カタカナ語として完全に日本語に定着した感がある言葉「ハラスメント」。この言葉の英語と日本語の使われ方の違いや、訳し方等について、今回は少し考えてみたいと思います。
Harassment
ハラスメント
「ハラスメント」は、カタカナ語として完全に日本にも定着した表現ではないでしょうか。
特に、セクシャルハラスメントを「セクハラ」と省略して使う様に、相手が不快に思う様な事を「〇〇ハラ」と言う短い表現にして使うことが、日本では多い気がします。
因みに「セクシャルハラスメント」は、1989年の新語・流行語大賞 / 新語部門・金賞を受賞しています。
https://www.jiyu.co.jp/singo/index.php?eid=00006
「現代用語の基礎知識」選 T&D保険グループ 新語・流行語大賞 サイトからのキャプチャ
ご存知の通り「ハラスメント」は、英語 の Harassment から来ている表現になります。しかし、英語で使われる時と、日本語で使われる時の意味やニュアンス等の違いはあるのでしょうか?
先ずは英語での意味を英英辞典で調べてみました。
from the Cambridge dictionary
harassment noun
behaviour that annoys or upsets someone:https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/harassment
相手を不快にさせたり、苛立たせる行動や行為と言った感じでしょうか。日本語的には Harassment は「嫌がらせ」に近い言葉になると思います。
デジタル大辞泉にて 「ハラスメント」を調べると、やはり「嫌がらせ」と言う表現が出てきます。また和英辞典などでも調べてみると「迷惑をかける / 嫌がらせをすること」と言った説明がされています。
Cambridge dictionary には法律用語としての harassment の意味も紹介されていますが、コチラは「個人に対する精神的・感情的苦痛を引き起こす違法行為。侮辱、脅迫、接触、または攻撃的な言葉が含まれる」と言った、より強い表現での説明がされています。
harassment noun
LAW
illegal behaviour towards a person that causes mental or emotional suffering, which includes repeated unwanted contacts without a reasonable purpose, insults, threats, touching, or offensive language:https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/harassment
通訳者からの
使える英語表現 Tips
アメリカ・NY等では、うるさい / うざい / やめてくれ / 度がすぎる と言った意味で stop harassing me と言う事があります。
いわゆる shut up と同じ意味ですが、最近は stop harassing me, stop annoying me, you are annoying me といった表現を使うことが多いです。右田アンドリュー・ミーハン
和製英語の
ハラスメント
ハラスメントが一般的に使われる きっかけとなった言葉 sexual harassment や、年齢を理由にした嫌がらせ aging harassment 、人種的偏見に基づく嫌がらせの racial harassment 等、英語の世界でも使われるハラスメント表現は幾つかあります。
しかし、調べてみたところ、ハラスメントを使った和製英語(つまり日本語)が想像以上に多くて、ビックリしてしまいました。幾つか気になった言葉をピックアップしてみたので、ご紹介します。
- パタニティー‐ハラスメント
〈和〉paternity+harassment パタニティーは父性の意》育児のための休暇や時短を申し出る男性に対するいやがらせ。パタハラ。→マタニティーハラスメント - マタニティー‐ハラスメント
〈和〉maternity+harassment》職場などでの、妊娠・出産に関するいやがらせ。妊婦に直接いやがらせを言ったりしたりするほか、妊娠を理由に自主退職を強要する、育児休暇を認めない、妊娠しないことを雇用の条件にするなどの行為も含まれる。マタハラ。 - スメル‐ハラスメント
〈和〉smell+harassment》においによって他人に不快感を与えること。ふつう、強い体臭や口臭、過剰な量の香水など、身体から発するにおいによるものをいう。スメハラ。 - ロケーション‐ハラスメント
〈和〉location+harassment》携帯電話やスマートホンなどの位置情報サービスを悪用し、特定の利用者の居場所を監視したり、プライバシーを侵害したりすること。ロケハラ。 - アカデミック‐ハラスメント
〈和〉academic+harassment》大学内で、権力や地位を利用して教員や学生にいやがらせをすること。アカハラ。 - ドクター‐ハラスメント
〈和〉doctor+harassment》診療・診察の場で、医師が患者を傷つけるような言動をとること。ドクハラ。 - アルコール‐ハラスメント
〈和〉alcohol+harassment》酒席でのいやがらせ。酒が飲めない体質の人に、無理やり酒を飲ませようとすること。アルハラ。 - カスタマー‐ハラスメント
〈和〉customer+harassment》消費者・顧客による悪質ないやがらせや迷惑行為。理不尽なクレームや暴言を繰り返す、度を超えた謝罪や対価を要求をする、暴行を加えるなど。カスハラ。 - パワー‐ハラスメント
〈和〉power+harassment》職場などで、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、相手に精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為。上司から部下に対してだけでなく、先輩・後輩、同僚間、部下から上司に対する行為や、顧客や取引先によるものも含まれる。パワハラ。
アナタは幾つご存知でしたか?
一見 英語表現にもありそうな言葉も沢山ありますが、これらは全て和製英語です。特に パワーハラスメント→パワハラ 等と省略した表現を使用した場合、全く伝わらないので注意が必要です。
- 参考サイト
明日から気をつけたいマニアックな「○○ハラ」教えます!(公開日:2018.9.4 更新日:2025.11.17 ベンナビ労働問題 / 労働問題マガジン)
Harassment
= 迷惑 / 嫌がらせ?
ハラスメント / Harassment は、英語でも Harassment covers a wide range of behaviours of an offensive nature. 等と表現される様に、暴力や暴言等も含む幅広い不快な行為を指す言葉です。
日本語では、ハラスメントは一般的に「迷惑」や「嫌がらせ」と訳されますが、行為や内容によっては、より強い表現を使った方が適切な場合もあります。
また、カタカナ表現として定着している為、Harassment を ハラスメントと訳しても相手には伝わりますが、カタカナ表現になる事によって、実際には非常に不快で不適切な行為が行われているにも関わらず、事態が軽く見られてしまう可能性もあります。
日本語の ハラスメント を英語に訳す際にも、同様の注意が必要です。日本では ○○ハラ と言った省略表現を、仲間内のじゃれ合い的ないたずらや、軽い迷惑行為に使ったりもしますし、非常に深刻な問題も ○○ハラ と言ったりする場合もあります。
ですので Harassment / ハラスメント の様なカタカナ表現が一般化した言葉を訳す場合、そのまま使うのではなく状況に合わせて適切な言葉を選ぶことは、コミュニケーションの齟齬を生まない為にも、通訳者や翻訳者にとって大事なことと言えるでしょう。
特に Harassment / ハラスメント つまり 嫌がらせや迷惑行為、時には法律に触れる侮辱や接触、暴言や暴力が含まれる状況においては、その背後にある状況を踏まえて、単に言葉を置き換えるだけではない訳をしないと、命取りになる場合もありますから...




