オーバーツーリズムによって引き起こされたトラブルの報道を、日本でも目にする事が最近増えてきました。これらの原因は様々ですが、今回は「外国人」と言う言葉を中心に、この問題について少し考えてみたいと思います。(二 盧によるPixabayからの画像)
外国人 / Foreigner
「外国人」に対する様々な英語表現は、以前、このブログでも別のテーマで紹介しています。
外国人と言う表現が意味するのは、日本ではない、外の(他の)国の人です。
もともと、日本人ではない人の事は「異国人 / 異人」と呼ばれていましたが、鎖国終了の1854年以降(開国後)から「外国人 / 外人」は使われ始め、明治期には庶民にも広まったとのこと。
コトバンク / 精選版 日本国語大辞典 より
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA-42384
開国の頃から、「異国人」「異人」に代わって、公文書を中心に使われ始め、文章語として定着していった。明治期には庶民層にも広まり、「日本大辞書」の「いじん(異人)」の項にも「今普通ニ体裁ヨクイフ時ニハ外国人或ハ西洋人ノホカハ余リ多クイハヌ」とある。→異国人・異人・外人
さて、外の国の人を意味する英語表現として、一般的に知られているのは Foreigner ではないでしょうか?
しかし Foreigner には「よそ者」と言ったニュアンスもあり、実は余り感じの良い表現とは言えません。
「地球以外の生命体」=異星人を指す事が多い Alien / エイリアンと言う言葉も、「性質の異なる」や「外国人」と言った意味があり、アメリカ合衆国法典では、Alien は「米国の市民権も国籍も持たない人物」と定義されていました。
とは言え、この Alien と言う表現は、バイデン大統領が就任した2021年以降は、移民法が改正され noncitizen(非市民)と言う表記に改められています。
日本でも特に外交案件(官公庁案件)の場合は Non-Japanese (非・日本人) と言うのが一般的になってきています。
また a person / people from abroad, guest(s) in the country 等と言う事もあります。
観光客の場合はTourist や Visitor 、海外からの観光客と言う場合は、国が複数の場合は Tourists / Visitors from overseas countries や Overseas Tourists / Visitors. 決まった国やエリアからの来訪者が多い場合は Tourists / Visitors from (国名やエリア名:例 Asia )と表現する事もあります。
ガイジン / Gaijin
外国人を縮めた表現として知られる「外人(ガイジン)」ですが、実は「仲間以外の人。他人。」と言う意味もあります。
最近では、失礼な呼び方であると言う理由から使うのを避ける人も多いですが、意外にもこの言葉は Gaijin として英英辞典などにも載っていたりもします。
from Merriam Webster
https://www.merriam-webster.com/dictionary/gaijin
gaijin noun
a foreigner in Japan
つまり、日本語を理解しない人達にも知られている言葉とも言えるでしょう。
ただし、最初にご紹介した通り外人には Foreigner と同様に「よそ者・仲間ではない人」と言った意味もあり、「外人」と言われると疎外感を感じる人もいるので、注意が必要な表現です。
訪日 外国人観光客
前回の当ブログ記事 英語におけるクッション言葉 ~通訳者の視点から~ でもご紹介した、オーバーツーリズムが引き起こす様々な問題。
このオーバーツーリズム / Overtourism は「観光地に旅行客が押し寄せ、そこに住む人々の生活がままならない状況になる事」を意味しますが、日本の報道では「海外からの観光客 / 外国人観光客」が引き起こす問題=オーバーツーリズム と言った印象を与える内容も多い気がします。
JTB総合研究所より
https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/over-tourism/
オーバーツーリズム
特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、地域住民の生活や自然環境、景観等に対して受忍限度を超える負の影響をもたらしたり、観光客の満足度を著しく低下させるような状況。
もちろん、多くの観光客が海外から日本に来ている事は事実ですから、観光客が増える=多くは海外からの旅行者である可能性は高いと思います。JNTOの推計によると、2024年3月の訪日外客数は、単月として初めて300万人を超えているそうです。
観光統計2024 (JTB総合研究所)
ただ、例えば公共交通機関や飲食店、観光地での態度や行動などで起こる全ての問題を=日本の文化や常識をわかっていない「外国人旅行者」が引き起こしているとして、十把一絡げに紹介してしまうのは、いささか乱暴な気もしますが、いかがでしょうか?
意識や表現の
アップデート
観光の為、訪日する外国人が増えている事は前出した通りですが、日本に在留する外国人も2023年12月末の時点で、およそ341万1000人と過去最多を記録しています。
在留外国人 去年12月末時点で340万人超 過去最多に(2024年3月22日 NHK NEWS WEB)
彼らは、報道上は「外国人」と一括りに表現されていますが、様々な国の出身者であり、様々な文化や常識、宗教等を持つ人々です。日本に住んでいる理由も、また様々でしょう。
つまり「外国人」と一括りにされがちな人々にも、多様な背景があると言うことです。
日常の中でも、いわゆる日本人とは異なる外見の人々を目にすることも、最近は多くなりました。
しかしパッと見で、その人が観光客なのか、日本に住んでいる人なのか、はたまた両親のどちらかが日本以外の国にルーツを持つ人なのか、外国にルーツはあるけれど日本で生まれて育った人なのかは、分かりません。
日本で「外国人を見た目で判断する」ことの弊害が噴出中(2024年03月16日 Newsweek 日本版)
その様な人々を、単に「外国人」と一括りにするのではなく、それぞれの背景を考慮しながら接していく事は、大事な事だと思います。
弊社代表の右田アンドリュー・ミーハンは、東京地裁にも通訳者・翻訳者として登録していますが、民事含め、文化や風習、考え方の違いが原因で起こる揉め事や、トラブルは増えているとのこと。
“人種など理由に繰り返し職務質問は差別” 外国出身3人が提訴(2024年1月29日 NHK NEWS WEB)
オーバーツーリズム / Overtourism の問題だけではなく、多文化共生・多様性社会の実現の為にも、異文化コミュニケーションを始めとした、外国人を取り巻く状況に関する意識や表現のアップデートは、これから益々重要になると思います。
ミーハングループも「言語だけに留まらない 文化・ビジネス・心の橋渡し」を合言葉に、異文化コミュニケーションを、通訳・翻訳と言う専門スキルを駆使し、サポートしてまいります。