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Britain's Got Talent で とにかく明るい安村 が成功した理由 ~英語表現 + ローカライズ~

「安心してください!穿いてますよ!」でお馴染みの、日本のお笑いタレント「とにかく明るい安村」さんが、イギリスのテレビ番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」で大喝采を受けたことは、ご存知でしょうか?この件について英語表現 +「ローカライズ」の視点から、今回は少しご紹介したいと思います。ktphotographyによるPixabayからの画像)

ブリテンズ・
ゴット・タレント
Britain's Got Talent

イギリスで放送されている公開オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント / Britain's Got TalentBGT」は、皆さんご存知でしょうか?

「アメリカズ・ゴット・タレント / America's Got Talent」を始め、世界194の地域で放送されている人気オーディション番組「Got Talent」の1つになります。

因みに、最近では日本でも「Japan’s Got Talent」がABEMAでスタートしています

「ブリテンズ・ゴット・タレント」は、過去に スーザン・ボイルさんが準優勝を果たしたことでも話題になりました。

2007年に放送が開始された本番組は、2023年放送中の現在、シリーズ16を数えています。優勝者は、なんと!王室の前で公演も行えるのが「ブリテンズ・ゴット・タレント」の凄いところです。

とにかく明るい安村
at ゴット・タレント

2023年4月、日本のお笑いタレント「とにかく明るい安村」さんが「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出演。大きな話題となりました。

兎にも角にも、まずは動画を見てみましょう。

とにかく明るい安村 =Tonikaku と言う事で「トニー」と呼ばれてますね。

日本でも流行ったお決まりのセリフ「安心してください。穿いてますよ!」は、英語では Don't worry ! I'm wearing ! となっています。

ところが、ここが日本語と英語の違うところ。日本語では「安心してください。(パンツを)穿いていますよ!」と、「何を穿いているのか」省いて言っても、あまり不自然ではありません。

逆に「パンツを穿いている」とハッキリと言わない事が、笑いを生み出している部分もあります。

しかし 英語の場合 Don't worry ! I'm wearing ! つまり「何を穿いているか」を言わないで終わるのは、不自然な表現になります。

I'm wearing 〇〇. 「何を穿いているか」が、英語で「穿いてますよ」と言う為には必要なんですね。

ですので Don't worry ! I'm wearing... で終わらせると、見ている側には「私が穿いているのは~?」と言う問い掛けに聞こえるので、審査員や観客は大きな声で Pants ! と答えているのです。

Twitterにも、この状況を説明しているTweetがありました。

https://twitter.com/KoalaEnglish180/status/1656560101472497669?s=20

もし、安村さんが英語的に正しい Don't worry ! I'm wearing pants ! と言っていたら、ここまで盛り上がったかどうか...

ですので、この「コール&レスポンス」状態を生みだした Don't worry ! I'm wearing... は、結果的に正しかったと言えるでしょう。

因みに安村さんご自身は、パフォーマンス中「なぜ、審査員や観客が Pants! と叫んでいるのか」わからなかったと、日本のテレビでも話されていました。

英国人にもわかりやすい
テーマや曲の選択

サイモン・コーウェルを始めとした審査員にも、大受けだった「とにかく明るい安村」さんのパフォーマンス。

大受けした理由の一つに「イギリス人は裸(または裸芸?)が大好き!」なんて事が、インターネットではささやかれていますが、それはさて置き...

安村さんのパフォーマンスが英国でウケたのには、スピーディーでテンポ感が良いなど 様々な理由があると思いますが、一番は「裸じゃないのに裸に見える」と言うアイディア ではないでしょうか?

こんな事、今まで誰も考えませんでしたし、見たこともありませんからね。日本でも流行したこのアイディアは、英国でも大受けでした。

このほかにも「パッと見でわかりやすい」と言うのもあるでしょう。詳しく言葉で説明しなくても I'm wearing pants, but I can pause naked. で充分伝わります。

サイモン・コーウェルは「何を言ってるんだコイツは?!」と言う表情のリアクションをしていましたが(苦笑)

Naked / Nude
そして Nekkid

因みに、裸を表す言葉には Naked の他に Nude があります。

from Cambridge dictionary

naked adjective
not covered by clothes:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/naked

nude adjective
not wearing any clothes:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/nude

どちらも似た様な意味ですが nude は「服を何も着ていない」と言う意味です。

安村さんのパフォーマンスの場合「服に覆われていない」と言う意味では naked の方がピンときますし、何より nude よりも naked の方が言葉として「衝撃的」な印象を与えるので、良かったんだと思います。

また最近はネットスラング的に naked nekkid と書いたり、使ったりする場合もあります。

意味としては基本的に naked と同じく「裸」なんですが、 nekkid は 特に若い人が「性的な」ことを強調する場合に使用する様です。

参考リンク:https://slang.net/meaning/nekkid

この ネットスラングの nekkid の存在も踏まえて、「裸」を naked にすると言った「言葉の選び方」も、多くの世代にウケる為には必要です。(安村さんが、そこまで考えて言ったかどうかは不明ですが...)

ローカライズされた
テーマ+BGM

「サッカー選手」「競馬の騎手」「ジェームス・ボンド(007)」が裸に見えるポーズと言うテーマも、英国の観客+視聴者にわかりやすく、会場を沸かせた大きな理由の一つだと思います。

最後に Spice GirlsWannabe をBGMにパフォーマンスをしたのも良かったですね。

英国出身の Spice Girls は世界的にも非常に有名ですし、彼女達のデビュー曲で 1996年にリリースした「 Wannabe 」は、当時UKチャートで7週に渡り1位を獲得しています。

そして、なんと!この「とにかく明るい安村」さんの「ブリテンズ・ゴット・タレント」のパフォーマンスによる影響で、現在 再ブームが起きているとか。

英人気番組の影響でスパイス・ガールズ「Wannabe」が急上昇(Universal music)

この様に「コンテンツ」や「サービス」の意味や意図=本質は変えず、その国や場所で馴染みのあるシチュエーションや名前 等=細部を変える事により、異なる文化の人に分りやすく伝える事を「ローカライズ / Localize 」と言います。

from Cambridge dictionary
localize verb

BUSINESS specialized
to make a product or service more suitable for a particular area:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/localize

サービスやコンテンツ等を、提供する国や地域の文化や習慣、価値観にあわせてアレンジする事を意味する「ローカライズ / Localize 」。

アメリカ等で有名な巻寿司、カニを使った「スパイダー・ロール」や、アボカドを使った「カリフォルニア・ロール」等もローカライズの一種と言えると思います。

さて「とにかく明るい安村」さんが「ブリテンズ・ゴット・タレント」で優勝する為には、この先「準決勝」そして「決勝」で勝ち進まなければなりません。

安村さんが「準決勝」や「決勝」で、どの様なパフォーマンスをするのか?どんなローカライズで楽しませてくれのか? まだまだ目が離せませんね。

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