2021年10月7日 ノーベル文学賞が発表されました。今年はアフリカ・タンザニア出身 でイギリスで活動する アブドゥルラザク・グルナ氏が受賞しました。
今回のブログでは、このノーベル文学賞の話題となると注目を集める作家 村上春樹氏の作品を20年以上にわたり翻訳している、デンマーク⼈のメッテ・ホルムを追ったドキュメンタリー映画「ドリーミング村上春樹」をご紹介したいと思います。
2021年
ノーベル文学賞
2021年10月7日に発表されたノーベル文学賞。今年はアフリカ・タンザニア出身で、イギリスで活動する作家 アブドゥルラザク・グルナ氏が受賞されました。
NHKの取材に対し、アフリカ文学を研究している法政大学国際文化学部の粟飯原文子教授は「アフリカの文学作品は日本ではまだまだ知名度は低いのが現状で、今回の受賞をきっかけにアフリカ文学の翻訳が進み、どこか遠くて分かりづらいという先入観がなくなり、日本の読者にとって距離が縮まるきっかけになるのではないか」と話しています。
記事:ノーベル文学賞にグルナ氏 タンザニア生まれ イギリスで活動(NHKニュース)より
ノーベル文学賞と言えば...
毎年、ノーベル文学賞の話題となると注目を集めるのが作家 村上春樹氏です。
村上氏は2006年にノーベル文学賞の指標の1つと言われるチェコの文学賞「フランツ・カフカ賞」を受賞してから16年、受賞の候補に名前を挙げ続けられており、今年のノーベル文学賞受賞者を予想する英ブックメーカーの10月6日夜時点のオッズでも、単独首位だったとの事。
今年も受賞ならずと残念な結果にはなりましたが、それでも村上春樹氏の作品が世界中の人々に人気な事に変わりありません。
村上氏もスコット・フィッツジェラルドやトルーマン・カポーティ等、多数著名作家の英語小説や作品の日本語 翻訳を手掛けられていますが、村上氏自身の作品も様々な言語に翻訳され海外で出版されています。
今回ご紹介するのは、その村上春樹氏の作品を20年以上に渡りデンマーク語に翻訳してきた、メッテ・ホルム氏のドキュメンタリー映画「ドリーミング村上春樹」です。
映画
ドリーミング村上春樹
「ドリーミング村上春樹」は2019年に日本でも公開されたドキュメンタリー映画です。
村上春樹作品の翻訳家 メッテ・ホルム氏は、1995 年『ノルウェイの森』と出会って以来、20年以上 村上氏の作品をデンマーク語に翻訳してきたとの事。
これまで世界50⾔語以上に翻訳されてきた村上氏の作品は、そのほとんどが英語から他言語に翻訳されており、メッテ氏の様に⽇本語から直接 英語以外の他言語に翻訳することは珍しいそうです。
映画では2016年 村上春樹氏がアンデルセン⽂学賞を受賞し、デンマーク王⽴図書館でメッテ氏と対談する瞬間や、メッテ氏が村上春樹のデビュー⼩説『⾵の歌を聴け』を翻訳する貴重な姿を捉えています。
あらすじ
村上春樹作品を20年以上にわたり翻訳している、デンマーク⼈のメッテ・ホルムを追ったドキュメンタリー。
世界中の村上作品の翻訳家たちと議論をかさね、⼩説の舞台となる地をめぐる。深夜のデニーズ。バーカウンター。古いレコード。そして夜空に浮かぶ⼆つの満⽉。
メッテはひとり村上春樹の世界に潜り込んで⾏く...
監督:ニテーシュ・アンジャーン
作品Website
https://www.sunny-film.com/dreamingmurakami
Amazon Videoで視聴可能
https://www.amazon.co.jp/dp/B088P8Z5VM/
翻訳家
メッテ・ホルム氏
映画「ドリーミング村上春樹」に登場する翻訳家メッテ・ホルム氏は、1983年に初来日。
帰国後に大学で人類学の学士号と日本語学の修士号を取得。2001年以降デンマークで出版された村上春樹作品の全てを翻訳しているとの事。
メッテ氏のインタビューは、2019年日本で映画が公開された際に「ほぼ日刊イトイ新聞」にて、4回に渡り公開されています。
言葉に橋を架ける人 メッテ・ホルム
(ほぼ日刊イトイ新聞)
https://www.1101.com/n/s/mette_holm
またAERA dotでも、2019年にインタビューが掲載されています。
村上春樹は話の途中で「つい追いかけちゃう」ほど猫好き デンマーク人翻訳家との関係
( AERA dot )
https://dot.asahi.com/aera/2019102400051.html
翻訳とは作者の世界を自分の中に入れて、翻訳者の体を通して出す作業。自分がその本を読んだときの感覚にどれだけ近づけられるか、常に闘っています。でも完璧な翻訳というものはないんです。
村上春樹は話の途中で「つい追いかけちゃう」ほど猫好き デンマーク人翻訳家との関係
村上本人とも親交があり、訳について聞くこともあるが、
いつも後悔します。『やっぱりそうよね! 聞かなければよかった』って。村上さんはほかの翻訳者とも同じようにしている。彼も翻訳をするので、私たちの苦労を理解してくれているのだと思います。
翻訳の種類
翻訳家メッテ・ホルム氏 は、日本で言うところの「出版翻訳」に属します。
因みに日本での代表的な翻訳業の分類としては以下があります。
- 産業翻訳
ビジネス文書やマニュアル、契約書や報告書、申請書などを翻訳。 - 出版翻訳
小説等出版物を翻訳。絵本などや外国雑誌記事の日本版の翻訳も含まれます。 - 映像翻訳
映画やテレビのドラマ、ビデオ等の音声情報を翻訳。 - ニュース・ライター
日本語のニュースを他言語に翻訳(逆の場合も) - その他
音楽の歌詞の翻訳等
翻訳及び通訳の業務及び違いについては、当ブログ 以下の記事にてご紹介しているので、併せてチェック頂ければ幸いです。
出版翻訳の場合1つの作品を、出版社が変わった等の理由で再出版する際に、以前とは異なる翻訳者が手掛ける場合があります。
また、翻訳者によって原文の解釈が異なったり、出版する時代によって言葉の選び方が変わる場合もあります。
様々な翻訳版を読む事で、原文の持つイメージが膨らんだり、異なる風景が見えたりする事もありますから、もしお好きな海外文学の異なる翻訳者版が出版されている場合は、読み比べてみるのも楽しいと思います。