アラン・エバンス(ミーハングループ:アジア太平洋チームリーダー・日本語>英語 翻訳担当)
雨期や雨に関連する
英語表現
英語では雨期を表す場合、一般的には rainy season や wet season 等を使います。
またアジア地域(インドや東南アジア)の雨期を表す場合は monsoon season 、さらに 洪水、氾濫、水害が発生しやすい地域や国では flood season 等と呼ぶ場合もあります。
これを踏まえて、日本の「梅雨」を英語で説明するなら、例えば Tsuyu is the rainy season or wet season in Japan, which runs from around June to July. と言うことが出来ます。
Rainy Season (Tsuyu)(August 3, 2024 japan-guide.com)
https://www.japan-guide.com/e/e2277.html
因みにアメリカの場合、大雨を伴う台風は Typhoon ではなく heavy storm, hurricane と表現、竜巻を伴う場合は tornado と表現される事が多く、オーストラリアでは台風を cyclone と表現する事も多いです。
雨や雨期に関わらず、気象や天気に関わる一般的な英語表現は国や地域によって異なる場合もありますので、それを踏まえて学ぶことも大切です。